「ブレーキ、急すぎない?」人の運転につい口を出したくなるのは『大義名分』があるから!?
2018/10/21
危険に対する認識の差が、運転に口を出す原因
「車間距離、詰めすぎじゃない?」とか「ブレーキ、急すぎない?」といった指摘。
普段は自分でハンドルを握る人が助手席に乗ると、つい言ってしまいがちです。そして、言われた方は、もの凄く不愉快な気分に……。
「口に出さないまでも、気になっている人は多いと思います」と語るのは、心理学者の晴香葉子さんです。気になる理由を教えてくれました。
「ブレーキの踏み方や車線変更の方法などに口を出すのは、自分も普段から車を運転している人が多いはず。車は自分の体のようなもので、運転は体の動かし方に通じます。つまり、人それぞれの習慣が身に染みついているのです。自分がやっている運転と異なる場合、その運転に違和感とリスクを感じるから気になるのです」
さらに、リスク=身の危険に関することなので、口を出しても許されると思いがちなのだそうです。晴香さんは、「安全という大義名分があるから、指摘しやすい。指摘する方は、文句じゃなくて意見だと思っているはず」と語ります。
確かに、口を出す側は、良かれと思ってやっていることも多そうです。「信号赤だよ」とか「今なら車線変更できるよ」などは、アドバイスのつもりなのでしょう。
しかし、ドライバーからすると、「そんなことはわかってるよ!」と言いたくなります。
「危険に対する認識の差こそが、運転に口を出す根本的な理由。運転手が危険を認識していることが、同乗者に伝わっていないのです。
一例ですが、赤信号の減速するタイミングが異なると、ドライバーはわかっているのか不安になりますよね。だから、つい口に出してしまうんです」と晴香さん。
言われてみれば、筆者も危険に対する認識の違いから、同乗者に不安を感じさせたことがありました。それは、リスクヘッジのために車間距離を広く取る運転方法が原因。同乗者から「逆に危ない」と口を出されれて、ちょっと険悪な雰囲気に。
この体験談に晴香さんは、「もしかすると、割り込まれて危ない、後ろの車がイライラする、というリスクを感じたのかもしれませんね。典型的なリスクに対する考え方の差です」と指摘します。
なるほど、その発想はありませんでした。
運転に口を出されると『コントロール欲求』が侵害されてイラッとする
ここで気になったのは、日常生活で指摘を受けるより、運転を指摘される方がより不快な気分になることです。これって、どうしてなのでしょう?
「口を出されてイラッとするのは、コントロール欲求が侵害されるから。車の運転をしているときというのは、血圧や脈拍が上昇し、神経が高ぶって、覚醒水準が高まった状態になることがわかっています。より感情的になりやすい状態で、車の運転というリスクのある状況をコントロールしています。そのためコントロール欲求が高まりがちです。運転していない人にその支配を犯されると、イライラが募るんです」と晴香さん。
「人の運転はどうしても気になります。しかし、運転は個人差が大きいし、習慣なのでなかなか変わらない。運転経験が豊富で事故なども起こしたことがなければ、ここは割り切った方がいいかもしれません。そもそも、もっと早く曲がれたとか、今は行けたとか、終わった後に指摘してもやり直すことはできないですよね。言っても仕方ないというところがあります。そういった指摘は、特にしない方がせっかくのドライブタイムを楽しく過ごすためにもいいでしょう」
では、あえて指摘すべきは、どんなときなのでしょうか。
「強いて言えば、渋滞中で同じシチュエーションが継続的に続く状態で、明らかに危険だと感じる運転をしたり、法律違反だったりする場合。そのときでも、頭ごなしに否定するのではなく、私だったら……とか怒らないでね……など、クッションワードを入れて、柔らかく話した方がいいと思います。夫婦や恋人でお互いが運転する場合、まず自分が譲歩して、『私の運転で気になることってある?』などと聞いてみましょう。実は相手も気になって我慢していることがあるかもしれないからです。その後に相手の気になる部分を指摘すれば、円満で前向きな話し合いができると思います」
運転に口を出すと、車内の雰囲気が悪くなりがちです。特に密室の場合、空気を変えるきっかけも見つからず、楽しいドライブが台無しになることも。多少のことなら口を出さないことも大事ですが、もし、同乗者から運転スタイルに口を出されても「そもそも、人の運転は気になるものだから」と心の中で思って、どっしり構えておくことも大事だと覚えておきましょう。その懐の深さが、人間性の評価につながるかもしれません。
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