▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます ▲車にまつわるあるあるって、どんな心理が働いているのか? 心理学者の晴香葉子先生に聞いていきます

脳は何かを判断するときにできるだけ省エネでやろうとする!

“中古車を選んだ理由で多い「一目惚れ」。中古車とはいえ、決して安い買い物ではないのに、一目惚れとは結構大胆です。
 

▲人は一目惚れで購入を判断するときに、どういった心理が働いているのでしょうか ▲人は一目惚れで購入を判断するときに、どういった心理が働いているのでしょうか

心理学者の晴香葉子さん:「人の判断には、システム1とシステム2が存在するといった理論があります。一目惚れは、このシステム1の判断に属します」

これは、ノベール経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授が提唱した理論。

システム1とは、条件反射的に行っている直感的な判断のことです。

例えば、美男美女を見て素敵と思うのは、システム1の判断。

システム2は熟考。分かりやすいところでは、数式の計算などがこれにあたります。

晴香さん:「人は日常生活のほとんどを、レベル1の判断で行っています。例えば、家に帰って照明のスイッチを入れるとき、ほとんど何も考えずにやっていますよね。脳は常に膨大な情報を処理しているので、できるだけ判断を簡略化しようとするのです」

面白い実験があります。いろんな写真を見せながら、その好き嫌いを0.5秒で判断するというものです。

すべての写真を見終わった後、改めてじっくりと見ながら判断しても、その答えはほとんど変わらなかったといいます。

晴香さん:「人のインスピレーションはかなり正確です。人が進化する前、表情や態度、行動から得られる第一印象は、生死を左右するほど重要でした。本能的に好き嫌いを判断する能力があるのだと思います。加えて、これまでの経験にもとづく勘のようなものもあるでしょう。中古車の場合、自分では意識していなくても、経験にもとづくインスピレーションが働くのかもしれません」

確かに一目惚れでの中古車購入は、何度か中古車を買った経験者に多くみられました。

これは、今までの知見があって、外観の状態からある程度、車全体の状態を予想できているのかもしれません。

晴香さん:「そもそも人には、“視覚情報優位性”という特性があり、そのときの状況にもよりますが、情報の8割以上を視覚からインプットしているともいわれています。それも、一目惚れする理由のひとつです」

カーセンサーとしては、エンジンや電気系統などに異音や異臭、振動などがないかを五感でチェックしてほしいものです。

晴香さん:「もちろん、五感を使いしっかりと調べて買う方が、失敗が少ないのは間違いありません。一目惚れした後に、細かくチェックする人もいるでしょう。ただ、そのチェックで不具合が見つかっても、購入してしまうのが一目惚れ。一目惚れという言葉を、見た目が気に入ったから欠点には目をつぶれた、という意味で使っている人もいるはずです」

楽観的で自己確信が強い人は、一目惚れしやすい

では、一目惚れしやすい人の特徴とは、どのようなものでしょうか。

晴香さん:「まず、楽観的で失敗を恐れない。失敗を恐れないから、一目惚れという理由だけでも購入という思い切った行動に踏み切ることができます。つぎに、自己確信が強い人。つまり、自分の判断に自信をもちやすい人は、決断も早い傾向があります」

ちなみに、買い物では悩んで買った物よりも、一目惚れで買った物の方が、後々の満足度が高いという話もあるといいます。

車とは関係ないですが、一目惚れカップルは離婚率も低いそうです。

言われてみれば車選びだって、コストパフォーマンスや状態だけを優先して決めても、満足いく1台には出会えないもの。

一目惚れするくらい心惹かれた車の方が、満足度も高いでしょう。

一目惚れと細部のチェック、バランスを上手く取りながら購入したいものです。

【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。著書は、『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)、『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)、『言葉って不思議だと思いませんか?』(彩雲出版)など30冊以上 【プロフィール】晴香葉子:作家・心理学者。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、様々な角度から情報を提供。執筆、講演、テレビ、雑誌などメディアでの心理解説、監修実績などの活動を続けている。主な著書に、『人生には、こうして奇跡が起きる』(青春出版社)、『2回目からは、スーツのボタンは外しなさい』(潮出版社)、『言葉って不思議だと思いませんか?』(彩雲出版)など30冊以上
text/コージー林田
photo/すしぱく