▲JR目黒駅の駅ビルでたまたま遭遇した「チェブラーシカ」。……カワイイ、あまりにもカワイすぎる! ということで、気がついたら係の人にツーショットの記念写真を撮ってもらっていた四十路の筆者 ▲JR目黒駅の駅ビルでたまたま遭遇した「チェブラーシカ」。……カワイイ、あまりにもカワイすぎる! ということで、気がついたら係の人にツーショットの記念写真を撮ってもらっていた四十路の筆者

周囲が思わず笑顔になる、そんな車にわたしは乗りたい

どこかでちらりと読んだ話だが、小さな子供にデジカメを持たせて大人の顔を撮らせると、かなりいい写真になるのだという。皆が皆、とびきりの笑顔で写ってしまうのである。悪役商会みたいなビジュアルの人でさえも、だ。

まあ、それはそうだろう。ちびっ子にいきなりレンズを向けられて「撮るんじゃねえよバカヤロー!」とか言える人は地球上にそうそういない。誰もが「でへへへ~、なーにやってんだよおおおお」といったニュアンスで、デレデレと笑ってしまうはずだ。なぜならば、何か(この場合はデジカメでの撮影)に夢中になっているちびっ子というのは、とにかく「カワイイ」からだ。「カワイイ」のパワーは凄まじいのである。

それと似たようなことを過日、とある駅ビルで経験した。その日、いろいろあってやや難しい状況にあった自分は、難しい顔をして、所用のため某駅ビルに行った。そこに、なぜか「チェブラーシカ」がいたのだ。

ご承知のとおりチェブラーシカとは、ロシアの児童文学家エドゥアルド・ウスペンスキーの作品に登場するキャラクターだ。2011年からは横浜ゴムがスタッドレスタイヤの広告用キャラクターとして起用しているほどの人気者である。よくわからないが、その日は何らかのプロモーション活動をしていたのだろう。

で、その日はかなり難しい顔をしていた筆者なわけだが、つぶらな瞳のチェブラーシカと目が合った瞬間、もはや難しい顔をしていることなど不可能だった。「でへへへ~」と笑い、ちびっ子に混じって握手をねだり、気がついたときにはツーショットでの記念撮影を終えていた。写真を撮られることが極度に嫌いなのに、である。チェブラーシカの「カワイイ」の前にはわたしの憂鬱も写真嫌いも、すべてが無力だった。

このように「カワイイ」の物凄いパワーにたまに接したときに思うのは、「もうコレを価値観の主軸に置いちゃうのも悪くないのでは?」ということだ。ジャンルを問わず、周囲の人が無条件で「でへへへ~」という顔になってしまうモノこそが最上であるという、いわば「カワイイ至上主義」である。まぁいい年したおっさんがこの主義を全面的に採用するのはなかなか難しい面もあるのだが、例えば車だ。

最近はランボルギーニのウラカンという新型車が凄いと話題になっているらしいが、個人的には「どうでもいい」と思っている。興味がない。なぜならば、ウラカンを買ったところで(買えませんけど)乗って行く場所も用途も、わたしにはないからだ。乗って行く場所も用もないのだとしたら、その車はわたしにとってはナッシング、ゼロである。だから、興味がない。すみません。

▲車両本体価格2970万円、最高速度325km/hのランボルギーニ ウラカンLP610-4 ▲車両本体価格2970万円、最高速度325km/hのランボルギーニ ウラカンLP610-4

それよりも興味があるというか、価値があると思うのは「チェブラーシカのような車」だ。といっても「ファンシーな車」という意味ではなく、見る人全員が思わず笑顔丸出しになってしまうような、そんな車。それでいてごく普通に使えて、どこにでも気軽に乗っていけるような車。そんな車にこそ、わたしは乗りたい。

そういったチェブラーシカ的車の候補は、例えばてんとう虫ことスバル360や、ルパン三世も劇中で乗っていた昔のフィアット500、あるいはBMWのイセッタなどになるだろう。しかしそれらの車を今現在の世の中で維持し、ごくフツーに乗るのはなかなか難しい部分もある(特にイセッタ!)。ということで、若干キャラは薄くなったとしても現実的なところで考えるとしたら、「ミニ」が有力候補となろう。英国産の元祖ミニではなく、BMW製の方だ。

▲ミニが「NOT NORMAL(やんちゃしない?)」という公式キャンペーンで使用しているビジュアルの一つ。なぜルーフに巨大アヒルがいるのか意味不明だが、まぁカワイイし、楽しいからいいじゃないか! ▲ミニが「NOT NORMAL(やんちゃしない?)」という公式キャンペーンで使用しているビジュアルの一つ。なぜルーフに巨大アヒルがいるのか意味不明だが、まぁカワイイし、楽しいからいいじゃないか!
▲コンセプトモデルの「MINI Clubvan Dogエディション」。ミニ+ワンコというのも最強ですね ▲コンセプトモデルの「MINI Clubvan Dogエディション」。ミニ+ワンコというのも最強ですね

もちろん好き嫌いはあるだろうが、ミニ一族のあの顔、あの形、あの雰囲気を目の前にしながら「難しい顔」でいるのは、人間なかなか難しい。スバル360ほどの強烈な「カワイイパワー」はないかもしれないが、「普通に乗れる」という美点とのトレードオフで考えれば、ミニの総合力もなかなかのものである。

「ウラカンみたいに325km/hも出ないけど、まぁ俺はミニでいいよ。だってカワイイし、見る人みんな妙に喜んでくれるし、運転楽しいし、そもそも俺325km/hとか出したいとも思わないし」

価値観は人それぞれだろうが、上記のような思いに至ったとき、ミニの「カワイイパワー」はあなたと周囲にとっての強烈な福音となるだろう。ということで今回のわたくしからのオススメは、「旧型を中心とするミニ一族全般」だ。

text/伊達軍曹