【伊達セレクション】異端の中古車評論家・伊達軍曹、初代アウディTTの保護に乗り出す
2014/04/03
健全なるアウディTTの健全なる保護育成にはあなたの力が必要です
中古車愛好家ならではの社会的責任
「ドライバーの社会的責任」というのもいろいろあるだろう。まずは何といっても安全運転をすることであり、安全な運行を可能にするため、所有する車に対して各種メンテナンスを定期的に施すことや、無用な排ガスや騒音を撒き散らかさないことなど、責任範囲は多岐にわたる。
そこからさらに歩を進め、じつは「中古車愛好家ならではの社会的責任」というものもあるんじゃないかと、最近の筆者は愚考している。どういうことかと言えば「価値および文化の確実な継承」である。
例えばの話、私事で恐縮だが筆者はランチア デルタHFインテグラーレEVOⅡという車に乗っている。94年式のフルノーマル車で、歴代オーナーがお金持ちで厳重なガレージ保管をしていたのだろうか、ボディや内装の状態が大変よろしい1台だ。
で、そんなデルタが庶民である筆者の元にやってきた際、一瞬だが、経済的な理由から「野っ原の駐車場でもいいかな……」と考えた。が、その考えは5秒ほどで撤回し、やや分不相応な屋根付き駐車場の賃貸契約を締結した。
なぜ、分不相応な駐車場を借りたかといえば、フルノーマルのランチア デルタとはもはや一種の文化遺産であり、文化遺産とは法律上の所有者が独占すべきものではなく、全人類のためのものであるべきだ……という鉄壁にして清廉な理論が頭をかすめたからだ。
「いつの日か現れる次の所有者のため、そして地球上のすべての車好きのため、わたしはデルタを屋根付き駐車場で保管しなければならない!」と勝手な使命感を抱き、それを実行した。月々の出費は痛いが、とにかく結果として正しい行いができたと自己満足はしている。
自動車デザイン界の金字塔を救うのはあなただ!
そのような「中古車愛好家ならではの社会的責任」について「そんなのオレには関係ないね」と思う人は、まぁそれで構わない。個人の自由だ。しかし「なるほど、そうだよね!」と思っていただける人には、一つ相談がある。
初代アウディTTを救ってあげてはもらえないだろうか。
いや、「救う」というと人聞きが悪い。初代TTは絶滅の危機に瀕しているわけではないし、荒れた個体だらけになってしまったわけでもない。しかし、カーセンサーnetの具体的なデータを見ても、昨年末あたりから流通量が減り始めており、その半面、筆者の取材によれば、手荒く扱われたらしい個体と悪趣味な改造が施された個体が増えてきている。
すぐに絶滅したり市場が極度に荒れることはないだろうが、マズいパターンに入り始めたようには思えるのだ。心ある人間が1台でも多くの初代TTを保護し、手厚く維持管理してあげる必要があるだろう。
もちろん「タダで保護してください」とは言わない。あなたにもそれなりの見返りはある。初代アウディTTという自動車デザイン界の金字塔の一つを手厚く保護した人には、数年後から10年後、必ずや「周囲からの賞賛」と「圧倒的な自己満足」という報酬が生まれるはずだ。それを期待し、ぜひ今のうちから保護に乗り出していただきたい。
……わたし? いや、わたしはデルタの保護で手いっぱいなもので……。
ということで今回の伊達セレクションはずばり「初代アウディTT」だ!

1999年から2006年まで販売された初代アウディTT。ドイツ系アメリカ人デザイナーによるシンプルだが大胆なデザインは世界的な高評価を得た

外観同様にインテリアも、球形および円形のモチーフを多用した大胆な造形。センターコンソールのTTと書かれたパネルは塗装ではなくアルミ削り出し

非常にたっぷりとしたサイズのセミバケットシートも初代アウディTTの特徴。シフトレバーの左右にある三角状のアルミステーもシブすぎる

【伊達軍曹 Sergeant DATE】東京都杉並区出身の輸入中古車研究家。外資系消費財メーカー本社勤務の後、出版業界に。現在は「輸入中古車は、その価格にかかわらず素晴しい!」との見方を核とする輸入中古車研究家として各誌で活躍。雑誌「カーセンサーEDGE」では「中古車相場 威力偵察隊」を連載中
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