レクサス GS▲車好きにとっての終着点。それがセダン。最もオーソドックスなスタイルにして、最もバリエーションが豊富なセダンの中から名車たちを紹介。今回は、かつてLSとISの間を埋めた主力モデルであり、FRレイアウト+大型エンジン+中型ボディという絶品スポーツセダンの要素を20年間にわたって磨き上げてきたレクサス GSを取り上げる

自然吸気V8も選べるGSはバランスの取れた名セダン

2020年8月、コロナ禍にあってレクサス GSがひっそりとその歴史に幕を閉じた。

そもそもレクサス GSはアメリカを主戦場とし、日本ではトヨタ アリストの名で販売されていたFRのミドルサイズセダンだ。1993年に初代が、1997年に2代目がアメリカで登場している。

2005年に日本国内でもレクサスブランドの展開がスタート。時を合わせて3代目にフルモデルチェンジしたレクサス GSの国内販売が始まった。

国内展開当初のグレード構成は、4.3L V8エンジンを搭載する「GS430」と、3.5L V6エンジンの「GS350」の2種類だった。駆動方式は後輪駆動(FR)をメインに、GS350にはAWDの設定もあった。

2006年には、レクサスブランド車としては初となるハイブリッド仕様「GS450h」を追加。これは、GS350に搭載される3.5L V6エンジンに、FR車専用に開発されたモーターをトランスミッションケース内に組み込み、システム合計出力で345psを発生するもの。

実はこの年の十勝24時間レースに、開発の一環としてハイブリッドカーとして初めてこのレクサス GS450hが参戦しており、見事に完走を果たしている。今でこそ、モータースポーツの世界でもハイブリッドカーは珍しくないが、その可能性を切り開く先駆けだったのだ。
 

初代トヨタ アリスト▲当時トヨタオート店とトヨタビスタ店からフラッグシップモデルとして販売されていた初代GS(日本では初代トヨタ アリスト)。エクステリアはランチア デルタやデロリアン DMC-12を手がけたイタルデザインによるもの。エンジンは3L直6の2JZ-GEを搭載しており、1992年には4WDモデルも追加販売された

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2代目トヨタ アリスト▲1997年に発売された2代目GS(日本では2代目トヨタ アリスト)は走行性能を中心に大きくアップデートされた。エンジンにはインタークーラーを備えた2JZ-GTE(A80スープラと同型)を搭載。さらにエンジン搭載位置を後ろへずらしオーバーハングを短くすることで、パワーだけでなくハンドリング性能も向上している

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初代レクサス GS▲2005年に登場した3代目GS(日本では初代GS)。日本ではこの代からレクサスブランドでの販売となり、アリストからGSへと名称変更された。2007年のマイナーチェンジでは新開発のV8エンジンと8速ATを採用。燃費性能を向上させつつ大幅なパワー向上を果たしている

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2012年には4代目(日本では2代目)へとフルモデルチェンジ。フロントマスクにはレクサスの象徴であるスピンドルグリルを採用した。グレード構成は、3.5L V6+ハイブリッドの「GS450h」、3.5L V6エンジンの「GS350」、2.5L V6の「GS250」をラインナップ。後に2.5L V6+ハイブリッドの「GS300h」、2L直4ターボの「GS300(旧GS200t)」も追加された。駆動方式は先代と同様に後輪駆動(FR)をメインに、GS350にはAWDも設定された。

2015年11月に実施されたマイナーチェンジではヘッドランプやスピンドルグリル、フロントバンパー、リアコンビネーションランプなどの意匠が変更されている。また、予防安全パッケージ「Lexus Safety System +」を全車に標準装備とし安全性能を強化した。

さらにこの年、スポーツモデルの「IS F」に続くレクサス4ドアのFモデルとして、「GS F」がデビュー。5L V8自然吸気エンジンは、最高出力477ps/最大トルク530N・mを発揮。 サーキット走行を見据え、ボディ剛性やシャシー性能を高めたスポーツバージョンだ。
 

2代目レクサス GS▲居眠り防止のドライバーモニターを搭載するなど先進性が格段に進歩した、4代目GS(日本では2代目)。当時、量産車最大の12.3インチモニターやマウス風操作のインフォメントシステムなど、車内の快適性も向上している
2代目レクサス GS▲2015年にフェイスリフトを受けた4代目GS(日本では2代目)。エクステリアやインテリアの変更だけでなく、スポット増し(パネル同士の接合を増やすこと)や構造用接着剤の採用で走行性能もアップ。2020年の8月に生産を終了しプレミアムスポーツサルーンの枠は前輪駆動のESへと引き継がれた

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レクサス GS F▲レクサス LC500やRC Fと同型の5L V8エンジンを搭載するハイパフォーマンスモデルのGS F。Fシリーズ(ライバルはBMWのMやメルセデス・ベンツのAMG)のセダンとしては2007年のIS F以来の登場となる。サーキット走行を前提とした高剛性ボディと冷却機構を採用している。また、グリルまわりやスポイラーは軽量なカーボン仕様となる

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レクサス GSは、フラッグシップのLSとISの間に位置し、メルセデス・ベンツ Eクラス、BMW 5シリーズ、アウディ A6などを仮想ライバルとするモデルだ。しかし、近年はSUV人気の高まりをうけ、レクサスもLX、RXに続きNXさらにはUXといったコンパクトSUVモデルを投入。セダンは販売不振に陥っている。そして追い打ちをかけたのが、それまで日本では販売されていなかったFFのミドルサイズセダン「ES」の国内販売が2018年に開始されたことだった。

カムリなどとプラットフォームを共用するESは、前輪駆動車ならではの広い室内や上質な乗り味もあって、GSの販売台数を上回る。ESは実質的にレクサスブランドのセダンでナンバー2の位置におかれ、GSの生産中止が決まったというわけだ。

中古車市場では、GSの流通台数は全国で約500台(2021年5月末時点)と選択肢は豊富。350や300の流通が多く、高年式の450hは少ないようだ。相場は国内初代モデルであれば、100万円以下の予算でも多くみつかる。人気なのはやはりスピンドルグリルになった国内2代目モデルのようで、初期型は車両本体価格150万円前後だが、高年式モデルは古さを全く感じない顔つきということもあって500万円前後で流通している。

また、GS Fの流通台数は全国で31台(2021年5月末時点)と多くはない。初期型は550万円前後、後期型は800万円前後という相場となっている。

車としての評価は高く、モデルバリエーションも豊富なレクサス GS。300万円くらいの予算があれば、人気の高い国内2代目モデル後期型などの認定中古車も射程圏内だ。選択肢が豊富な今のうちに好条件のいい物件を手に入れて、FRセダンならではのハンドリングをじっくりと味わっておくのもいいかもしれない。
 

レクサス ES▲2018年に日本で販売開始されたレクサス ES。標準仕様、スポーツ志向のFスポーツ、高級志向のVersion Lと3グレードのラインナップ。また、デジタルミラーを量産車では世界初採用したモデルでもある。2020年8月のマイナーチェンジでは、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応。2021年秋からはサスペンション構造を改良し、快適性を高めた新型が登場予定だ

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文/藤野太一、写真/トヨタ自動車、Lexus USA