今回のテーマ

-次世代の車、燃料は何?-

レクサスの旗鑑LS600hがいよいよ発売された
5Lエンジン+モーターのハイブリッドシステムを搭載し、6L級のパワーそして、3L並みの燃費を実現している
急速にハイブリッド化の波は進んでいるが、化石燃料を使用することには変わりない
排出されるCO2による地球温暖化が叫ばれる中、次世代の車に求められるクリーンな燃料とは
一体何なのかを2人のライターに聞いてみた
御堀直嗣

バイオ燃料がブームになっているが
単一燃料で走れる車の時代ではなくなる


御堀直嗣さん●フリーランスライター
みほり なおつぐ
フォーミュラレースに参戦経験があるフリーライター
著書には燃料電池車や電気自動車に関するものが多くメカに強い

 バイオ燃料が、今ちょっとしたブームだ。だがすでに、疑問を呈する声も聞かれる。世界で8億の人が、飢餓や栄養失調に苦しんでいるといわれる。この人数は、自動車メーカーのあるアメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、スウェーデン、韓国、そして日本の人口を合わせた数を上回る。それだけ大勢の人々が食べることさえ困っているのに、耕作地を車の燃料のために使っていいのか? という疑問は当然起こってくるはずだ。
 国際エネルギー機関(IEA)の資料によれば、13年後の2020年の見通しで、ガソリンエンジン用バイオエタノール普及が10%未満、ディーゼルエンジン用のバイオディーゼル普及は5%未満と推測する。これを信じれば、バイオ燃料普及の見込みは小さいと言える。中国、インド、ロシアなどで起きているモータリゼーションの発展を見れば、石油のひっ迫や価格上昇はもはや逃れられない。地球温暖化抑制の観点からも、地下資源の利用は控えなければならない。かといって、バイオ燃料の見通しは厳しい。では、どうするのか?
 石油の世紀といわれた20世紀型単一エネルギー利用の着想を転換しなければ、根本的な解決は望めない。つまり、自動車といえども多様なエネルギーで走ることを考えなければ、自動車そのものの存続が危うくなるということだ。
 軽自動車では、すでにガソリン車より電気自動車のほうが高性能だ。また電気は、あらゆる方法で発電できる。航続距離の課題は残るが、日常の足として使う軽自動車であれば、電気自動車のほうがよほど便利で快適だ。携帯電話感覚で数日に一度充電し、毎日使える。
 かといって、電気自動車がすべてを解決できるわけでもない。その人その地域に合った方法で、使えるように自動車を使う発想が肝心だ。もはや、単一燃料で走れる自動車が世界を支配する時代ではなくなるということだろう。