今回のテーマ

-ディーゼルエンジンの今後-

排出するガスが大気汚染の元凶のような扱いをされ規制が厳しくなり日本では絶滅の危機に瀕したディーゼルエンジン
しかし昨年、M・ベンツから320CDIが登場し日産は来年エクストレイルに搭載・市販化を発表
さらにはル・マン24時間でディーゼルを搭載したアウディが優勝するなど今再び注目を浴びている
そこでディーゼルエンジンの今後をディーゼルに詳しい2人のライターに聞いてみた
清水和夫

環境性能は近いうちにクリアできるはず
普及の鍵は国産メーカーのミッション開発


清水和夫さん●モータージャーナリスト
●しみず かずお
車の運動理論を専門としていて
衝突安全と燃料電池に関しても造詣が深く著書も多く出版している

 ディーゼルが環境に悪いというのは昔話。今では環境技術の最先端を行くエンジンに進化している。もともとディーゼルはガソリン燃料が入手できないドイツの片田舎で考案されたエンジン。地元で取れるピーナツ脂で動くエンジンを開発していたルドルフ・ディーゼル氏が考えついたのだ。つまり生まれた時から環境に適合する技術であったことは見逃せない。
 欧州の乗用車ディーゼルの歴史はオイルショックにさかのぼる。それ以降燃費に優 れたディーゼルは一部のユーザーに支持されてきたが、現代のような50%を超える普及に至ったのは1990年代後半からだ。ターボと高圧燃料噴射(コモンレール)を組み合わせることで静かでクリーンなディーゼルエンジンが作れることがわかったからだ。それからの勢いはもの凄い。10%くらいの市場占有率がわずか10年の間で50%を超えるまでに人気が 出た。これはまるでエアバッグが普及した時の勢いに似ているではないか。

 ディーゼルはレースの世界でも注目されている。ル・マン24時間レースではアウディが速さと燃費を武器にして過去最速の記録で走り切る。速さだけではなく、高級車にも使われるディーゼルは静かさでも定評がある。だが問題がないわけでもない。ガソリンエンジンと比べるとNOxの排出量がやはりどうしても多くなってしまう。今後の課題は日本の4つ星規制とカリフォルニアのSULEV (超超低排出ガス規制)を取得できるかどうか。3つ星とULEV(超低排出ガス規制)のレベルはクリアすることは間違いない。
 日本メーカーにとってもう一つのハードルは高トルクに耐えるトルコンATやDSGがないことだ。欧州で売られるレクサスISのディーゼルは、アベンシスの6速MTをやむなく使う。ディーゼルにふさわしいギアボックスの開発が日本メーカーの大きな課題である。