■今回のお題■

-セダンが不人気になった理由-

一部の輸入車ブランドや高級車を除いて、セダン人気は低調だ
しかし人気薄となると中古車においては俄然価格が安くなり
“安くて良いものを”というトレジャーハンターにはぴったりの物件が増える
一時は乗用車=セダンという図式だった日本でナゼここまで人気が凋落したのだろうか
セダン好き? と思われる2人のライターに聞いてみた
家村 浩明

ヒップポイントの高いワゴンRの登場で
その後のカーライフが大きく変わったから

家村 浩明さん●ライター
●いえむら ひろあき
開発ドキュメントやモータースポーツを執筆のテーマとしているライター
初代プリメーラを2台乗り継いだ

ワゴンR 中古車のセダンが安いのはなぜ? 本誌のHくんが、こんな質問をしてきた。「そりゃ、買う人が少ないから。ギョーカイ は、そういうとこ敏感だから!」。再びHくん、「エ、何で少ないんですかぁ?」。おお、セダンに乗るキミにはわからない か!? それはね、90年代半ば以降、日本では最初に乗る(買う)車が、ワゴンRタイプになったから。
前席が、地上から測って、どのくらいの高さにあるか。開発用語でこれを「ヒップポイント」(HP)というが、ワゴンRはこ れが620㎜。ソファでなくダイニングのチェアがこれに近いといわれるが、そういう高めの椅子にスッと収まって、高い天井 でゆったりする。これが“ワゴンR体験”だ。
車に乗るとは、こういうこと。これをカラダで知ってしまった人は、もう、それより低いHPの車には乗らなくなる 。HPにおいて、人は「低→高」であればスンナリと乗り替えられるが、逆はダメ。これはフィジカルな“定理”で、だから のミニバンブームなのである。

したがって、HPが低い、例えばセダンは、上記のような体験をした人にとっては、もうモンダイ外。選択の対象に入ってこ ない。だから、中古車は安価なのだ。
そしてここでも「さすがのトヨタ」である。ヴィッツ、プリウス、ラウムなどに始まって、トヨタはワゴンR
クラウン ほどではないが、しかしHP600㎜前後という「乗用車」を、90年代半ばからずっと提案し続けてきた。そして今、ブレイ ドもオーリスも、そして何とセダンのクラウンマジェスタまで、そのHPは580㎜になっている。ただ、これだけ安いのなら、 かつてのセダンを知る者としては、低いHPを承知で、中古車のセダンを買ってもいいと思う。そう、例えば3世代前くらいの クラウンとか!