▲スズキ スイフトスポーツ ▲カーセンサー2020年1月号特集「小さくすれば8割解決!」に連動するネット記事の最後を飾るのは、こちら現行型スズキ スイフトスポーツ。車好き各位のお悩みも、コレを選べば7~8割ぐらいは解決しちゃうのかも?

古めの車は乗って楽しい。でも正直ちょっとめんどくさい部分も

2019年11月20日発売のカーセンサー2020年1月号では、「ぶつけそう、擦りそう…という不安にサヨナラ 小さくすれば8割解決!」と題した特集を展開している。

近年、車のサイズがどんどん大きくなっているという事実を背景に、主に運転がさほど得意ではない人々に向けて「でも“小さめな車”を選べば問題はおおむね解決しますよね?」という旨を提案している特集だ。

だがそれは「どちらかと言えば運転が得意な人=車好き」に対しても刺さる話なのではないか……との観点に基づき、筆者はいわゆる車好き各位に向けた記事を4回ほど書かせていただいた。それぞれで取り上げた車種は下記のとおりである。

●第1回|2代目フォルクスワーゲン ゴルフおよび初代ゴルフ カブリオ クラシックライン
●第2回|プジョー 205とルノー 5およびスズキ スプラッシュ
●第3回|ポルシェ 911(タイプ964)
●第4回|プジョー 106

※全記事は、本記事ページ下部の関連リンクから読めます

我ながらなかなかシブいラインナップだと思っているが、同時に「難点」も感じている。

何が難点なのかと言えば、端的に言ってスズキ スプラッシュ以外は「古い」ということだ。
 

スズキ スイフトスポーツ▲こちらは当シリーズの第3回に登場した964型ポルシェ 911の代表的なボディ形状3種。素晴らしく小ぶりで素晴らしく楽しい車であることは間違いないが、最終型でも25年以上前の車ゆえ、何かと大変な部分もある
 

車という機械は、最初に新品として作られてからかなりの年数がたてばどうしたって壊れやすくなり、壊れた箇所を直そうとしても「もう部品がありません」となる場合も多い。

またポルシェ 911(タイプ964)のように、特に壊れやすくはなく、補修用部品も(中古品を含めれば)まだまだたくさんあるのだが、「車両の相場が高騰しすぎてなかなか買えない」というケースもある。

その他、この世代の車は単純に「現代の車と比べて受動安全性はどうなんだ?」みたいな疑問もなくはない。

つまり、こういった世代の車は「けっこうめんどくさい」のだ。

マニアな人たちはそんなめんどくささなど物ともせずに買うわけで、それはそれでステキな行為だと思っている。

だが「やっぱり古いのはちょっとめんどくせえなあ……」と感じた場合の自動車愛好家は、どんな「小さな車」を買えばいいのだろうか?

その答えは様々であろうが、筆者が考える正解のひとつは「現行型スズキ スイフトスポーツ」である。
 

▲スズキ スイフトスポーツ▲こちらが現行型スズキ スイフトスポーツ。2017年9月に発売され、現在も新車として製造販売中

現行スイスポの「体幹」は超一流スポーツマンのそれに似ている?

スズキ スイフトスポーツ。有名なモデルゆえ、過剰な説明は不要だろう。

ちょっとアレだった初代はさておき、2代目からはスズキの世界戦略車として開発されている優秀な小型「スズキ スイフト」をベースとするスポーツバージョン。現在は2017年1月に発売された4代目スイフトをベースとするスイスポ(スイフトスポーツの通称)が同年9月以降、新車として販売されている。

搭載エンジンは最高出力140psの1.4L直4直噴ターボで、トランスミッションは6MTまたは6速AT。車台は軽量高剛性なスズキの最新プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を採用し、超高張力鋼板を先代の約3倍使用するなどしてウルトラ高剛性になっている。

だがそれにも関わらず、車両重量は先代比で70kgの軽量化に成功。ちなみに車重は6MT版が970kgで6速AT版が990kgと、どちらも1t切りだ。

そして、当企画における肝心な部分であるボディサイズは、全長3890mm x 全幅1735mm x 全高1500mm。全幅が1700mmを超えたことで3ナンバーにはなってしまったが、1735mmという全幅は、ここ最近の車の中では「まあまあスリム」と表せるだろう。
 

▲スズキ スイフトスポーツ▲現行型スイフトスポーツの車台。骨格や主要部品を全面刷新し、高い剛性と軽量化を実現した新プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を採用している。高剛性でありながら超軽量というのが大きな特徴
▲スズキ スイフトスポーツ▲ちなみに現行スイスポの運転席まわりはこのような感じ。いかにもホットハッチ風の「赤」は、筆者のような中高年にとしてはやや恥ずかしくも感じるが、渋い色味の赤であるため、まあ大丈夫だとも感じる
 

そのように軽量高剛性かつ小ぶりな現行スイスポの走りはどうなのかと言えば……素晴らしすぎる! としか言いようがない。

見た目も中身も筋骨隆々なスポーティモデルゆえ、乗り心地は若干硬めではある。だが決して不快なそれではない。細身でありながら筋骨はしっかりしているスポーツマンがそうであるように、人間の身体で言う「体幹」のようなものがブレないからだろうか? いずれにせよ現行スイスポは、乗り心地がなまじソフトな車よりも「逆に快適!」と感じられる車だ。

そしていわゆる走行性能も最高レベルの一角にある。峠道のようなところをギャンギャン走るのも当然得意としており、そういったシーンでは「……この車、最高出力140psって逆方向にサバ読んでるんじゃない?」と感じてしまうほど、端的に言って速い。

いわゆるコーナーの立ち上がりにて、この車のエンジンが最大トルクを発生する2500rpmあたりをキープしていれば、そしてそこから5000rpmか6000rpmあたりを目指してアクセルペダルをガンッ! と踏んでやれば、この車はほとんど「小型ロケット」と言えそうな状態と化す。しかもそのロケットの軌道は、ひたすら安定している。
 

▲スズキ スイフトスポーツ▲小ぶりなハッチバックではあるが、サーキットに持ち込んだとしてもかなりの戦闘力を発揮できてしまうのが、現行型スズキ スイフトスポーツという車

唯一の難点は「中古車相場がさほど安くはない」ということ

まぁそのような運転はあくまでサーキットのみで行うとして、公道ではあくまでジェントルに運転すべきなわけだが、「ジェントル系ドライビング」に徹したとしても、現行型スイスポの走りは大いにステキだ。

なんというか、筆者自身はスポーツの分野で一流の成績を残したことなどない運動音痴でしかないため、実際のところはわからない。だが「超一流のスポーツ選手がアップのために軽くジョグしてるときって、たぶんこんな身体感覚なんだろうな……」というような感覚を、街中や国道などをごく普通の速度で走っている際の現行スイスポはドライバーに与えてくれるのだ。

そのように素晴らしいスポーティカーでありながら、現行スイスポの燃費は決して悪くはない(ただしハイオク指定だが)。そして「セーフティパッケージ装着車」を選べば、いわゆる先進安全装備もほぼバッチリ。

さらに新しめの国産車ゆえ――まあ機械モノなので「絶対に壊れない」とは言えないが――古い年式のマニアックな輸入車と比べれば「ほぼ故障知らず」ぐらいに形容しても誇大表現には当たらないはずだ。

……という感じでとにかく良いことずくめの、現行型スズキ スイフトスポーツなのである。

まあそれでも一部の輸入車ファンは「国産車はちょっと……」と思うかもしれない。

少し前までの筆者もそうだったので、その気持ちもわからなくはない。だが、今どき車の国籍にこだわるのもナンセンス。「小さめな輸入車」がお好きな各位もぜひぜひ固定観念を振り払い、虚心坦懐に現行型スイスポと向き合ってみていただければと思う。
 

▲スズキ スイフトスポーツ▲国産車が好きな人は当然として、いわゆる輸入車党もだまされたと思って(?)ぜひ一度、現行型スイフトスポーツについていろいろチェックしたり検討していただければと思う
 

唯一の問題点は「中古車相場がさほど安くはない」ということだろうか。

新車のスイスポ(セーフティパッケージ装着車)をオーダーしようとすると、主要なオプション装備を含めた総額はおおむね240万円(※筆者独自計算値)。聞くところによれば、新車ではそこから10万~20万円ほどの値引きもあったりするようなので、まあ新車の支払総額は仮に「220万円ぐらい」としておこう。

それに対して現行スイフトスポーツ(セーフティパッケージ装着車)の中古車相場は、支払総額で見て「だいたい170万~190万円ぐらい」といったニュアンスだ。

……新車の総額と比べたらもちろんお安いわけだが、「微妙っちゃ微妙」と言えなくもない価格差である。

このあたりをどう判断するかは人それぞれで、「それならオレは/ワタシは新車を買うよ!」という人もいらっしゃるだろう。

もちろんそれはそれでOKだ。

ただとにかく、「総額100万円台で購入できる素晴らしい小ぶりな車 世界ランキング」みたいなものがもしもあったら、現行型スイフトスポーツの中古車は――具体的に何位になるかは知らないが――トップ3には入るだろうと筆者個人はにらんでいる。

それゆえ、強くオススメしたいのだ(6MTでも6速ATでも、どっちでもいいと思いますよ。両方ステキです)。
 

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スズキ スイフト スポーツ 現行型(2016年12月~生産中モデル)×全国
文/伊達軍曹、写真/スズキ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。