Aクラスセダン ▲フォルクスワーゲン ID.Buzz(写真左奥)の日本仕様がついに発表されることになった今、気になるのがID.Buzzのご先祖様であるフォルクスワーゲン タイプ2(写真右手前)。ワーゲンバスの愛称で知られるタイプ2は今いくらぐらいで狙えて、どこでどう購入するべきなのでしょうか?

ID.Buzzもいいけど、そのご先祖様も気になる!

“現代のワーゲンバス”ことフォルクスワーゲン ID.Buzzの日本導入がついに発表されました。

フォルクスワーゲン ID.Buzzは、1950年に初代モデルが登場した「フォルクスワーゲン タイプ2(通称ワーゲンバス)」をデザインモチーフとし、EVとして生まれ変わった次世代ミニバン。欧州では2022年に発表され、現地ではすでに高い評価を受けている1台です。
 

Aクラスセダン▲こちらがフォルクスワーゲンのフルEVミニバンであるフォルクスワーゲン ID.Buzz
 

そんなフォルクスワーゲン ID.Buzzの日本仕様が、東京、名古屋、大阪の3会場で開催される「Volkswagen Brand Exhibition(フォルクスワーゲンブランドエキシビション)」でついにお披露目されたわけですが、そうなってくると同時に気になるのが、元祖ワーゲンバスであるフォルクスワーゲン タイプ2の中古車状況です。
 

Aクラスセダン▲こちらは1950年から1979年まで販売されたフォルクスワーゲン タイプ2
 

元祖ワーゲンバスは今いくらぐらいで、何台ほど流通しているのか? もしも購入するのであれば、どこでどのように選んだらいいのか? ID.Buzzのご先祖様であるフォルクスワーゲン タイプ2のモデル概要を振り返るとともに、2025年的中古車事情を見てまいりましょう!
 

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フォルクスワーゲン タイプ2(初代)
 

モデル概要:長きにわたり愛され続けたコンパクトトランスポーター

フォルクスワーゲン タイプ2は、ドイツのフォルクスワーゲン社が1950年から1979年にかけて販売したワンボックスタイプの商用車。カタログに表記された正式車名は年代や仕向け地によって様々であるため、一般的には「ワーゲンバス」という通り名の方が有名かもしれません。
 

Aクラスセダン▲「ワーゲンバス」の愛称で知られるフォルクスワーゲン タイプ2
 

リアに搭載されるエンジンは、フォルクスワーゲン タイプ1(通称ビートル)と同じ空冷の水平対向4気筒OHVで、当初の排気量は1.1Lでした。その後の改良によりエンジン排気量は1.2L、1.5Lと徐々に増えていき、第2世代では最終的に2Lまで拡大されています。

「ワーゲンバス」と言ったときに一般的に連想されるタイプ2は「T1」と呼ばれる第1世代で、1950年から1967年まで販売されました。初期(early)のワーゲンバスということで、「アーリーバス」と呼ばれることも多い世代です。基本的なボディ形状はご存じのとおりの“あのカタチ”ですが、細かくいうとマイクロバス/デラックス マイクロバス/コンビ/パネルバン/シングルピックアップなどに分かれています。
 

Aクラスセダン▲こちらがアーリーバスことT1。写真は、側面はすべてに窓が装着される他、ルーフには天窓も備わる「デラックスマイクロバス」。2トーンのボディカラーとアルミ製モールディングも特徴
Aクラスセダン▲こちらはT1の「コンビ」。カーゴスペースのシートは容易に脱着でき、内装もマイクロバスより簡素。ボディカラーもモノトーンが標準だった
 

1968年には大幅改良が行われ、「T2」または「レイトバス」と呼ばれる世代に変更されました。プラットフォームなどの基本はT1(アーリーバス)と同じですが、スタイリングはフロントマスクを中心に一新。またエンジンの排気量も前述のとおり順次拡大されていき、T2の前期型(1968~1971年)では1.6Lでしたが、中期型(1972年)では1.7Lが追加され、後期型(1973~1979年)は1.8Lまたは2Lが採用されました。
 

Aクラスセダン▲1968年に大幅改良を受け、T2と呼ばれる世代になったモデル。愛称は「レイトバス」
Aクラスセダン▲写真の個体は、2025年1月に南カリフォルニアで発生したパリセーズ火災で奇跡的に焼失を免れたT2
 

そしてワーゲンバスことフォルクスワーゲン タイプ2は、1979年に水冷エンジンを基本とする「T3(日本名ヴァナゴン」が発売されるまで、主に北米を中心に、コンパクトなトランスポーターとして人気を博し続けました。
 

 

中古車状況:直近の平均価格は微上昇トレンドが続く

フォルクスワーゲン タイプ2は、一般的な車のように何十台、何百台もの中古車が常時流通しているわけではありませんが、それでも延べ掲載台数はここ1年以上、15台前後を行き来しています。つまり「希少ではあるが、決して探せないわけではない」というのが、流通台数から考えた場合のフォルクスワーゲン タイプ2です。

そして中古車価格を軸に考えてみると、2025年5月時点におけるフォルクスワーゲン タイプ2の平均価格は約486万円。過去2年間の価格推移は「おおむね横ばい」といったニュアンスではありますが、世界的な「ちょっと古いモノブーム」の影響でしょうか、ここ1年ほどは微妙な値上がり傾向が続いています。
 

Aクラスセダン▲2024年6月~2025年5月の平均支払総額推移
 
 

オススメの買い方①:信頼できる専門店に相談しながらアーリーバスを探す

フロントまわりを中心にデザインが大きく変わったT2(レイトバス)も悪くありませんが、やはり「ワーゲンバス」のイメージリーダーは、なんといってもアーリーバスこと前期型のT1です。
 

Aクラスセダン▲どんな場所に置いてもやたらと絵になる、アーリーバスことフォルクスワーゲン タイプ2の前期型
 

アーリーバスは、人気が高い分だけレイトバス(T2)よりも高値である場合が多いのですが、そこはもう市場原理で動く自由主義社会に生きている人間としては、あきらめるというか割り切るしかありません。中古車価格はモノによってまちまちですが、基本的には総額400万~800万円ほどの予算で探すことができるでしょう。

実際に販売されているアーリーバスのコンディションは、「すべてをキレイにフルレストアしたもの」から「内装はレストアしたが、外装はあえてエイジング感を残しているもの」、あるいは「すべてこれからレストアする予定のベース車両」まで、本当に様々です。

そのため購入時は後述する注意点を参照のうえ、自分はどんなイメージのタイプ2が欲しいと思っているかを販売店に明確に伝え、その道の専門家と相談しながらじっくり選んでいく購入スタイルがオススメとなります。
 

Aクラスセダン▲ピカピカにレストアされたT1もいいが、エイジング感をあえて残しているT1もシブい

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フォルクスワーゲン タイプ2(初代) × アーリーバス
 

オススメの買い方②:同じく信頼できる専門店に相談しながらレイトバスを探す

「ワーゲンバス」のイメージリーダーは前述のとおりT1ですが、1968年以降のT2(レイトバス)でも良しと考えるのであれば、T1よりも比較的手頃な予算でワーゲンバスを手に入れることができます。
 

Aクラスセダン▲総額300万円台から見つけることもできるT2(レイトバス)
 

とはいえ、こちらも価格は物件によって本当にまちまちなのですが、それでもT1よりはいくぶんお安い総額300万~600万円付近で、おしゃれな1台を見つけることができるでしょう。

T2は後期型ゆえ、T1よりは各部の設計や製造年月が新しいわけですが、今となっては「T1もT2も、どちらも同じぐらい古い車である」と考えるsのが正解です。そのため購入時はT1の場合と同様に、後述する注意点を参照のうえ、専門店と相談しながらじっくり選ぶことをオススメします。
 

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フォルクスワーゲン タイプ2(初代) × レイトバス
 

購入時の注意点:専門店がしっかり修復&整備した物件だけに狙いを絞る

きわめてかわいいビジュアルのフォルクスワーゲン タイプ2にほれ込むのはいいのですが、相手は何せ古い世代の車です。T2(レイトバス)の最終年式でも46年落ちであり、T1(アーリーバス)の場合は最終年式でも58年落ちなのです。

ということは、何の整備もされていない物件は、乗っているうちにあちこちの部分が必ず壊れます。そしてしっかり整備された物件であっても、軽微な故障は時おり発生するでしょう。まずはそこを覚悟したうえで購入する必要があります。

とはいえ、フォルクスワーゲン タイプ2はシンプルな構造の車であり、修理するうえで必要になる部品も十分に流通しています。そのため、空冷エンジンを搭載するフォルクスワーゲン車の整備と販売経験が豊富な専門店で、十分な整備を受けた物件を購入するようにさえすれば、購入後の維持はさほど難しくはありません。

とにかく何店かの専門店を訪問し、コミュニケーションを取ったうえで「ここなら任せられる!」と心底思えるお店およびスタッフを見つけるところから始めるといいでしょう。
 

Aクラスセダン▲何十年も前の車は基本的に、しっかり整備された個体でないとマトモには走らない
 

また、前述したとおり部品はいくらでも(?)あるため心配無用なのですが、ボディがサビまくってしまっていると、いくら部品があってもどうにもなりません。

とはいえ、仮にサビまくっているボディであっても、パテを盛ってキレイに塗装されてしまうと、我々素人が外から見たところで何もわかりません。そのため専門店訪問時は、その販売店が普段、旧車のボディに対してどのような防錆処理や修正作業を行なっているのかを、できれば作業中の写真でもって確認するようにしてください。
 

Aクラスセダン▲塗装の下に隠れて見えない「ボディの状態」も、購入時はしっかり確認したい
 

以上のような注意点があることは間違いないフォルクスワーゲン タイプ2ですが、それと同時に、この車でしか味わうことができないデザイン、雰囲気、走行フィールなどを持ち合わせた「唯一無二の素晴らしい車」であることもまた、間違いありません。

もしも興味があるならば、ぜひとも経験豊富な専門店にて素晴らしい1台を購入し、ハッピーでヒッピーな(?)ワーゲンバスライフを始めてみることをオススメいたします。
 

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フォルクスワーゲン タイプ2(初代)
文/伊達軍曹 写真/Volkswagen of America、Volkswagen AG
※記事内の情報は2025年6月19日時点のものです。
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。