【伊達セレクション】異端の中古車評論家・伊達軍曹、「あえての停滞」を語る
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2014/02/18
みんながみんな、最新じゃなくたっていいんだよなぁ。 みつを(←嘘)
車がこれ以上すごくなる必要はあるのだろうか
「次は空を飛ぶつもりか?」。これは01年10月、当時筆者が勤務していた出版社が「最新輸入車オールカタログ」的なムックを制作した際、登場したばかりのR230こと旧型M・ベンツSLクラスの解説文に同僚が付けた大見出しである。車そのものについていささか説明不足なきらいはあるが、R230型SLに対する当時の世の中の驚きを簡潔に言い表した、なかなか秀逸な見出しであると今でも思っている。
あれから12年ちょい。車は今のところまだ空を飛んでいないが、コンピュータを駆使した様々な統合制御技術はさらに進み、またエンジンやシャシーそのもの、あるいはタイヤなどのレベルも向上し続けている。いまだに空は飛ばないが、運転初心者であっても鼻歌まじりで安全に、超絶スピードでコーナーを駆け抜けることができるようになった。
もちろん技術の進歩は喜ばしいものであり、様々な新技術により交通事故も減ることだろう。それらを日々研究し、商品化しているエンジニア各位には頭が下がりっぱなしだし、「もっとすごいヤツを!」と求める車好きのマインドも、世の中を前進させる好ましい力のひとつだと思っている。
しかし同時に、「……もういいんじゃないですか?」とも思うのだ。
モア&モアを求めればキリがないが、直噴ターボが一般化した08~09年あたりの車でも十分安全かつ快適に、楽しく燃費良く走るうえでは何の問題もない。空を飛びそうな勢いの(そして高額な)新技術搭載モデルを目を三角にして追い求めずとも、5~6年落ちの中古車を選び、具象的な移動と抽象的な自動車趣味を愉しめばそれでいいじゃないかと、愚考するのだ。
数年落ちの良質中古車にのんびり乗るのもまた善し
しかしこれはある種の危険思想で、世の中がこういうユルい考えの人だらけになると進歩どころか退歩が始まり、景気が減速し人心が荒廃する。会社などでもそうだが、「現状維持」を目標にしてしまうと現状の維持すらできなくなるのが一般的なのだ。世の中、やはり基本的には突撃というか前進しなければならないのである。だが、「なにも全員が未来に向かって突撃しなくてもいいんじゃないすか?」というのが本稿の主旨である。
世の中が停滞し人心が荒廃するとマズイので、エンジニアの皆さんやディープな自動車好きの皆さんには「次は空を飛ぶのか?」と聞きたくなるほどの素晴らしい新技術を、ガンガン追い求めていただく。その一方で筆者のようなユルい人間は、それら進歩を心底賞賛しつつも、支払総額100万円台とかで5年落ちぐらいの輸入車を買い、のんびりと、しかしそれなりの快速と結構な環境性能を発揮しつつ、ぼちぼち楽しむ。
どちらの方向性で行くかは人それぞれであり、どちらが正しいとか間違っているという話でもない。しかし選択肢というか考え方の問題として、こういった「積極的停滞」もアリではないかと考える筆者である。もちろん、全員が停滞を選んじゃうと何かと大問題ではあるのですが!
ということで、今回の伊達セレクションはずばり「08~09年式のアンダー200万円級輸入車」だ。
- 「08~09年式のアンダー200万円級輸入車」を探す
- 伊達軍曹.com(伊達軍曹公式サイト)
01年10月から12年2月まで販売されたM・ベンツSLクラスの初期型。今にして見ればかわいいモノだが、当時は「次は空を飛ぶのか?」と思ったものだ
11年12月まで販売されていた旧型BMW3シリーズ。支払総額100万円台後半で好条件な中古車を探せる。最新型には負けるが、ある意味十分だ
今も販売中の現行M・ベンツCクラス(※デトロイトモーターショーで新型発表済み)。こちらも総額100万円台で十分納得のいく物件が探せるだろう
【伊達軍曹 Sergeant DATE】東京都杉並区出身の輸入中古車研究家。外資系消費財メーカー本社勤務の後、出版業界に。現在は「輸入中古車は、その価格にかかわらず素晴しい!」との見方を核とする輸入中古車研究家として各誌で活躍。雑誌「カーセンサーEDGE」では「中古車相場 威力偵察隊」を連載中