自動運転のキーテクノロジー「LiDAR」は何がすごいのか?【いまどき・これからの車学】
2022/06/12
最近話題の「LiDAR」とは?
自動運転関連の記事などに最近頻繁に出てくる言葉が「LiDAR」。読み方は「ライダー」で「Light Detection and Ranging」の略である。
「LiDAR」は光センサーの一種で、レーザー光を対象物に照射してその反射光を計測して対象物までの距離や形状を測定する技術のことだ。
LiDARは2020年に発売されたAppleのiPhone12 Pro採用されている。しかし、根底にある考えは同じでも、用途や技術面では自動車用途の方がはるかにレベルが高い。また、技術としてはすでに航空機などにも使われており、昨今ではドローン(プロ用途)にも搭載されている。
自動車における先進運転支援技術であるADASには、これまでミリ波レーダーやカメラが積極的に採用され、一定の成果を上げている。そして、その技術レベルも日々進化している。
それらミリ波レーダーやカメラとLiDARは何が異なるのか?
まず考え方としては、ミリ波レーダーはLiDARに近い。比較的安価で、夜間や悪天候でもレーダー波は対象物に届くので測定しやすい。一方、対象物が小さい場合の検知がやや苦手。高速道路などでたまに見かける“落下物”、例えばダンボールや樹木などは反射率が低くなるので検知できないケースもある。
続いて、カメラに関しては悪天候や夜間が弱点。また超音波センサーは、近距離での精度は高いが車間を計測するなどの遠距離は不得意だ。駐車時に使われるバックソナーをイメージしてもらえると、その利用用途を理解してもらえるだろうか。
LiDAR最大のメリットとデメリットは
これらを受けて登場したLiDARだが、その最大の特徴は、対象物を3D(立体的)に検出できる点にある。
前方を走行する車両、特に複数の対象物を識別できる点が、前述したミリ波レーダーやカメラに比べて段違いに優れている。これが自動運転技術に応用される理由になっているのだ。冒頭に述べたように、航空用途では実績があるので、車への転用自体はそれほど難しいものではない。ただ“道のない”航空機と比べると道路や複数の車両、そして人がいる自動車領域では極めて複雑なシステムが要求される。
一方、デメリットとしてはシステム自体の価格が高い点にある。どんな技術でも最初はそういうものだが、たまに都市部で見かけるLiDARを装着した試験車両(ルーフの上にユニットが載っているもの)に搭載されているものは数百万円レベル、自動車1台分に相当する。
LiDARの将来性は
とても高額なLiDARだが、自動車搭載用にユニットの小型化は始まっており、限定的とはいえ、レクサス LSやトヨタ MIRAIには設定されている。リース販売のみだが、ホンダ レジェンドはLiDARを複数搭載した「ホンダ センシング エリート」を採用することで、自動運転レベル3を世界で初めて達成している。
ただ、これまで触れた技術はどれも一長一短、LiDARにも価格の高さとは別に、悪天候時の検出精度の低下が懸念される。
今後はこれらの技術を複合的に組み合わせること(フュージョンテクノロジー)が重要となってくる。それぞれの技術がもつ得手不得手を補完し合うことで、ロバスト性を高める(外部からの影響を受けにくくする)目的もある。
クリアしなければならない問題は山積みだが、LiDARが自動運転技術におけるキーテクノロジーであることは覚えておいて損はない。
カーコメンテーター、ITSエヴァンジェリスト
高山正寛
カーセンサー創刊直後から新車とカーAV記事を担当。途中5年間エンターテインメント業界に身を置いた後、1999年に独立。ITS Evangelist(カーナビ伝道師)の肩書で純正・市販・スマホアプリなどを日々テストし普及活動を行う。新車・中古車のバイヤーズ系と組織、人材面からのマーケティングを専門家と連携して行っている。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。BOSCH認定CDRアナリスト。愛車はトヨタ プリウスPHV(ZVW35)とフィアット 500C