リクルート自動車総研▲自動車・中古車に関する調査・研究を通じ業界の発展を目指すリクルート自動車総研が、調査データと独自の考察をお届けします

中古車の購入価格は上昇傾向

「車離れ」という言葉もすっかり定着してしまいましたが、実は中古車市場は右肩上がりで成長中。

2020年こそ新型コロナウイルスの影響を受けましたが、リクルート自動車総研が実施している「中古車購入実態調査」では、2015年と比較した昨年の市場規模は約1.5倍でした。この数字は購入単価と購入台数の掛け合わせで算出をしていて、成長要因としては購入単価のアップが大きく影響しております。

つまり、中古車を買っている人が予算をアップしているということ。
 

リクルート自動車総研グラフ

上のグラフのとおり毎年数万円から十数万円程度のアップではありますが、恐らくみなさんは毎年車を買い替えてはいないはず。

もし2~3年で買い替えをされているならざっくり25万円ほど、5~6年で買い替えている場合は50万円ほど前回よりも購入費用を上げている、ということになります。

今後も購入価格の上昇は継続か

では、車を買い替える際に単価が上がる要因は何でしょうか? これは大きく分けて3つあります。

1つ目は、そもそも新車の値段が上がっているということ。2000年以降が顕著ですが、安全性や環境への配慮など、制約が増しております。新車時価格が上がれば、中古車も比例して上がります。
 

トヨタ プリウス ▲先代のプリウスの最も安いグレードの価格は205万円(1.8 L)だったが、現行型のプリウスでは259.7万円(1.8 E)に上がっている(写真は現行型のAプレミアム ツーリングセレクション)

2つ目の要因は、SUVの流行です。人気を集めていたハッチバックや軽自動車に代わり、近年のトレンドは完全にSUVが一強となりました。

ハッチバックに比べて価格設定が高いため、SUVが欲しい場合は自然と予算アップとなります。
 

ホンダ ヴェゼル ▲ホンダのSUVモデル、ヴェゼル(現行型)。人気のハイブリッドでは新車で半年以上の納車待ちという状態

最後に3つ目ですが、新車登録された車が早くから中古車として市場に出回る機会が増えていることです。

ひと昔前は“中古車=型オチの古い車”というイメージがあったかもしれませんが、昨今は新車が発売されるとほぼ同時にディーラー試乗車などが中古車としても流通を始めます。

また、残価設定ローンやサブスク、リースなどがメジャーになるにつれて、高年式で低走行な中古車の選択肢も豊富になってきているのです。
 

半導体不足で突如中古車が人気になったと思われがちですが、この市場の拡大は以前から緩やかに進んでおりました。

新車・中古車の垣根が崩れ始め、結果として中古車市場の規模が拡大しているのです。今後もこの傾向は続くことが予想されます。
 

文/西村泰宏、写真/トヨタ、ホンダ
西村泰宏(にしむらやすひろ)

リクルート自動車総研所長

西村泰宏

カーセンサー統括編集長 兼 リクルート自動車総研所長。自動車メディアを車好きだけでなく、車を購入するすべての人のエンターテインメントに変革すべく日々の仕事に従事している。