スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

ジャッキー・チェンの三菱愛が爆発したカーバトルムービー!

デッドヒート|映画の名車
DVD『デッドヒート』発売中 95年・香港 監督=ゴードン・チャン 出演=ジャッキー・チェン、アニタ・ユン、トルステン・ニッケル、加山雄三、江黒真理衣、澤田謙也ほか 販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ ジャパン ¥1,500(税込)
香港が生んだ希代のアクションスター、ジャッキー・チェンと三菱自動車のつながりは深い。1984年公開の『キャノンボール2』ではハイテク改造を施したスタリオンを駆ってエントリーしているほか、自身が手がけた数々の作品で三菱車を登場させている。かつては三菱ふそうファイターのCMにも出演し、昨年は中国における三菱自動車のブランドイメージキャラクターを務めた。元々ジャッキーは大の車好きであり、一時は50台以上もの愛車を所有していたといわれている。そんなジャッキーのカーマニアぶりが爆発したのが1996年公開の『デッドヒート』だ。

三菱自動車での研修を修了し、日本から香港に帰国したジャッキー(ジャッキー・チェン)は、父親の経営するチューニングショップの手伝いをしながら、警察からの要請で違法改造車の検問に協力する日々を送っていた。そんなある日のこと。検問を突破した黒いGT-Rが警察官をひき殺して逃走した。数日後に再び現れたGT-RをジャッキーはテレビクルーのFTOで追跡、見事逮捕に追い込む。犯人は国際手配中のクーガー(トルステン・ニッケル)だ。しかし、ほどなくしてクーガーは仲間の協力によって脱獄に成功。拘留のきっかけをつくったジャッキーに襲いかかり、2人の妹を拉致、「返してほしければ、仙台のレースで決着をつけろ」と一方的な挑戦を表明する。かくしてジャッキーは再び日本へ舞い戻るのだった…。

香港アクションらしい超強引なストーリーは随所で破綻を見せているが、サスペンス的な部分は添え物に過ぎず、あくまでアクションとカーバトルを堪能するための娯楽作なので、ほとんど気にならない。プレハブをクレーンでぶん回しながらジャッキー一家の自宅を破壊しまくるシーンは迫力があるし、パチンコ店で繰り広げる澤田謙也(実写版『ストリートファイター』のキャプテンサワダ役)とのカンフー対決は出色の出来だ。

注目のカーバトルは香港パートのカーチェイスと、日本パートのレースシーンに分かれる。いずれもジャッキーは三菱車に乗り込み大活躍。香港パートではFTOでGT-Rを鮮やかに追撃するという三菱ファン狂喜の展開。日本パートではGTOを駆って、仙台ハイランドで憎きクーガーのGT-Rと激烈なデッドヒートを繰り広げる。ラストは驚愕の展開が待ち受けるのでお楽しみに!

映画に登場する車たち

三菱 FTO

三菱のホットモデルだったギャランクーペFTOの名を受け継ぎ、1994年に登場。曲線で構成されたデザインが尖鋭的であり、特に海外人気が高かった。1994年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。劇中ではガス欠になっていたテレビ局の報道カメラマンの愛車として登場。ちょうど通りかかったジャッキーが燃料補給をしているところへクーガーの黒いR32が現れたので、そのまま無断で拝借、果敢に追走を始める。当時最強を誇ったR32にも直線で引けをとらずに最後は後ろから小突き回して警察車両に衝突させるなど、現実ではまずありえない展開にFTOファンは拍手喝采を送った。

三菱 GTO

スピード狂のテロリスト、クーガーに「仙台のレースにエントリーして勝負しろ!」と挑戦状を叩きつけられたジャッキーは、自宅の工場で寝る間も惜しんでランエボを組み上げ、日本へ出発。だが、予選で他の車両と接触して大破してしまう。そこへ登場するのが江黒真理衣演じる社長令嬢。日本での研修中にジャッキーといい仲になり、GTOを気前よく2台もプレゼントしてくれたのだ。このへん、いかにも香港映画らしいご都合主義で鼻白まないでもない。だって、あれだけ苦労して仕上げたランエボの立場がないもの…。GTOはスタリオンの後継車として1990年に登場したフラグシップスポーツクーペ。劇中で登場するのは1993年にビッグマイナーチェンジされた中期型だ。

日産 スカイラインGT-R(R32型)

1989年に発売された16年ぶりのGT-Rグレード。そのポテンシャルはフェラーリをも上回ると絶賛され、国内外のレースを席巻した。また、マフラー交換やブーストアップなどで比較的カンタンに高い出力を発揮。1990年代以降のチューニング文化に絶大な影響を及ぼした。本作では悪役クーガーの愛車として、ジャッキーの前に大きく立ちはだかる。
Text/伊熊恒介