スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

一番いいところに差しかかると強制的に巻き戻し!究極のリワインドムービー

バンテージ・ポイント|映画の名車
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『バンテージ・ポイント』2008年・米 監督:ピート・トラヴィス 出演:デニス・クエイド/マシュー・フォックス/シガニー・ウィーバー/フォレスト・ウィテカー/エドゥアルド・ノリエガ/アイェレット・ゾラー/ウィリアム・ハートほか 販売元: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 1,980-(税込)
先日、歌手のmisonoちゃんにインタビューする機会に恵まれ、映画の話になったのだが、彼女いわく「映画は好きだけど映画館は嫌い」。理由を聞いてみると「巻き戻せないから」。うーん、物心ついたときからレンタルビデオで映画を観てきた世代ならではの意見だなぁと、しばし感慨にふけってしまった。今回紹介する『バンテージ・ポイント』は、その“巻き戻し”を効果的に使った新趣向の映画だ。

舞台はスペインのサラマンカ。国際テロ対策サミットが開催されているマヨール広場の会場に、米国大統領のヘンリー・アシュトン(ウィリアム・ハート)が登場、演説を始めようとしたその刹那、何者かの凶弾に撃たれる。直後にはステージが爆発。詰めかけていた観衆を巻き込んで阿鼻叫喚の大惨事に…。演説の模様を収めるべくカメラを回していた米国のニュース番組クルーは、女性リポーターの爆死を見届け呆然となる。

ここで突如画面がリワインド!! 23分前に時が戻り、今度はベテランSPバーンズ(デニス・クエイド)の視点で同じ出来事が繰り返される。以降、強制リワインドすること4度。市長の護衛に来ていた地元の警察官、妻子と別居中のアメリカ人観光客、アシュトン大統領自身、実行犯のテロリスト周辺…と次々に視点が切り替わりながら、事件の全容が明らかになっていく。

キャスティングは豪華絢爛。ニュースチャンネルの女性プロデューサー、ブルックスに『エイリアン』のシガニー・ウィーバー。バーンズの信頼する同僚SPテイラーにドラマ「LOST」のジャック役でおなじみのマシュー・フォックス。地元サラマンカの刑事エンリケに『オープン・ユア・アイズ』で主役を張ったエドゥアルド・ノリエガ。そのエンリケの謎めいた恋人ベロニカを、イスラエルを代表する女優アイェレット・ゾラーが妖艶に演じる。

同じ場所、同じ時間、同じ事件を共有している8人の視点が紐解かれていき、それぞれの物語を補完していくので、misonoちゃんのような巻き戻し派の人でも、すんなりミステリーを堪能できること請け合い。一番いいところに差しかかると強制的に巻き戻されるという憎らしい演出も、繰り返されていくうちにだんだん快感になってくるから不思議だ。スペインでの撮影を断念し、メキシコシティにサラマンカの街とマヨール広場をそのまま建ててしまった根性もアッパレ。爆発シーンもカーチェイスもド迫力だし、90分でスッキリまとまっているのも◎。スカッとしたいときにオススメです。

映画に登場する車たち

オペル アストラ

真犯人を突き止めたデニス・クエイド演じるSP、トーマス・バーンズが果敢に追跡を開始!! 都合6回、繰り返し見せられてきたマイヨール広場での大統領暗殺→爆破テロの流れから一転、壮絶なカーチェイスがスタートする。その際バーンズが一般人から借りた青いコンパクトカーがオペル アストラ。サラマンカ市街を小気味よくギュンギュン走り抜く様が実にカッコイイ。ガッツンガッツンぶつけて見るも無残な姿になっていくのだが、それでもへこたれずに追走するアストラの踏ん張りに、なんだか胸が熱くなってくる。それくらいこのカーチェイスはスピード感、アングル、アイデア、組み立て、すべてが完璧!! ここ10年のハリウッド映画で5本の指に入る出来と言っても過言ではない。カーアクションファンは必見!! 余談だが、サラマンカ周辺は世界遺産に指定されており、撮影許可が降りなかったため、スペインでの撮影は上空からの俯瞰のみ。ほとんどがメキシコロケである。


Text/伊熊恒介