スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

練りに練り込まれた脚本に「やられた!」と声を上げること必至!

アフタースクール|映画の名車
(C)『アフタースクール』製作委員会
『アフタースクール』2008年・日 監督・脚本:内田けんじ 出演:大泉洋/佐々木蔵之介/堺雅人/常盤貴子/田畑智子/北見敏之/大石吾朗/桃生亜希子/ムロツヨシ/佐藤佐吉/山本圭ほか 発売元:クロックワークス、アミューズ 販売元: メディアファクトリー  4,935-(税込)
ここ数年、日本映画は活況を呈しているが、ヒット作のほとんどはドラマ、マンガ、ミステリー、携帯小説といった原作モノである。そんな状況下において、1972年生まれの内田けんじは、オリジナル脚本で勝負する希有な若手監督&脚本家だ。劇場用長編デビュー作となった2005年公開の『運命じゃない人』は、5人の登場人物それぞれの視点で時間軸が交差しながら進行していく一夜の物語。シンプルに見えて仕掛けは巧妙。消えた大金を支点として張られた伏線の数々が、終盤にビシバシと明らかにされていく様が痛快なエンターテインメントの大傑作である。本作で内田はカンヌ国際映画祭批評家週間(デビュー2作目までの監督が対象)においてフランス作家協会賞など4部門を受賞するという快挙も成し遂げた。

その内田けんじが3年ぶりに放った待望の新作が、昨春公開された『アフタースクール』だ。もちろん本作も内田オリジナルの練りに練り込まれた脚本。姿を消した30代のサラリーマンを巡り、中学時代の同級生や探偵、上司、ヤクザまでもが様々な思惑を抱え、右往左往を繰り返す。いったいその男の周辺で何が起こっていたのか …!? というのが物語の大枠だ。キャスティングはいずれ劣らぬクセモノ揃い。物語の軸となる行方不明の木村に堺雅人、木村とは中学時代からずっと親友関係を続けている神野を大泉洋、謎の人物から木村の捜索を依頼された探偵・北沢を佐々木蔵之介が演じる。

ここまでで十分に興味を引かれた未見の方は、そのままレンタル店へ足を向けるか、DVDを購入することをオススメする。ネタバレをしないつもりだが、どこにほころびがあるかわからない。些細なことでも十分に興を削いでしまう可能性があるからだ。それでもかまわないという方だけ、読み進んでほしい。

まず、前半戦は探偵・北沢が物語をリードする。神野に接近して一緒に木村の足跡を追いながら徐々に素性を解き明かし、居所を突き止めていく。裏の稼業が長い北沢は、母校の中学で教師をしている世間知らずの神野をうまく利用しているように、いかにも見える。しかしながら後半は、ちゃぶ台をひっくり返されたかのように劇的な展開が待ち受ける。そして、そのヒントは序盤戦の何気ないやりとりの時点からちりばめられており、何を言ったのか、言わなかったのか、がすべて伏線となっているのだ。いやー、人間の思い込みって本当に怖いものですね。

大ヒット原作にも大人気俳優にも大仕掛けのセットにも頼らず、脚本の面白さだけで純粋に勝負した本作が連日大入りとなり、単館系作品としては上々のスマッシュヒットを飛ばしたことは、非常に喜ばしい出来事だ。ドラマの延長戦やマンガ原作が悪いとはいわない。でも、それだけじゃつまらない。『少年メリケンサック』の宮藤官九郎や、この内田けんじのように、脚本の面白さで客を呼び込める人材がどんどん出てくれば、日本映画は今以上に面白くなるはずだ。

映画に登場する車たち

ポルシェ 911(996型)

しがない中学教師の神野(大泉洋)が一念発起して買ったシルバーのポルシェ911は、996型。おそらくは5~6年落ちの中古車だと思われるが、決して安い買い物ではない。それでも「公務員をなめんなよ!! 」と一念発起して購入したようだ(なぜ神野が軽自動車からポルシェに車を買い替えたのかは、後半に理由判明)。ところが、このポルシェを同級生の木村(堺雅人)が借りたまま行方不明になったのだから、さあ大変。その後、横浜のホテルの前で、このポルシェに若い女を乗せている写真を同僚に撮られてしまうのだが、果たして木村は浮気をしていたのだろうか…!? ちなみに、このポルシェはプロデューサーの愛車なのだそう。


Text/伊熊恒介