■今回のお題■

-エボとインプどこが同じでドコが違うの-

日本が世界に誇るカルトな車といえば三菱のランサーエボリューションと
スバルのインプレッサSTIだ
WRC参戦車として開発され磨きをかけた走行性能でライバルと
目される2台だがホントのところは同じような車なのだろうか
この2台の操り手といえる2人のライターにそれぞれのセールスポイントを聞いてみた
斎藤 聡

デジタルなエボとアナログ的なインプ
これが2台の乗り味の違いにつながる

斎藤 聡さん●フリーランスライター
●さいとう さとし
軽自動車からチューニングカーまで守備範囲の広い自動車ライター
愛車は旧型中期のインプレッサ

ランサーエボリューションⅩランエボとインプレッサの一番の違いは 乗り味にある。極端な言い方をすると、ランエボはデジタル的で、インプレッサはアナログ的だということ。分岐点となったのは、エボⅣにAYCを装着したところから始まる。操縦性に色濃く反映されたのはエボⅦになってからだが、この時点でランエボは4WDの操縦性をさらに高めようとして電子制御を積極的に採用することになる。
一方、インプレッサは、長いライフサイクルを終えたGC8型からGDB型にモデルチェンジしても、電子制御には頼らず、前後トルク配分の変更や機械式LSDによって、操縦性を成立させようとする方向を選ぶ。
この2台の違いは、エンジンの搭載の仕方によるのだという意見がある。ランエボはFFベースの4WDで、インプレッサは縦置きの4WDだということだが、ボクはこの説をあまり支持しない。だって、スバルの2輪駆動はFFなんだもの。むしろメーカーがどんな車を作ろうと思考しているかということの違いではないかと思う。

三菱は昔から車の操縦を電子制御を介してより効率良く、高性能にしてきた。実際ランエボのトラクション性能や旋回性能は、インプレッサを凌ぐほどに高い。ただ電子制御によるデジタルな応答性は、アナログである人の感覚に合わせにくく、そのギャップを埋めるのが難しい。
インプレッサは、初めから車は人がコントロールするものだというスタンスに立って、いかに素直に走らせるかというところに重点を置いて車を作ってきたのだ。だからハンドルを切り出した時の車の動きや、旋回感、グリップ限界を超えた先の滑り出しのわかりやすさ、コントロール性などといった部分を徹底的にチューニングしてきた。その結果がランエボとインプレッサの違いになっているのではないかと思う。
インプレッサSTI ただ、ランエボはⅨMRで操縦性をかなりアナログ感覚で操作できるように熟成してきた。エボⅩの完成度はかなり高そうだ。そうなると次期インプレッサSTIの仕上がりが気になる。圧倒的なパフォーマンスを備えながらも、あくまでもアナログな、人の感覚を裏切らない操縦性の車であってほしいと思う。