■今回のお題■

-キープコンセプトをどう思いますか-

ホンダフィットを筆頭に今年注目を集めたのが
ヴォクシー/ノア、エクストレイルなど人気モデルのFMC
いずれも先代モデルと見た目が大きく変わらないキープコンセプトの手法が多く採用されている
このトレンドについて評論家2人に聞いてみた
松下宏

キープコンセプトの車は、支持してくれる
ユーザーを見失ってしまい失敗することが多い

松下 宏さん●自動車評論家
●まつした ひろし
中古車相場に精通し、購入ガイドやローン・保険など
車に関するお金や経済情報にも詳しいライター

ワゴンR 昔から、大ヒットした車の次のモデルは従来型を受け継いだキープコンセプトの車として作られることが多い。その中には3代続けたミラや、ワゴンR、クラウンなどのようにヒットを続ける車もあるにはあるが、全体としては前のモデルを上回るような売れ行きにならないのが普通で、むしろ完全な失敗モデルになってしまうことのほうが多い。大昔のコロナがそうだったし、かつてプレリュードやシルビアなどは失敗の典型例だ。
失敗例のほうが多いくらいだというのにキープコンセプトの車が作られるのは、一つにはプラットフォームをキャリーオーバーすることによる車作りへの制約もあるが、前のモデルがヒットすればするほど、次のモデルでは冒険がしにくくなる。
コンセプトを大きく変えることで前のモデルを買ってくれたたくさんのユーザーを切り捨てることは、そう簡単にできることではない。たくさんのユーザーを切り捨てたうえでさらにたくさんの車を売ろうとしてもそう簡単にできることではないからだ。

でも、前の車を買ったユーザーが、数年後も同じコンセプトの車を求めているかといえば、必ずしもそうではない。
また前のユーザーより5歳ほど年下のユーザーが5年ほど先輩のユーザーと同じ志向をもつかといえばやはりそうではない。なので、キープコンセプトの車は、支持してくれるユーザーを見失って失敗することが多いのだ。
クラウン 新コンセプトの車を作れば必ず成功するというものではないし、むしろ失敗のリスクが大きいが、ヒットモデルのコンセプトを大きく乗り越えた車作りをしないことには、前のモデルを上回るヒットは期待できない。車作りがいろいろな制約を受ける中で、守りに入る気持ちはよくわかるが、大きく踏み出して冒険した車作りに期待したい。