Photo:篠原晃一

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

“一目ぼれ”した初マイカー

平野莉子さんは、高校3年生の冬、2つの目的があって運転免許を取った。春になったらとっとと車を買うと決めていた。

目的のひとつは通勤。埼玉県某所の自宅から、県内上尾市にある就職先企業への通勤は、どう考えても電車より車が便利。それゆえ、自分でお金が稼げる立場になったらソッコーで買おうと思っていたのだ。

だが就職後すぐにその企業の本社は、さいたま新都心へと移転。その結果「車通勤は不可。電車で通ってください」ということになってしまった。

すでに買ってあった車は新車のダイハツ ミラ ココア。車好きの父とディーラーを回り、ひと目ぼれして購入した軽自動車だ。

「とにかくかわいい車に乗りたいと思ってたので、最初はスズキでハスラーとラパンを見てみました。でもハスラーは、画像で見ていたほどかわいくないなぁと思ったんです。特に内装が……」

わからないではない。ハスラーのデザインは「かわいい」というよりは「ポップ」といった感じゆえ、18歳女子には刺さらなかったのだろう。

「次に見たラパンは、かわいいはかわいいんですけど、ちょっと違うというか……」

これについては本人以外はわからないというか、男である筆者には正直よくわからない。だがとにかく、「何かが違う」と強く感じたのだそうだ。

「でも次に行ったダイハツで見たココちゃんは、ひと目で『これっ!』と思ったんです」

ココちゃんというのは、平野莉子さんがココアベージュマイカメタリックの17年式ミラ ココア Xに付けた愛称。ここから、平野さんと「ココちゃん」の素敵な関係が始まった。

ミラ ココアの最上級グレードにあたる「プラスX」を買う予算がないわけではなかった。でも、あえて中間グレードの「X」を選んだ。理由は「Xの方が断然かわいいから」だ。

「いちばん上のグレードだと、前の方の……なんて言うんですか? フロントグリル? あれが自動的にシルバーになっちゃうんですよ。なんかそれってぜんぜんココちゃんに合ってない気がして。でも真ん中のグレード(X)なら、そこが白なんです。『こっちの方がぜんぜんかわいい!』と思いましたね」

莉子さんいわく「ココちゃんには似合わない」というルーフレールが、中間グレードのXには装着されないというのもひとつのポイントだった。そしてボディカラーは熟考に熟考を重ねた結果、2トーンコレクションの「ココアベージュマイカメタリック+パールホワイト」に決定した。

▲この絶妙なベージュに2トーンというカラーリングが特にお気に入りポイント ▲この絶妙なベージュに2トーンというカラーリングが特にお気に入りポイント

だが、もろもろのグレードやカラー、装備などが決定したのはいいが、肝心の「自分の車を買う目的」のひとつが消滅していた。つまり、会社への車通勤が事情によりできなくなっていた。

だが莉子さんには、免許を取って自分の車を買うもうひとつの目的があった。

それは、若者が発音するところの「フェス」。

おじさん世代になじみ深い呼び方をするなら「ロックフェスティバル」を全国各地に観に行くために、どうしても「自分の車」が欲しかったのだ。

平野莉子さんが音楽にのめり込み始めたのは中学生の頃。ロック好きなお父さんの影響で「ASIAN KUNG-FU GENERATION」を聴き始め、そして中学2年生のときに初めて生で観た「ONE OK ROCK」の大ファンになった。

以降、メジャーなONE OK ROCKだけでなく様々なインディーズ系ロックバンドの音源を聴きまくり、そして高校生の頃は電車で各地のフェスやライブハウスに駆けつけた。

「電車は電車でいいんですけど、やっぱりフェスって交通の便が悪いところで開催される場合が多いじゃないですか? だから『車があったらなあ……』って、ずっと思ってたんです」

▲車内に常備してあるクマのぬいぐるみ。1人で運転する際は助手席に乗せる ▲車内に常備してあるクマのぬいぐるみ。1人で運転する際は助手席に乗せる

「通勤のための車」ではあったのだが、同時に「フェスのための車」でもあったのだ。いやもしかしたら、後者の方がむしろ主たる目的だったのかもしれない。

そのあたりはご本人以外にはわからないが、とにかくココちゃんは、莉子さんを乗せて各地のフェスへと飛んだ。

茨城県ひたちなか市で行われる『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』。山梨県山中湖村の『Sweet Love Shower』。川崎市東扇島の『DEAD POP FESTiVAL』。そして、その他もろもろ。ターゲットとなる年齢層が若干上の『FUJI ROCK FESTIVAL』にも、そのうち参戦してみたいと思っているそうだ。

Photo:篠原晃一

「車の細かいことは正直よくわかりません。

でもココちゃんに乗っている時間は、いつだってわたしにとって“充実した時間の前段階”というか、必ずそれに続いていく時間なんです。色とかにもこだわりまくって選んだので愛着がありますし、正直サイコーにかわいいと思ってますし(笑)。

……ココちゃんのことは一生乗り続けたいほど好きですね。メカとかはぜんぜんわかりませんが、本当に、そう思っています」

文/伊達軍曹、写真/篠原晃一

ダイハツ ミラココア

平野莉子さんのマイカーレビュー

ダイハツ ミラココア(初代)

●購入金額/約180万円
●年間走行距離/約1万㎞
●購入する際に比較した車/スズキ ハスラー、スズキ アルトラパン
●マイカーの好きなところ/カラー、まん丸の目(ライト)、カールおじさんみたいな髭
●マイカーの愛すべきダメなところ/特にないです
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/かわいい車に乗りたい人、小さいけど広い車に乗りたい人

伊達軍曹(だてぐんそう)

インタビュアー

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。