「今までのスズキの軽自動車」から走りの本質が進化

(Tester/島崎七生人 Photo/篠原晃一)

コンセプト
ワゴンR、アルトに続く「第3の柱」として開発

スズキ パレット フロントスタイル|ニューモデル試乗スズキ パレット リアスタイル|ニューモデル試乗スズキ パレット インパネ|ニューモデル試乗
ダブルのAピラー回りの印象から、論議の余地がないほど外観はタント似。一瞬、軽自動車も各社共通の掃除機の集塵袋化か!? とさえ錯覚した。が、あくまで自社のワゴンRに対し天井を上げ、床を下げ、視界を広くしたらこのパレットになった…という。

カタログデータ上、ホイールベース/全高/室内長は、それぞれタントの数値が上(+90mm/+15mm=2WD/+135mm)。が、室内幅は互角、スライドドア単独の開口も、幅は同じだが、高さはパレットのほうが25mm勝っている。パワースライドドア(Gを除く全車の左側、T、TSは両側)の採用、坂道などで有効なストッパー、挟み込み防止機構が備わるのも、安心・安全で有効な機能として注目しておきたい。

室内&荷室空間
割り切った軽自動車のイメージを変える高い質感

スズキ パレット フロントシート|ニューモデル試乗スズキ パレット リアシート|ニューモデル試乗スズキ パレット 助手席シートアンダーボックス|ニューモデル試乗
スズキの軽として、インパネをはじめ、室内の作りと質感が画期的に向上した。キーレス用の携帯リモコンも、まるでフィアット車のそれのような納得のいくデザイン。助手席座面下の通称“バケツ”は、初代ワゴンR以来の便利な物入れとしてパレットにも装備。助手席側のアッパーボックスは軽初となる保冷機能付き。全体に実用的な機能・装備が無駄なく備わる。

前後シートの着座感も、軽だから…の割り切りから脱した感じ。長時間のドライブでも大丈夫そうだ。乗員の体格に合わせられる、後席の165mmのスライド機構などのシートアレンジは特に有効だ。

注目のスライドドアは、大人でも無理のない姿勢のまま乗り降りができる大きさ。しかも両側付きというのはやはり便利だ。

ドライブフィール
エンジン音などをうまく抑え込み、静粛性が向上

スズキ パレット 走り|ニューモデル試乗スズキ パレット パワースライドドア|ニューモデル試乗スズキ パレット ラゲージ|ニューモデル試乗
試乗したのは、ノンターボ(54ps/6.4kg-m)の「X」と、インタークーラー付きターボ(60ps/8.5kg-m)の「TS」の2台。両グレードとも165/55R14タイヤを装着し、サスペンションの設定などは基本的に共通だという。

走りは基本的に“快適”という言葉が似合う。ターボ車でも乗り心地が良く、街中ではフラットな乗り味を実現している。動力性能は54ps/6.4kg-mのノンターボでも大きな不満がない。一方のターボも、60ps/8.5kg-mと、パワーより日常的な実用性を重視した設定。さらに走行中のエンジン音、ロードノイズなど不快な騒音がかなり抑え込まれているのが印象的だった。従来の、割り切ったスズキの軽のイメージを一新させ走りの本質もきちんと追求している。

こんな人にオススメ

パレットには、タントにはないカーテンエアバッグが用意され、しかも標準装備するグレード(TS)を設定する。今のところタントカスタムに相当するバリエーションがないから、標準のタントが競合車だろうが、どちらにするかは、現状ではユーザー個々の好み、ソフトウェア(いいセールスマンを知っているなど)次第といったところ。
主要諸元のグレード TS
駆動方式 2WD
トランスミッション 4AT
全長×全幅×全高(mm) 3395×1475×1735
ホイールベース(mm) 2400
車両重量(kg) 940
乗車定員(人) 4
エンジン種類 直3DOHCターボ
総排気量(cc) 658
最高出力[kW(ps)rpm] 44kW(60ps)/6000rpm
最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 83N・m(8.5kg-m)/3000rpm
10・15モード燃費(km/L) 18.6
ガソリン種類/容量(L) 無鉛レギュラー/30
車両本体価格 TS(2WD) 157万5000円
X(2WD) 123万9000円