BMW i8|海外試乗

汗くさい走りなんて古いよと言う人がスマートに乗れば、そりゃ文句無しにカッコ良いでしょう。けれど走りはイキきっていないし、かといってゴルフバッグも載りそうにないなどGTとしても物足りない。環境性能と走り、もっと我儘に二兎を追ってほしかった。

未来のスポーツカーの姿はここにある?

一撃で未来を感じさせる自動車デザイン

こんな風に一撃で未来を感じさせる自動車デザインができたなんて…と、まず見た目でうならされるのがBMW i8だ。

そのフォルムは街中で良い意味で浮きまくっていて、それだけで買う価値アリと思わせる。インテリアにしても、ガルウイングドアを開けて太いサイドシルをまたぎ、シートに体を滑り込ませれば、未体験のハイテクマシンを操るぞという気分が一気に盛り上がる。こちらも良い意味で、BMWらしからぬという感じだ。

エココンシャスなスポーツはスマートに速い

では走りはどうだろうか。リアに積まれた最高出力231psの直列3気筒1.5Lターボエンジンで後輪を、同131psの電気モーターで前輪を駆動するプラグインハイブリッドのi8は、アルミとカーボンを組み合わせた車体設計により車重を1.5t以下に抑えている。よって街中をEVモードで走らせているときでも静けさ、力強さに加えて軽さと高い剛性感が、洗練された走行感覚を味わわせてくれる。

街中を抜けたところでSPORTモードに入れると、背後のエンジンが3気筒らしからぬ軽快なサウンドを奏で始める。362psのシステム出力がもたらす動力性能は0~100km/hを4.5秒と十分な数値だ。

けれども6速ATのせいもあってかアクセル操作と実際の加速の間のダイレクト感は薄いし、細身のエコタイヤはすぐ鳴き出しグリップのピークも攻めた時の奥行きは今イチ。スマートに速いけれどアドレナリンはあまり湧いて来ない。

開発陣は「そういう車じゃない」と言うのだが、じゃあi8ってどこで何する車なのか。エココンシャスなアピールこそ大事なファッション的要素が強い存在と捉えるなら完成度は非常に高いとは思う。けれど、肉食の“M”に対して、じゃあ“i”は有機野菜の旨さだみたいに、新しいけれど奥深いスポーツカー像なんてものを期待すると若干消化不良。ホント、カッコ良いんだけどね。

上方に跳ね上がるように開くシザー・ドアを採用している。BMWの象徴「キドニーグリル」はカバーパネル化されている

上方に跳ね上がるように開くシザー・ドアを採用している。BMWの象徴「キドニーグリル」はカバーパネル化されている

テールライト上部に浮いたように見えるデザインのフローティング・ルーフ・ピラーが未来的であり特徴的。このスタイルによりCD値は0.26となる

テールライト上部に浮いたように見えるデザインのフローティング・ルーフ・ピラーが未来的であり特徴的。このスタイルによりCD値は0.26となる

シートなどに標準と比べて20%も軽量になるレザーを採用。インテリアは3種類(カリスト/カルポ/ヘイロ)が用意されている

シートなどに標準と比べて20%も軽量になるレザーを採用。インテリアは3種類(カリスト/カルポ/ヘイロ)が用意されている

SPECIFICATIONS

グレード i8
駆動方式 4WD
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4689×1942×1293
ホイールベース(mm) 2800
車両重量(kg) 1490
乗車定員(人) 4
エンジン種類 直3DOHCターボ+モーター
総排気量(cc) 1499
最高出力[ps] 362
最大トルク[N・m] 570
車両本体価格(万円) 1917
Tester/島下泰久 Photo/ビー・エム・ダブリュー