3シリーズ(E90)▲スポーティな走りを、よく回るエンジンや俊敏な足回りを含めた車全体で表現するBMW。それゆえ「駆けぬける歓び」を標榜する。100万円で狙える旧々型3シリーズセダンもまた「駆けぬける歓び」を備えた1台だ

100万円あればドイツ製プレミアムセダンが十分狙える

予算100万円で車を購入するとなると、まっ先に思いつくのは軽自動車か国産コンパクトカーという人も多いだろう。

しかし、中古車の世界は奥深い。100万円もあればいろんな車が選べて楽しいのだ。

その中でも、今回はドイツ御三家のプレミアムスポーツセダン3台を紹介しよう。

いずれも“プレミアム”をうたうだけあり、とても100万円で買ったとは思えないインテリアの質感や、高級感を感じるような動力性能を備えている。

また、全長は約4.5~4.7mと、トヨタ クラウンやマークXより短いが、全幅は1.7m超あるので、フォルムがドッシリとして、プレミアムセダンらしい堂々とした感じも備えている。

それゆえ新車時は500万円前後した「高級車」だったが、年式次第では十分100万円でも狙えるようになってきているのだ。

では、具体的にどんなモデルが買えるのか? 以下詳しく見ていこう。
 

 

前後50:50の重量配分にこだわったFRスポーツセダン
BMW 3シリーズ(E90型)

3シリーズ(E90型)▲パンクしても一定の距離を走ることができるランフラットタイヤが全車に標準装備。また、同社のモータースポーツ部門を担うM社製のスポーツサスペンションや専用エアロパーツ、専用アルミホイールなどを備えるMスポーツパッケージも用意されていた

予算100万円以内でオススメのBMWのセダンは、2005年4月にデビューした旧々型となる3シリーズ(E90型)だ。

伝統の前後50:50の重量配分にこだわったFRレイアウトを備え、エンジン屋と異名をもつBMWの名機が搭載されていた。

フロントにエンジンを置き、後輪を駆動させるFRレイアウトは高級セダンのレイアウトとしては定番。軽自動車やコンパクトカーに多いFF(フロントにエンジンを置き前輪を駆動)レイアウトと比べて、エンジンからの振動がステアリングにほとんど伝わらず、スッキリとしたステアリングフィーリングを得られるのが高級車に採用される理由の1つ。

加えて、機器類が前に片寄りがちなFFと比べて、前後の重量バランスが取りやすく、そのためコーナリング性能が高いのも特徴。

特にBMWのFRセダンは前後50:50の理想的な重量配分にこだわっていることで有名で、BMWがスポーティだといわれる由縁の1つだ。この3シリーズも当然約50:50にレイアウトされている。

デビュー時のラインナップは2Lエンジン搭載の320i系、2.5Lの325i系、3Lの330i系。全車に6速ATが備わる他、320i系は6速MTも選べた。
 

3シリーズ(E90型)▲リアウインドウには電動の、リアサイドウインドウには手動のシェードが用意されていた。速度を先行車に合わせて追従できるACC機能は、デビュー時は330i系に標準、325i系にオプションで用意された。トランク容量は5名乗車時で460L
3シリーズ(E90型)▲カーナビやオーディオなどを統合制御するiDriveは、デビュー時は330i系に標準で他はオプションで設定されていた。また、前席電動シートは全車標準装備され、本革シートはオプションで用意された

その後、330i系の4WD車となる330xi系と、325i系よりエンジンパワーが抑えられた323i系が追加され(2005年10月)、さらに3Lツインターボを搭載する335i系(2006年10月)、325i系の4WD車となる325xi系(2007年11月)が相次いで加えられた。

2008年11月のマイナーチェンジではラインアップが320i系と325i系、335i系の3タイプのみに整理され、唯一の4WD車である325xiは名称が325xDriveに改められた。

同時に全車に最新型のカーナビゲーションが標準装備された他、カーナビやオーディオなどを制御するiDriveが新型に切り替えられた。
 

3シリーズ(E90型)▲ぱっと見は前期型とあまり見た目は変わっていないが、マイナーチェンジでフロントグリルがワイドに、LEDターンライトがヘッドライト内に備わるようになった。また日本市場が考慮され、専用ドアハンドルに変わったことで全幅が従来の1815mmから1800mmに

中古車状況

原稿執筆時点では約280台の中古車が掲載されていて、平均価格は約60万円。価格帯は約30万~240万円で、平均走行距離は約6万5000kmだ。

その中で総額100万円以内と手頃で、しかも台数が多くて狙いやすいのは2Lエンジン搭載の320i系だ。

この価格帯の約7割を占める約150台が該当し、走行距離10万km以下でも支払総額50万円以下から狙え、走行距離5万km以下に絞っても後期型も含む約40台が見つかる。

▼検索条件

BMW 3シリーズ(E90型)×総額100万円以内×320i系グレード×全国

カーナビやiDriveなどが標準装備ではなかったベーシックな仕様の320iだが、フルオートエアコンなど必要にして十分な装備が備わっている。

もしもスポーティなBMWのイメージを求めるなら、M社製の足回りやエアロパーツを備えた320i Mスポーツ系を狙うといい。この価格帯でも40台以上見つかった。

▼検索条件

BMW 3シリーズ(E90型)×総額100万円以内×320i Mスポーツ系グレード×全国

あるいは、320iのみに設定された、このクラス唯一の6速MT車を狙うのもオススメだ。原稿執筆時点では、この価格帯で8台、全価格帯でも25台と台数は少ないが、FRセダンを6速MTで駆るなんて、今後ますます貴重な経験になるだけに、コンディションなどを確認しながら、じっくりお気に入りを探してみてはどうだろう。
 

▼検索条件

BMW 3シリーズ(E90型)×総額100万円以内×全国

▼検索条件

BMW 3シリーズ(E90型)×全国
 

高級車としての乗り心地と、スポーティな走りの両立が図られた
メルセデス・ベンツ Cクラス(3代目)

Cクラス(3代目)▲エクステリアデザインは、スポーティな「アバンギャルド」(写真)と、ラグジュアリーさを強調した「エレガンス」とで異なる。アバンギャルドは、同社のスポーツモデルの頂点であるSLと同じく、フロントグリル中央にスリーポインテッドスターが装着されていた

メルセデス・ベンツからは2007年6月から販売されていた旧々型となるCクラス(3代目)をオススメしたい。

上記3シリーズ同様、こちらもFRレイアウトが採用されていて、前後重量配分は52:48。同社らしい高級車としての乗り心地と、スポーティな走りの両立が図られた。

このCクラスの特徴は、まず2系統のエクステリアデザインが設定されていたことにある。

1つはスリーポインテッドスターをフロントグリル中央に置く「アバンギャルド」。もう1つは、ボンネット先端にスリーポインテッドスターが備わる、同社の伝統的なセダンスタイルの「エレガンス」だ。

また、走行状況や車速に応じて特性を変えるサスペンションとステアリングによって「アジリティ(俊敏性)」と「コンフォート(快適性)」を両立させる「アジリティコントロール」が採用されたのも、この世代の特徴の1つだ。

デビュー時には1.8Lスーパーチャージャー付き(C200系)と、2.5L(C250系)、3L(C300系)の3種類のエンジンが用意された。トランスミッションはC200系が5速AT、C250系とC300系が7速ATとなる。
 

Cクラス(3代目)▲全幅は5ナンバーの1700mmを超えるが、それでも1770mmに抑えられている。トランク容量は5名乗車時で440L。写真は「エレガンス」
Cクラス(3代目)▲カーナビやオーディオなどを統合制御するコマンドシステムは全車標準装備。C300系は前席シートヒーター付き本革シートが標準装備された。また、一部グレードにはキーを抜くとドライバーが乗降しやすいようステアリングが上方へ移動するイージーエントリー機能が標準で備わる

その後、C250系のエンジンは1.8Lターボに(2009年8月)変更された。このエンジンは排気量こそ小さくなったものの、加速力に影響する最大トルクが従来の2.5Lより高い310N・mを発揮する。また、C200系も1.8Lのスーパーチャージャーからターボモデルに変更された(2010年2月)。いずれも燃費は従来型より向上している。

2011年5月にはマイナーチェンジが行われ、計2000ヵ所以上も変更された。内外装デザインは写真のとおり大きく変更された他、C300系に代わり、新たに3.5Lエンジンを搭載するC350系が加えられた。同時に全車に7速ATが備わるようになった。

モデル末期の2013年7月には衝突被害軽減ブレーキ機能や、先行車が停止すると自車も停止する渋滞追従機能付ACCなどを含む、レーダーセーフティパッケージが全車に標準装備された。

その1年後の2014年7月にフルモデルチェンジが行われ、旧々型Cクラスの販売は終了。原稿執筆時点で約210台が掲載されていて、平均価格は約96万円。価格帯は約40万~220万円で、平均走行距離は約5万kmだ。
 

Cクラス(3代目)▲マイナーチェンジでハイ/ロービーム自動切り替え機能が一部グレードを除き全車に標準装備に。また、縦列駐車が可能か検知&ガイドしてくれるパークトロニック機能がオプションで用意された
Cクラス(3代目)▲インテリアデザインもマイナーチェンジでこのように大きく変更された。従来から標準装備されているコマンドシステムは新世代に切り替えられ、オーディオ機能はBluetoothやUSBメモリー、SDカード、iPodにも対応するようになった

中古車状況

原稿執筆時点では約210台の中古車が掲載されていて、平均価格は約98万円。価格帯は約60万~210万円で、平均走行距離は約5万kmだ。

支払総額100万円で探すと約70台が見つかり、そのほとんどが1.8Lエンジン搭載車だ。中でも台数が多くて選びやすくオススメなのが、1.8Lエンジン+スーパーチャージャーを搭載したC200 コンプレッサーで、この価格帯の5割近くを占める。

C200 コンプレッサーは、デビュー時の2007年6月から2010年2月のC200 CGIブルーエフィシェンシー(こちらは1.8L+ターボ)に変更されるまで販売されていたモデル。

エントリーグレードとはいえ、純正カーナビに加え、カーナビやオーディオを統合制御するコマンドシステムが標準装備されているなど、装備は充実している。

▼検索条件

メルセデス・ベンツ Cクラス(3代目)×総額100万円以内×C200 CGI ブルーエフィシェンシー/ブルーエフィシェンシー系×全国

中でもスポーティな外観の「アバンギャルド」がこの価格帯で3割以上を占める。「エレガント」と異なり、シートはファブリックではなく人工皮革とのツインシートが採用され、コーナリング時に進行方向を照らすアクティブライトシステムなどが備わる魅力的なグレードだ。

なお、この価格帯では圧倒的に2011年5月のマイナーチェンジ前、つまり前期型が多いが、上記のとおり大幅な改良が加えられた後期型も台数は少ないが狙える。

そのほとんどがC200 ブルーエフィシェンシー アバンギャルドで、前期型が5速ATだったのに対し7速ATが組み合わされ、コマンドシステムも新世代になっていると魅力は多い。予算はそのままで根気強く探すか、少し予算を上げて狙ってみてはどうだろう。
 

▼検索条件

メルセデス・ベンツ Cクラス(3代目)×総額100万円以内×全国

▼検索条件

メルセデス・ベンツ Cクラス(3代目)×全国
 

速く走るための4WDと、燃費重視のFFの2タイプが用意されていた
アウディ A4(4代目)

アウディ A4(旧型)▲上記2台のライバルに対し、全長が約0.2m長い分、ホイールベース(前輪と後輪の距離)も長く、直進安定性に有利。2008年11月から各グレードに専用エンブレムやエアロパーツ、サスペンション、スポーツシートなどが備わるスポーティな「Sライン」が設定されている

アウディからは2008年3月から販売されていた旧型・4代目 A4を取り上げたい。

上記2台がFRレイアウトを採用するのに対して、こちらはFF(フロントにエンジンを置き前輪を駆動)レイアウトだが、FRよりも室内を広く取りやすいのがメリットだ。

また、そもそもA4は上記2台よりも全長が長いため、このクラスの車としてはかなり広い室内空間を備えている。

さらに、主に“速く走るため”の4WDである、同社伝統の「クワトロ」も用意されていたのが特徴だ。

内外装の質感の高さに定評のあるアウディだが、同社の主力車種であるA4も当然ハイクオリティ。そのあたりは実車でぜひ確認してみてほしい。

デビュー時のラインナップは、1.8Lターボを搭載するFF車(1.8 TFSI系)と、3.2Lエンジンを搭載する4WD(3.2 FSI クワトロ系)の2グレード。トランスミッションは、1.8 TFSI系がCVT、3.2 FSI クワトロ系は6速ATが採用された。
 

アウディ A4(旧型)▲エンジンやトランスミッション、サスペンションなどの特性を変えられる「アウディドライブセレクト」や、駐車時などに少ないステアリング操作で大きく曲がることができる可変ステアリングギアはオプションで用意されていた。2009年8月からLEDリアコンビネーションランプが採用された
A4(旧型)▲カーナビは全車に標準装備。また、カーナビやオーディオなどの操作を一括で行えるMMI(マルチメディアインターフェイス)も標準で備わる。2009年12月からカーナビは新世代型に変更され、Bluetooth機能も追加された。オプションでバング&オルフセンのオーディオシステムが用意されていた

その後、2009年3月に最高出力211psを発揮する2Lターボの4WD(2.0 TFSI クワトロ系)が追加されている。こちらは7速AT(デュアルクラッチ式2ペダルMT)となる。

また、2009年12月から3.2 FSI クワトロ系がラインナップを外れた。

さらに2011年4月から最高出力180psの2Lターボを搭載するFF車(2.0 TFSI)が加えられた。2.0 TFSI クワトロが7速AT(デュアルクラッチ式2ペダルMT)なのに対し、こちらはCVTとなる。同時に1.8 TFSI系がラインナップから外れて、FFの2.0 TFSI系と、4WDの2.0 TFSI クワトロ系という2モデル構成となった。

2012年4月にはマイナーチェンジが施された。2.0 TFSI系と2.0 TFSI クワトロ系というグレード構成は同じだが、どちらもアイドリングストップ機構が備えられるなど燃費の向上が図られた。
 

アウディ A4(旧型)▲マイナーチェンジではヘッドライト形状が新しくなるなど、フロントまわりを中心に変更された

中古車状況

原稿執筆時点では約150台の中古車が掲載されていて、平均価格は約110万円。価格帯は約40万~200万円で、平均走行距離は約5万6000kmだ。

支払総額100万円以下で見ると約40台が該当し、その約半数を占めるFF車の1.8 TFSI系が今回のオススメとなる。

▼検索条件

アウディ A4(4代目)×総額100万円以内×1.8 TFSI系×全国

前期型の、いわゆるエントリーグレードだが、純正カーナビが標準で備わり、カーナビやオーディオなどを統合制御するコマンドシステムもまた標準装備されているなど、装備は充実している。

また、インテリアの質感も他グレードと同じく高いので、街中をサラッと流すだけでも満足度は高いのではないだろうか。

一方で、アウディならではのクワトロ(4WD)は搭載されていないが、その分重量が軽く、また最も排気量の小さい1.8Lターボゆえ、燃費面でも有利だ。

走行距離10万km超でも5万km以下の物件でも、支払総額約70万円から狙える。つまり、コンディションやオプション装備の有無で価格が変わるということなので、実車を見て判断した方が良いだろう。
 

▼検索条件

アウディ A4(4代目)×総額100万円以内×全国

▼検索条件

アウディ A4(4代目)×全国
文/ぴえいる、写真/BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。