M・ベンツのSLK?いや2ケタ万円から狙える絶滅危惧車のクライスラー クロスファイアです
2020/01/27
アメリカンデザインとドイツのエンジニアリングの融合「クライスラー クロスファイア(絶版)」
1990年代後半、アメリカでの自動車デザインにレトロ調の復権が見受けられた。そんな1台が今回、ご紹介するクライスラー クロスファイアだ。
クロスファイアのコンセプトカーがお目見えしたのは、2001年のデトロイト・モーターショーでのことだった。そして生産型は翌年のロサンゼルス・モーターショーで登場した。そして、生産を開始したのは2003年2月からだった。
クロスファイア最大の特徴といえば、ベースがFRコンパクトオープン2シーター「M・ベンツ SLK320(初代)」だったことが挙げられる。1998年にダイムラー・ベンツ社がクライスラーと合併したことで「ダイムラー・クライスラー」が誕生。そんなパートナーシップから生まれた1台がクロスファイアであった。
M・ベンツのSLKとパーツを共用
コンセプトカーのお披露目から、生産開始までの期間が2年という短いスパンで可能だったのは、SLKがベースだったからにほかならない。クロスファイアの39%がSLKとパーツを共有していた、といわれていたが……、その割合が具体的にどの部分を示すのかは定かではない。
クロスファイアを整備するために、クライスラー・ディーラーは専用工具を追加購入しなければならなかった。と聞くと、この共有割合はボディパネルも含めたものではないか……、と筆者は思っている。
ただ、エクステリアからSLKを感じさせるところはほとんどない。
フロントノーズは長く見えるし、リアのファストバック処理はただただ美しい。特にリアウインドウ周りの処理は、初代AMC マーリンをほうふつとさせる。まるで彫刻のようなパリッとしたボディに施されたラインは、当時としては画期的だった。
また、フロントには18インチ、リアには19インチのホイールを装着していたことも、エクステリアデザインに大きな影響を及ぼしていた、と思う。残念なのは、フロントフェンダーに設けられたエア・アウトレットがダミーだったことが挙げられよう。
エンジンルームに目を向けると……、エンジンカバー以外はSLKのまんまだから面白い。エンジン、トランスミッション、電子制御デバイスといったハードウエアはすべてSLK320譲りだった。なお、オープンモデルのクロスファイア ロードスターはSLKのようなメタルルーフではなくソフトトップを採用していた。
ドアを開けると……、思わず驚いてしまうほどSLKが色濃く残っている。ステアリング、メーターパネル内の針、ドアノブ、一部のボタン、オーディオがクライスラー・オリジナルなだけで、レイアウトや基本デザインはほぼSLK。
まぁ、インテリア部品まで金型を新たに製作していたのでは開発コストが莫大になる、と割り切らざるを得なかったのだろう。
2ケタ万円で、安価に流通中
そんなクロスファイア、原稿執筆時点でカーセンサーnetに掲載されている台数はわずか9台。そのうち1台は、屋根が開くロードスターだ。
クーペにだけ目を向けてみると最も安いもので49万9000円、最も高いもので89万8000円という販売価格が掲げられている。年式が新しければプラス要素、距離が少なければプラス要素、という雰囲気は見られるがクーペモデルは総じて安価に流通している。
個人的にはSLKには非設定だったクーペの方が、クロスファイアの個性が引き立っているように感じられる。特にリアまわりのデザインは、今見ても斬新だしカッコいい。そして、アメ車らしい外観にM・ベンツのハードウエアという組み合わせ、面白い自動車史の一ページだと思う。
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▼検索条件
クライスラー クロスファイア (2003年12月~2008年4月生産モデル)×全国自動車ライター
古賀貴司(自動車王国)
自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。
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