ロータス

感性を震わす多くのスーパーカーを作る会社も、もちろん山あり谷ありのドラマチックな道を歩んできた。買収、経営者交代、資金不足、リコール問題。そして、現在も絶え間なく状況は変わり続けている。まさに、波乱万丈なスーパーカーメーカーを自動車ライター古賀貴司氏が分析。

今回は、数十年にわたってライトウェイトスポーツカーの名門であり続け、突如EVハイパーカーを発表し自動車業界を震撼させた「ロータス」について解説する。
 

EV第1号は、明らかにブッ飛んだ性能のハイパーカー

先日、ロータスのラインナップ大幅見直しが発表されエリーゼ、エキシージ、エヴォーラが2021年で生産終了することが明らかになった。そして、7月にロータスとして最後の内燃式エンジンを搭載した、エミーラが発表された。また、アルピーヌ(ルノー・グループ)とのEVにおける技術提携も発表されたばかりで、これからのロータスには何かと期待が集まっている。

そして、今年半ばから「エヴァイヤ」という130台限定のEVスーパーカーの生産が始まる。ウィリアムズ・アドバンスト・エンジニアリングと共同開発した70kWhのバッテリーパックにインテグラル・パワートレイン製のモーターを四輪に配した、合計最高出力2000ps/最大トルクは1700N・mという“化け物”だ。ちなみに0-100km/h加速は3秒以下、という控えめな発表がなされているが、仕上がりはもっと速いのではないだろうか?
 

ロータス エヴァイア▲もし実現すれば量産車で最もハイパワーな車となるロータス エヴァイア。最高時速は320km/hを誇るという。ちなみにロータス エヴァイアはオール英国製だ
ロータス エヴァイア▲リアビューは戦闘機のアフターバーナーをイメージさせている。ドアパネルからリアまで突き抜けたエアベント、バンパー中央部まで食い込むリアディフューザーなどは、エンジンのないEVだからこそのデザインだ。

もとい。

そんなロータスでの直近のロングセラーといえば、エリーゼだろう。かつてロータスの大株主であったイタリア人ビジネスマン、ロマーノ・アルティオーリ(一時期はブガッティの大株主でもあった)の孫娘の名前「エリーザ」から、英語風の響きにアレンジして命名されたモデルだ。

アルミ合金製バスタブフレームと軽量なFRP製のボディパネルで構成されていて、とにかく軽量であることに重きが置かれたスポーツカー作りにファンは多い。1995年にフランクフルトモーターショーでデビューし、翌年から販売を開始。

そんなエリーゼは、現在シリーズIII(フェイズIIIとも呼ばれる)に進化しながら、現在も販売は続けられているが間もなく生産を終える。もう買えなくなるという残念なニュースの傍ら、マット・ウィンドル社長がオートモーティブ・ニュース・ヨーロッパでのインタビューで発言した内容が世界中を駆け巡った。
 

ロータス エリーゼ&エキシージ▲ロータスの主力モデルであったエキシージ(赤)やエリーゼ(青)は2021年をもって生産が終了する。両車とも軽量なボディに3.5L V6エンジンを搭載、スパルタンな走りを楽しめマニアからの人気は高かった

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ロータス エキシージ × 全国

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マット・ウィンドル▲2021年4月からロータスを仕切っているマット・ウィンドル氏(マネージングディレクター)。1998年にロータスへ入社、その後テスラやボルボなどで経験を積み、2017年からエンジニアリング部門のリーダーとしてロータスと関わっていた

なんでも、ロータスとしてはエリーゼの生産に必要なツールを一式売却する用意がある、というのだ。オートモーティブ・ニュース・ヨーロッパは真っ先にケーターハムが候補であるか聞いていたが、つい先日、日本のVTホールディングス(奇遇にも日本におけるロータスの正規輸入代理店も、同社傘下)が買収したばかりで、それどころではないだろう、とも答えていた。

そもそも、1973年にロータス7のツール一式を購入して現在も同車を生産しているケーターハムだけあって、世間の期待は高かったようだ。その他、一度はロータス社の株式を保有したこともあり、現在もエンジンの供給を行うトヨタによって生産継続を希望する声も聞かれはするが、実現可能性は低いと思われる。

世界的なトレンドとなりつつあるEVシフトの影響をどのくらい受けるのかは未知数だが、エリーゼのサーキットマシンとしての需要は高止まりするだろう。そして、パワートレインをEV化する可能性だってあるだろう。

最近はクラウドファンディングでお金を集められる時代。ロータスが生産を止めたとしても、エリーゼが存続するチャンスは残っている、と思いたい。
 

ロータス▲ロータスは現在エヴァイア用を含む4種のプラットフォームを開発中だ。今までロータスの積み上げてきたライトウェイトの技術を応用し、アルミニウムで作られている。中には、車格の自由度が高いプレミアムアーキテクチャもあり、ロータス初のSUV登場などが期待されている
ロータス エミーラ▲7月7日、ロータスは同社最後のミッドシップエンジン車として、エミーラを発表した。デザインはエヴァイアを踏襲しており、スポーツカーアーキテクチャを採用している。エンジンは3.5L V6の他に、ロータスで初めて採用する、AMG製2L直4ターボエンジンもラインナップされている
文/古賀貴司(自動車王国)、写真/Lotus Cars