テスラ モデル3


モデルSをはじめ、ユニークなEVを販売している自動車界のApple的存在のテスラ。新興メーカーならではの型破りな経営方法やスタイルは、他の自動車メーカーにはない大きな特徴だ。そんなテスラの「隠し要素」を紹介し解説したい。
 

テスラの広告塔はSNSとイーロン・マスク

テスラは、基本的に宣伝広告をしない、広報車の貸し出しをしない、という独自のマーケティング手法をとる。アメリカではアフィリエイトシステムを導入して、購買顧客の複数紹介でテスラ車がもらえる仕組みまで用意されている。自動車メーカーとしては、かなり斬新な手法だ。

そして、宣伝広告において顕著なのは、消費者が「面白い」と思ったネタをインターネット上に拡散させる、バズ・マーケティングに力を入れているように見受けられる。中でも印象に残っているのは、2018年にスペースX(テスラ社と同じCEO)が打ち上げたロケットから、「スターマン」と名付けられた人形を載せたテスラ ロードスターが宇宙に放たれたことだろう。
 

テスラ 初代ロードスター▲打ち上げられた初代テスラ ロードスター。今もオーディオ機能が作動しているかは不明だが、デヴィッド・ボウイの「Life on Mars?」を再生しながら太陽の周りを公転しているという
テスラ 新型ロードスター▲2017年には新型のロードスターを発表。ルーフ上部が取外し可能なタルガトップ形状を採用し、0-100km/h加速が1.9秒というEVの中でもトップクラスの性能をもつという。また、後部座席の代わりにスペースXでのロケット技術を応用した噴射装置を搭載する、スペースXパッケージが用意される

テスラ社を率いるイーロン・マスクCEOのTwitterも、何かと話題になりやすい。昨年は、「1株420ドルでテスラの株式を買い付けて非公開化する」と、何の前触れもなくTwitterで呟いてSEC(米国証券取引委員会)から罰金を命じられたほどバズらせる。一見、破天荒にも見えるパフォーマンスの数々だが、一般消費者を良い意味で刺激しているのは事実。

バズらせるための施策であろうものは、実はテスラ車にも組み込まれている。ソフトウエアのアップデートとともに"イースターエッグ"(イースターに卵を“隠す”ことが由来)として、面白いギミックが配信されている。言うなれば、テレビゲームで“裏技”があったかのように、隠しコマンドがいろいろあるようだ(筆者が日本で試したわけではないので、あくまでもアメリカでの話として)。しかも、一部は公言されたものではなく、見つけたユーザーによる拡散力が思いのほか強力。

ここでは、そんな"イースターエッグ"をいくつか紹介しよう。

その1.ホーンの音やウインカー作動音を“オナラの音”にできる。

その2.センターコンソールのナビゲーション画面で、火星(マスク氏は火星移住計画をうたっている)の地図と自車を宇宙船に変更できる。

その3.クルーズコントロール走行時、クルーズコントロールのレバーを4回手前に引くと、メーターパネル内に表示される道路が「虹色」になる。

その4.スーパーチャージャー(充電)開始時、充電開始ボタンを10回押すと、チャージポートのLED部分が様々な色に点滅。

その5.ボイスコマンドで「ホウ、ホウ、ホウ」と音声入力すると、デジタルメーター内の自車をサンタクロースが乗るソリに変更させ、クリスマス・ソングとしてチャック・ベリーの「ラン・ルドルフ・ラン」が流れる。

その6.「ロマンスモード」にするとディスプレーにたき火のアニメーションが表示され、スピーカーからはまきが燃える音が流れ、アル・グリーンのラブソング「レッツ・ステイ・トゥギャザー」を流すこともできる。

その7.ボイスコマンドで「Keep Summer Safe」と入力すると、セントリーモードと呼ばれる防犯モードが開始。

その8.モデル XのインパネにあるタッチパネルのTeslaアイコンを5秒間押し、ポップアップした画面に「HOLIDAY」と入力し、車外に出てドアをロックすると、音楽とともにヘッドライトが点滅したりドアが開閉したりする“Model Xmas Show”が始まる。

YouTubeで「Tesla hidden function」(テスラ 隠された 機能)と検索すると、ユーザーがアップロードした様々な面白動画が出てくる。

テスラ モデル3▲ほとんどの"イースターエッグ"の発動は、この特徴的なインストゥルメントパネルで行う。もちろん、車両制御システムとは分離されているため、万が一フリーズした際も正常に走行することができる
テスラ モデル3▲遊び心が満載で434万円という価格のモデル3は手頃とも思える。最安モデルでも0-100km/m加速は5.6秒と俊足だ。ラゲージはエンジンのないフロントボンネット下にも設置されているため、容量の合計は542Lを誇る(比較として同クラスのBMW 3シリーズは480L、アウディ A4セダンは460L)
テスラ モデルX▲斬新なファルコンドアを搭載したモデルX。全車幅は2m超えだが、乗降性は快適だ。上記"その8"で紹介した「Model Xmas Show」ではこのドアが上下にパタパタと稼働する

そんなテスラだが、今話題になっているのが「Open/Close Butthole」というボイスコマンド。日本語に訳すと「ケツの穴を開けろ/閉じろ」となり、少々下品なのだがこのコマンドで充電ポートの蓋を開閉することができることが明らかに! ただ、モデルによっては同じコマンドでもグラブボックスが開く場合があるようだ。

個人的に気に入っているのは、「My balls are cold」というコマンド。日本語に直訳すると「私の玉が冷たい」で……、この場合の「玉」は、英語では男性器の一部を意味し、 なんとシートヒーターがONになる!

実にくだらないが、こんな“ユーモア”でさえテスラファンの心を強烈につかむようだ。
 

テスラ モデルS▲次期モデルSでは、そのユーモアさがさらにパワーアップしている。未来的な形状のステアリングや、後席ではゲームで遊べる機能も採用しているという

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文/古賀貴司(自動車王国)、写真/テスラ、スペースX