警察車両でお馴染み! 絶滅危惧車のキザシは、スズキの歴史に残るフラッグシップモデルだった!
2019/05/20
実に1/4が警察車両
スズキ キザシと聞いてパッと車のカタチが思い浮かぶ方は、かなりの車好きだと推察される。
日本におけるキザシの累計販売台数は3379台、そのうち900台あまりは警察車両として納入されたという珍しい車だ。
なんと実に4台に1台はパトカーなのだ!
よく「突如発売が決まった」と評されることが多いが、2007年フランクフルト・モーターショーでコンセプト・キザシが、同年の東京モーターショーでコンセプト・キザシ2が、そして2008年ニューヨーク・モーターショーでコンセプト・キザシ3が披露されていた。
市販されたキザシは、コンセプト・3が最も近い姿であった。
2009年7月、アメリカでの発売を皮切りに、日本、オーストラリア、ヨーロッパ、中東などで販売が開始された。
スズキとしては初のDセグメントのアッパーミドルクラスセダン投入であり、フラッグシップモデルであった。
エクステリアは「ダイナミック・アスリート・イン・モーション」というデザインコンセプトがうたわれており実際、アスリートの筋肉美を表しているようだった。
特にリアから眺めるキザシは……お世辞抜きにカッコいい。
2.4L 直4エンジンは、同時期のエスクードに搭載されていたものをベースに22psパワーアップ。それでいてエスクードよりも60kgほど軽いのだから、十分に速かった。
ただ、トランスミッションにはCVTを採用しており、エンジンの回転音の速度に“ズレ”を感じさせたことは否めない。まぁ、こればかりはドライバーの慣れもあったのだろう。
なお、駆動方式はFFとパートタイム4WDを選択することができた。
サスペンションはフロントにマクファーソン・ストラット、リアをマルチリンク式としていた。
海外マーケットを意識した、安直に言えば“硬め”でしっかりとロードホールディングに留意したセッティングに仕上がっていた。
これはスズキがフラッグシップセダンの個性としてこだわった部分だったのだろう。
インテリアはフラッグシップをうたうだけあってレザーシートにはダブルスティッチを、メッキ部分にはサテン加工が施されていた。
高年式なのに絶滅寸前のモデル
日本では販売台数を見込めないことを事前に予測していたのか、受注生産という販売形式をとっていた。
にも関わらず、ボディカラーは白、黒、シルバーの3色しか設定されていなかったのは、いささか疑問が残る。
それにしてもキザシには時合が悪すぎた……。
2009年といえば、「リーマンショック」というアメリカ発の金融不況が起こった年。しかも、キザシはアメリカをメインターゲットにしていた。
2012年にはスズキの四輪事業のアメリカ撤退が決まり、2013年12月にはキザシの生産中止計画が発表され、翌年12月には生産が終了。感心するのはスズキの“損切り”の早さかもしれない……。
そんなキザシだが、とにかく日本では売れなかった。
2009年から2015年にかけて6年間、受注期間が設けられていたのだが、前述のとおり累計販売台数は3379台。
しかも原稿執筆時点(2019年5月13日)、スズキの販売店が取り扱う認定中古車のキザシは1台も掲載されていなかった。
受注終了が2015年だから、まだまだ新しめの車なのに、カーセンサーnetでもたったの12台しか掲載されていないし、販売台数を考えるとすでに絶滅寸前といえるだろう。
スズキの歴史に残る、かつてのフラッグシップセダンに少しでも興味をもたれた方、はたまた覆面パトカー気分を味わってみたい方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!
▼検索条件
スズキ キザシ(初代)×全国自動車ライター
古賀貴司(自動車王国)
自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。
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