▲2016年にリリースされた現行インプレッサから新しいシャシーが使われており、今後も拡大展開される見通しだ ▲2016年にリリースされた現行インプレッサから新しいシャシーが使われており、今後も拡大展開される見通しだ

エンジニア離職率4%、広報部は多くはないと発言

2018年1月7日にご紹介したように、スバルはアイサイトの独自開発を事実上放棄する。これに併せて、アイサイト関係者をはじめとした、エンジニアが転職しているという。


アイサイト関連のエンジニアの間では、「エンジニア専門のキャリア転職サイトに登録するのが流行っている」(スバル事情通より)のだそうだ。最近では、休憩時間や終業後に、転職活動の情報を交換しあうのがブームになっているとのこと(同)。

自動運転の分野では、自動車業界はもとより異業種も含めて、国内外の事業者が優秀なエンジニアを求めているのは周知の事実。

アイサイト部隊のエンジニアが、転職サイトに登録したり、友人の口コミで転職活動に入ると、瞬く間に他社から声がかかって、ほどなく転職先が決まるとの話があちこちからまことしやかに聞こえてくる。

ちなみに、退職者について、スバル広報部は「昨年1年間で先進開発分野のエンジニアの離職率は、4%程度。そのうち3割が入社1年目。従来と比べても、取り立てて多い数字ではない」と話す。

ただ、広報部が先進開発分野での離職率を示したのに対し、最近の離職者の多くが、アイサイト開発部門に集中していることをつけ加えておく。

報酬のためではなく、良品を追究する職人気質

スバルのエンジニアに対する報酬額は、同業の中でも決して高いとは言えない。大手の自動車メーカーに行くと「年収が100万円以上あがる」とのウワサが口端に上がる有様だ。

しかし、間違えてほしくないのは、アイサイト部隊のエンジニアは、本来なら決して報酬では動かないということだ。「お金目当てなら、初めからスバルに就職していない」(スバルの内部事情を知る人より)との証言からもわかるように、水平対向エンジン、スポーツフィール、アイサイトのような独自技術の開発にあこがれて入社しているエンジニアが多い。

元来、報酬よりも独自技術の開発にとことん取り組みたい、エンジニア気質の人が多いと聞く。企業規模は小さくても、また報酬が相対的に低くても、大手自動車メーカーでは実現できない、独自の技術開発に打ち込める。そうしたエンジニアとしての誇りを持っている人たちが多かった。

そんな開発風土にあっての、今回のアイサイト自社開発の事実上放棄。スバルが独自性を自ら捨てる決断を経営陣や、開発部門の職制が下した結果、前述のとおり、スバルに残る意義を見失ってしまった働き盛りのエンジニアのモチベーションが落ちたことは言うまでもない。

外部から丸ごと調達の方針を見直す方向へ

スバル社内で潮流の変化が見え始めたようだ。アイサイト開発部隊の職制に就任予定のエンジニアが、周囲の反応を受けて、アセスメントでの行きすぎた点取り主義を見直して、リアルワールドで安全安心な車作りに重点を置く主旨の内容を語ったという。

吊るし製品重視から、独自開発に重きを置く姿勢に改める模様だが、ニューモデルの開発スケジュールに影響が及ぶことは避けられないだろう。

※2018年3月31日現在における予測記事です。発表を保証するものではありません

text/マガジンX編集部
photo/スバル