マリオ高野 ▲スバル車ネタを中心に多くのメディアで活躍するライターのマリオ高野氏。このたび、27年物の愛車・初代インプレッサWRX(GC8)をレストアしたとのことなので、話を聞かせてもらった

長年の傷をきれいに! 愛車復活構想

半年以上かけて、愛車の初代インプレッサWRXをレストアしました。

WRCグループAでの雄姿に憧れて、1994年2月に新車で購入。マニュファクチャラーズ部門の3連覇など、SUBARUのWRC参戦黄金期の栄光もあり、オーナーでいられることを誇りに思えると同時に、計り知れない幸福を与えてくれた車です。

1990年代のWRCと初代インプレッサWRXによって車の楽しさを満喫し、筆舌に尽くし難い喜びに浸る日々を送りました。

しかし、購入してから27年ともなれば、その間様々なことがありました。恥ずかしながら管理が悪く、過去に1年以上放置した期間が2度もあります。

2008年には油脂類および冷却水の大量漏れ修理やクラッチ交換、足回りの全面リフレッシュなどで100万円以上費やして完調となるも、2014年に新たな愛車としてインプレッサG4を増車してから乗る機会が激減。

サーキット走行時にブレーキの片利きなどの不具合が顕著となり、やがて車検が切れたまま放置状態に…。過去4年間は、時々エンジンをかける程度しか管理していませんでした。

しかし、2020年春のコロナ自粛期間中に車内の掃除をしていると、かつて抱いていた愛着がよみがえり、復活プランを構想。

まずは車検です。コロナ自粛で仕事が減ったこともあり、なるべく低予算で済ませたいと埼玉県にある馴染みの整備工場にリクエスト。約4年間も放置していたわりには、特に問題もなく車検に合格してホッと胸をなで下ろしました。

エアコンのコンプレッサーはギリギリ、そしてオルタネーターはまだ普通に生きていたものの、寿命が尽きる寸前だったはずなので、ここだけは予防整備としてリビルド品に交換。エアコンは現代の酷暑でもすぐに冷えるほどガンガン効くようになりました。

狙いどおりの低予算で完調になったと思いきや、久しぶりに走り出すと、たちまちエンジンの始動不良などの不具合が発生し、すぐに走行不能に陥ります。

そして、やはり我慢できなかったのは外装のみすぼらしさです。

27年間もの長期にわたる青空駐車に加え、過去4年間は洗車などのケアを一切していなかったので、ボディの塗装面は見るも無残な状態に。

錆びたワイパーに「スクラップ車激安回収!」のチラシが挟まれるほどアワレな惨状でした。

これを抜本的に解消するには全塗装するしかありません。ボディの塗装面の劣化は10年以上前から顕著となり、全塗装の必要性を常々認識しておりましたが、今回ようやく意を決したのです。

まるで新車! 愛車の美しさに感動!

スバル インプレッサWRX ▲こちらが今回のレストアでピカピカな姿によみがえったマリオインプレッサWRX。長い間放置していましたが、手間をかけた分、愛が深まります

全塗装を依頼したのは、仕上がりの良さに定評のある埼玉県の中古車販売店。整備工場も備えるため、エンジン始動不良などの不具合の修理も併せて依頼できて好都合でした。

エンジン始動不良の原因は、大きく分けて2つ。

燃料系統全体の劣化と、エンジン制御系のセンサー類の寿命が尽きたことでした。長期間の放置により残存燃料の劣化も著しく、燃料タンクは要交換状態だったのですが、すでに欠品ということで、脱着による内部清掃で問題を解決。

全塗装では、まず下地処理の段階でかなり難航したとのこと。リペアするべきエクボがボディ全体に無数にあり、ルーフパネルの中央には波打つような歪みもありました。

スバル インプレッサWRX ▲こちらが塗装前の愛車の屋根。傷と汚れが目立ちます

ちなみにこれは、新車で買って間もない頃、とある繁華街で駐車中に何者かによって踏まれたためにできたもの(屋根の上を人が歩いた形跡があった)。

長年にわたり、洗車などでルーフを触るたびにアンジュレーションを感じるほどの凹凸ができていました。パネルが薄いこともあり、板金作業は困難を極めたようです。

塗装前の下地処理後の段階で一度愛車の様子をチェックすると、初代インプレッサ本来の丸みを帯びたルーフのラインが蘇っており、激しく感動しました。

愛車本来のボディラインを見たのは27年ぶりのことだったのです。「そういえば、この車の屋根は本来こうだったのだ…!」と感涙にむせびます。

板金作業でさらに厄介だったのが、ドアの内部にあった大昔のパテ盛り修理跡です。

25年ほど前に自損事故で右側フェンダーとドアを大きく損傷して大修理をしたのですが、その際のパテ盛りの手法は古い時代の修理技術だったらしく、今回新たに板金塗装をするのに非常に邪魔だったとのことでした。

自分の愛車は、買ってから27年もたってるわりに傷やへこみの類いは少ない方だと思っていましたが、トンでもない。積年の古傷は板金塗装の難易度を高めてしまうものなんですね。

私の初代WRXは、全塗装をするにあたっては予想以上の難物だったのです。長く所有する愛車の全塗装を検討している人は、なるべく早めに実施するようことをオススメします。時がたてばたつほど作業は難しくなります。

マリオ高野 ▲凹凸が目立っていたボディも塗装のおかげで美しく変身した。

そして、全塗装のついでに数年前から動かなくなっていた左リアドアのパワーウインドウも修理しようと思いましたが、すでにパワーウインドウのレギュレーターが欠品。

手動ウインドウのパーツも欠品ということで、ここは諦めることにしました。

マリオ高野 ▲左リアのウインドウは修理ができず、現在は完全にはめ殺し状態に……

初代インプレッサWRXは、すでに外装パネルやバンパー、ウェザーストリップなど、内外装の多くのパーツが絶版になっています。

これらをリフレッシュするには、パーツ単体で中古品を探すか部品取り車をゲットするしかありませんので、中古車を買われる際は、その点を覚悟する必要があります。

なければ走行不能となるエンジン関連パーツやドライブシャフトなど、まだディーラーで注文できるパーツもありますが、ステアリングギアボックスなど、すでにリビルド品しか手に入らなくなっている重要部品も多いので、ご注意ください。

SUBARU車の場合、車種や年式が違っても共通するパーツ(少し加工すれば流用できるパーツ)が多いのは救いとなりますが、初代インプレッサWRX用のパーツは一部で争奪戦にもなっています。良い状態で長く乗るには、マニア同士のネットワークを駆使するなどして、絶版パーツを確保する体制を築くことが重要となります。

マリオ高野 ▲さすがに27年も経過すると手に入らないパーツも増えてきます。完全ノーマルを目指していましたが、例えばマフラーなども純正品は手に入らないため、社外品のものを使用しています

そうして、エンジン修理と全塗装は2020年9月に完成。この時点で深刻な機関系の不具合は解消し、愛車の外観は劇的な若返りを果たしました。

完了後の納車では、ボロかった愛車が再び新車に戻ったかのように輝く様子に大興奮!

色は以前と同じブラックマイカながら、最新の塗装を施したせいか、新車時よりも色ツヤが良い印象さえあり、全塗装の威力のデカさを実感。

全塗装だけで約50万円かかりましたが、その額以上の値打ちがあると断言できます!

マリオ高野 ▲完全塗装終了後。ドライブ時にはツヤのあるブラックが映えます

さて、気になるお値段は?

ここで、4年間の放置状態から車検を取得し、全塗装完了までにかかった費用を紹介しましょう。

・3年分の自動車税:約14万円
・車検(ACコンプレッサー、オルタネーター交換)費用:約20万円
・エンジン始動不良修理:約20万円
・全塗装:約55万円

ざっと100万円超ということですが、昨今の中古車価格の高騰を考えれば、100万円で見た目が新車同然のWRXが買えると思えば安いものです。

古くなった自分の愛車をさらに長く乗り続けたい、あるいは少し古めの中古車を買って長く乗り続けたい人は、全塗装を強くオススメします!

ワクワク感と愛情が劇的によみがえりますから!

そう言いながら全塗装によりピカピカとなった愛車でドライブする喜びを満喫するも、やはり27年もたった車を気持ちよく走らせるのは、そう簡単ではないのでした。この後も次から次へと問題が発生します…。

「後編」へ続く。

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スバル インプレッサ(初代)×WRX×全国
文/マリオ高野、写真/ダン・アオキ
マリオ高野

ライター

マリオ高野

1973年大阪生まれ。スバル ヴィヴィオを買ったことにより運転の楽しさに目覚め、インプレッサWRXも立て続けに新車で購入(弱冠ハタチ)。新車セールスマン、車両回送員、ダイハツ期間工、自動車雑誌の編集部などを経てフリーライターとなる。27年目のWRXと、GJ3型インプレッサG4 1.6i(5速MT)の2台が愛車の生粋のスバリスト。