スバル レガシィツーリングワゴン ▲SUBARU車ネタを中心に多くのメディアで活躍するライターのマリオ高野氏。そんなマリオ氏がいまあらためて見ても「良い車だ!」と絶賛するのが、2003年に登場した4代目レガシィシリーズなのです

今でも見劣りしない性能をもつ4代目レガシィシリーズ

名車の誉れが高い4代目レガシィシリーズ(BP/BL型)。ステーションワゴンタイプのレガシィツーリングワゴンと、セダンタイプのレガシィB4ともに、スバルファンのみならず、今も多くの車好きから支持され続けており、中古車として大いに魅力的です。

2003~2009年に販売されたので、最終型でも12年落ちとなりますが、質感や走行性能、デザインも含め、まだまだ古くささを感じさせません。各部の消耗品を交換してリフレッシュした個体は驚愕レベルで素晴らしく、「今新車で売られていても買いたくなる」ほど。

また、4代目レガシィはバリエーションの多彩さも際立っており、中古車の選択肢が多いのも魅力です。ハイパワーターボや6気筒、高回転型NAのスポーツユニットなどエンジンの種類も多彩で、しかもMTが選べた点も見逃せません。

今回はそんな4代目レガシィの魅力をあらためて探ってみましょう。

スバル レガシィツーリングワゴン ▲4代目レガシィシリーズは登場から18年も経っていますが、いまだに根強い人気を誇るモデルです。(写真は2006年マイナーチェンジモデル)

SGPにも通ずるボディ剛性の高さ

4代目レガシィを語るうえでの注目ポイントは、まずボディ剛性の高さです。

4代目は対旧型比で最大100kgもの軽量化を実現したことで話題となりましたが、軽いだけでなく、強さもいまだ特筆レベル。ボディ構造の合理化や高強度ハイテン(590MPa級高張力鋼板)のテーラードブランク工法の広範囲にわたる採用、局部剛性を上げるための新構造などを用いて骨格構造が全面的に見直されました。

さすがに、現行型に採用されている新世代のスバルのプラットフォーム「SGP」には及びません。しかし、「荷重伝達経路の改善をはかる」設計思想など、実はSGPに通じるものが多々あり、最新のSUBARU車の車体作りの基礎を確立した車でもあるので、いまだ乗り味に古さを感じさせないのです。

また、当時の入魂開発によって得た静粛性の高さも特筆レベルにあり、古くささを感じさせない美点のひとつに。4代目レガシィは、それ以前のモデルで見られた制振による防音構造を改め、遮音・吸音型へ発想を転換し、制振材を遮音材へ置き換えました。内装部品に防音機能を備えた「吸音インパネ構造」とすることでも、重量がかさむ重い防音材を省いています。

スバル レガシィツーリングワゴン ▲当時のモデルとしては非常に剛性感が高く、今でも決して見劣りしない走りをしてくれます

SUBARU最後のサッシュレスドア

さらに、程度の良い個体で今でも驚かされるポイントとして、ドア、およびパワーウインドウの開閉フィールの良さが挙げられます。

4代目レガシィは「SUBARU最後のサッシュレスドア車」であることでも知られており、「サッシュレスドア」は合理性とスポーティな外観を両立させるSUBARU車のアイデンティティのひとつでもありましたが、ドアやウインドウの開閉フィールの向上にも当時の開発担当者は執念を燃やして取り組みました。

ドア本体は、ドアビームの斜め一本配置やリアドアキャッチャー構造の採用、パネルの軽量化、ドアガラスの板厚低減ウインドウレギュレーターやモーターアッセンブリーの小型化などにより、旧型の3代目レガシィ比で12%の軽量化を実現。同時に開閉フィールなどの質感も大幅に高めています。

当時の開発担当者が一番強くこだわったのは「いかに軽い力で確実にドアが閉められるか」という点。ウエザーストリップがたわむときの反力やドアヒンジまわりの摩擦力、ラッチのバネ力、ドア全閉直前の車室内圧力上昇による抵抗力など、ドアの開閉時に生ずる運動エネルギーを最小とすることに苦心しました。

反力を低減させながらも高いシール性を確保した新しいウエザーストリップや、ベンチレーション性能の適正化、ドア重心の後方配置(ウインドウレギュレーター&モーターアッセンブリーなどを後方に移動)による慣性力の活用、摺動部抵抗のミニマム化(ヒンジのブッシュをテフロン化)などにより、ごく軽い力でも高い質感を伴って閉まるドアの高品質感を達成しているのです。

スバル レガシィツーリングワゴン ▲かつてのSUBARU車のアイデンティティともいえるサッシュ(窓枠)レスドア。剛性が保ちにくいという問題があるのですが、このレガシィはルックスと性能両方を維持することに成功したと言えるのです
スバル レガシィツーリングワゴン ▲雨や風、ほこりや騒音を防ぐ役割のあるウエザーストリップ。地味な部分ですが、ドアの開閉の質感にも大きく役立っているのです

さらには、ドア開閉時の入力を減らしたことで、窓枠のないサッシュレスドアの宿命ともいえる「ガラスのビレ感」も大幅に低減。ガラスの支持部となる窓肩の剛性を従来比で2倍に高め、ガラススタビライザーの適正化や取り付け部の剛性を上げることで制振効果が高まり、減衰時間を縮めることに成功しました。ドアサッシュを後方へ移動することでドアガラスを安定化。

さらに、ガラス摺動部やレギュレーターなどの可動部のすべてにガタ取りダンパーを追加して、ガラスのガタ吸収や経年劣化によるガタつきを抑えるなど、創意工夫が盛りだくさんのドアなのです。

ドアハンドル操作荷重を下げてドアハンドルの作動ストロークを適正化したり、ワイヤーケーブルに樹脂コーティングを施して機械的なロスを最小に減らすなどの工夫も施されているなど、この当時の200万円そこそこで買える車としては、異常なまでにドアの質感にこだわったと言えます。

4代目レガシィのドアはSUBARUのサッシュレスドアの集大成といえ、まさに究極のサッシュレスドアと言っても過言ではありません。3代目レガシィまでの世代のSUBARU車は、古くなるとドアの開閉フィールに残念感が漂うものですが、4代目レガシィは、今でもドアの感触がしっかりしている個体が多いのは、当時の開発担当者の執念によるものなのです。

スバル レガシィツーリングワゴン

新たな「ボクサーサウンド」を響かせる

他に、今あらためて注目したい美点として挙げたいのは、エンジンのサウンド。4代目レガシィは全車等長等爆化されたことでも知られます。等長等爆化により排気干渉が低減し、全エンジンとも中低速トルクが向上しました。

各気筒からの燃焼圧力波が均等に干渉することになり、濁り感のない排気音となり、騒音面でも劇的な改善が果たされましたが、ただ静かにしただけではなく、「新しいボクサーサウンド」作りにも様々な取り組みが見られます。

昔ながらのSUBARU車ならではのドコドコ音を懐かしむ声もいまだに少なくありませんが、4代目レガシィでは水平対向エンジン本来の特徴である、こもり音につながる低次基本次数が小さいこと、そして大容量の吸気キャンバー設置された独自のレイアウトを生かした軽快でリニアなサウンドを目指しました。とくに強くこだわったのは、ドライバーに聴かせる音作りです。

6.8リットルの大型サブマフラーと700mmロングテールマフラーを採用し、100Hz以下の低周波排気音を低減できたことで得られた、走り出しの音のスッキリ感は今でも印象的です。

さらに、楽器のようにそれぞれの排気管を共鳴させることで中周波排気音を強調。マフラー流入口の多孔分散器と多孔パーテーションの採用により、排気の流れの乱れを抑制しました。音質を悪化させる気流音については、排気の流れを細かく分散しながら減速させることによって低減しています。

スバル レガシィツーリングワゴン ▲スロットルボディがエンジン房内のほぼ中央にあり、しかも車室内向きに設置されているという、縦置き水平対向エンジンならではのレイアウトを生かし、吸気チャンバーやエアクリーナーをスピーカーとして利用。チャンバー内部のリブの削除や高さの変更、およびチャンバー面の曲率や肉厚変更により狙いの周波数域に合わせるなどして、音質を調律しているのです
スバル レガシィツーリングワゴン ▲このマフラーは単なる「排気」という役割を超えて、まさに心地よい音色を響かせる楽器と言っても過言ではありません

4代目レガシィシリーズの中古車相場の状況は?

4代目レガシィはB4のセダンとツーリングワゴンを合わせると、中古車の流通台数が800台以上と多く、エンジンバリエーションのやグレードの選択肢も多いのが嬉しいところ。

おそらくもう二度と新車では登場しない6気筒や、NAのスポーツグレード2.0Rといったマニア向けするレアグレードもそれほど高くなっておらず、4代目レガシィシリーズの中古車は、50万円以下からでも十分に狙える状況です。同じスバルのスポーツモデルでも、相場が高騰し続けているWRX系より圧倒的に狙いやすい状態にあります。

SUBARU車は2006年5月24日以降に販売されたモデルは後期型のアプライド(スバル車における年次改良の呼称)はD型となり、内外装の意匠が少し変わりますが、年式的にもやはりD型以降の後期型がオススメと言えます。


一般的なオススメグレードはターボエンジン搭載の2.0GT系で、後期型の走行距離が7万~8万kmで車両価格が70万~80万円あたりの物件が狙い目となるでしょう。12~14年落ちの国産車としては高めの相場になりますが、前述した名車っぷりからすると満足度は高いはずです。


スポーツ性を望まない人には、実は売れ筋だったNAの実用グレード2.0i系がオススメ。ターボ系と比較するとサスペンションはソフトですが、その分快適性は高く、車体の余裕が大きいので実用車としては申し分がなく、各部の負担が小さいので劣化や傷みの少ない個体が多いが美点です。タイヤサイズは16インチなので、乗り味の向上が期待できる最新の高性能タイヤを装着しても、ランニングコストが抑えられる点も見逃せません。


ただし、後期型は内装の劣化が進むとダッシュボードや内張りがベタベタするような手触りになりやすいので、クオリティ重視の人は内装がベタついていないか要チェックです。よく出る症状でもあるので、逆に内装のベタつきはあまり気にせず、パワートレーンやサスペンションなど車として重要な部分の調子を重視して選ぶのも良いでしょう。ちなみに、一部のグレードを除き内装パーツのほとんどはまだ新品が出ますので、インパネを丸ごと新品に交換する選択肢もあります。

4代目レガシィは名車の誉れが高く、内外装のデザインや性能に古くささをあまり感じさせません。

消耗パーツのほとんどはまだディーラーで入手できるので、多少ヤレた個体でも、少しお金をかければ当時の質感を取り戻すことは難しくありません。消耗パーツが豊富に手に入る今のうちにコンディションを整えれば、この先10年以上にわたって名車の質感が味わえるでしょう。

スバル レガシィツーリングワゴン

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スバル レガシィツーリングワゴン(4代目・BP型)×全国

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文/マリオ高野、写真/ダン・アオキ、尾形和美
マリオ高野

ライター

マリオ高野

1973年大阪生まれ。スバル ヴィヴィオを買ったことにより運転の楽しさに目覚め、インプレッサWRXも立て続けに新車で購入(弱冠ハタチ)。新車セールスマン、車両回送員、ダイハツ期間工、自動車雑誌の編集部などを経てフリーライターとなる。27年目のWRXと、GJ3型インプレッサG4 1.6i(5速MT)の2台が愛車の生粋のスバリスト。