▲人気薄のため日本では短命に終わってしまったクライスラー イプシロンですが、低走行物件も車両価格100万円以下で狙えてしまうその中古車は今、絶好の注目株ですよ! ▲人気薄のため日本では短命に終わってしまったクライスラー イプシロンですが、低走行物件も車両価格100万円以下で狙えてしまうその中古車は今、絶好の注目株ですよ!

エンブレムはアメリカ車、しかし中身はイタリア車

「そろそろ小じゃれたヨーロピアン・コンパクトに買い替えたいと思っている。ただし予算は100万円とか、おおむねそのぐらいで」と考えている人、けっこう多いかもしれません。年式的にやや古くてクラシカルなタイプでも構わなければ、100万円以下といわず50万円ぐらいでも探せるのが欧州コンパクトですが、「や、ウチは新しめの年式じゃないと」という場合は通常、車両価格100万円以下で探すのはちょっとキツい可能性もあります。

でも大丈夫。ちょっとだけ目先を変えて「クライスラーのコンパクトカー」を探してみてください。そうすれば、かなりゴキゲンなプレミアム・コンパクトである「イプシロン」の低走行物件が、車両価格100万円以下で手に入る可能性大なんです。

「でもクライスラーってたしかアメリカの会社でしょ? それってワタシが探してる『ヨーロピアン・コンパクト』とはちょっと違うんじゃない?」という疑問もあるかもしれません。おっしゃるとおりクライスラーはアメリカを本拠とする自動車会社でしたから、そのクライスラー イプシロンは言ってみれば「アメ車」です。

しかしイプシロンという車は、もともとイタリアの名門「ランチア」が開発および製造販売していた、紛れもない欧州産のプレミアム・コンパクトカー。それが、ランチアの親会社であるフィアットがアメリカのクライスラーを子会社化して「フィアット・クライスラー・オートモービルズ」という会社になった関係で、12年12月からは「クライスラー イプシロン」という車名で売られるようになった……という話なんです。

▲それまでは「ランチア イプシロン」として一部が並行輸入されていましたが、12年12月からクライスラーブランドとして正規輸入が始まったイプシロン ▲それまでは「ランチア イプシロン」として一部が並行輸入されていましたが、12年12月からクライスラーブランドとして正規輸入が始まったイプシロン
▲日本ではこれが「初代イプシロン」ですが、本国での初登場から数えると、この型は3代目にあたります ▲日本ではこれが「初代イプシロン」ですが、本国での初登場から数えると、この型は3代目にあたります

中身は同じなのに、ブランド変更が災い(というか幸い)して格安に

そしてそのクライスラー イプシロンですが、とっても素晴らしいプレミアム・コンパクトカーです。クセの強いデザインなので好き嫌いはあるかもしれませんが、エンブレム以外はいわゆる「イタリアン・デザイン」だけあって、実車を見てみれば面の構成も細部のあしらいも、いわゆるフツーの小型車とは何もかもが違う、個性的かつ上質な優美さのかたまりであることに気づくでしょう。

そして搭載されているエンジンもサイコーです。「ツインエア」と呼ばれる0.9Lの2気筒エンジンで、人気の「フィアット 500ツインエア」に積まれているのとまったく同じエンジンです。これが小排気量でありながら非常にパワフルで、そして独特の有機的なビート感があるため、運転していてなんとも気持ちイイのですよ。それでいてダウンサイジングな2気筒0.9Lですから燃費性能も良好で、カタログ燃費は19.3km/Lとなかなかのものです。

そんなステキなクライスラー イプシロンなんですが、欧州車マニアの皆さんというのはどうやら「イタリアのメーカーのエンブレム」が付いていることに非常に重きをおくようで、エンブレムがアメリカのクライスラーになった途端、「イプシロンも終わったな……」みたいな感じでイプシロンに対する興味を急激に失った模様。

その結果(かどうか断言はできませんが)、クライスラー版イプシロンの売れ行きは今ひとつ伸びず、12年12月の販売開始からわずか2年後の14年12月には新車販売が終了してしまいました。そして中古車の方も、その人気薄が災いというか幸いというかして、冒頭で申し上げたとおり「かなり低走行な物件でも車両価格100万円以下!」みたいな状況になっているのです。

▲有機的な造形の運転席まわり。ステアリングホイールのセンターパッドに「CHRYSLER」のバッジが付いてますが、以前そこは「LANCIA」でした。日本仕様はMTではなくセミATです ▲有機的な造形の運転席まわり。ステアリングホイールのセンターパッドに「CHRYSLER」のバッジが付いてますが、以前そこは「LANCIA」でした。日本仕様はMTではなくセミATです
▲エンジンはフィアット 500ツインエアと同じ2気筒0.9L。過去には「インターナショナル エンジン オブ ザ イヤー2011」4賞を獲得したこともある素晴らしいエンジンです ▲エンジンはフィアット 500ツインエアと同じ2気筒0.9L。過去には「インターナショナル エンジン オブ ザ イヤー2011」4賞を獲得したこともある素晴らしいエンジンです

メンテナンスに関しても特に大きな不安はなし

具体的には、車両価格で90万~100万円ぐらいを見ておけば、走行1万~2万km台ぐらいの「ゴールド」または「プラチナ」が探せるでしょう。ちなみにプラチナというのはレザーシートやバイキセノン・ヘッドライトなどが付いている上級グレードで、ゴールドはファブリックシートのベーシックなグレードです。

ただ、「車両価格100万円以下」に厳密にこだわりすぎると、流通量がやや少ないため探すのにちょっとだけ苦戦する可能性はあります。その場合は「車両価格120万円以下」ぐらいまで範囲を広げて探してみれば、より探しやすくなるでしょう。たぶんですが、走行1万km台のプラチナが見つかるはずです。

「初めての輸入車」となるとメンテナンス面の不安があるかもしれませんが、イプシロンは特に故障が多い車ではなく、販売終了とはなりましたが、クライスラー正規販売店での整備体制にもまったく問題はありません。というか、イタリア車を得意とする町の専門工場でもたいていの場合、しっかりとメンテナンスしてくれるでしょう。

安くて美しくてよく走って、そして維持の不安も少ないクライスラー イプシロン。「ランチア」のエンブレムに特にこだわりがないのであれば、絶対にオススメの「ヨーロピアン」コンパクトです。ぜひご検討ください!

text/編集部
photo/フィアット・クライスラー・オートモービルズ