▲昔のオープンカーはこのとおり頭上に広~い青空が広がっていたものですが、最近のオープンはどれもAピラーが非常に寝ているため、青空も拝みにくい状況に…… ▲昔のオープンカーはこのとおり頭上に広~い青空が広がっていたものですが、最近のオープンはどれもAピラーが非常に寝ているため、青空も拝みにくい状況に……

球場も車も「屋根なし」は本当に気持ちいい!

我が東京ヤクルトスワローズを応援するため、本拠地・神宮球場(正式名:明治神宮野球場)へ日参するのが本当に気持ちの良い季節がやってきた。……なんつってるうちに梅雨に入ってしまい、それが明けると死ぬほど暑い夏がやってくるわけだが、それでも、神宮球場での野球観戦は最高だ。

神宮の何が最高って、やはり「屋根がないこと」に尽きるのだろう。

太陽が傾いてきた頃スタンドへ入る。その時点では一塁側は西日がけっこうキツくて暑いのだが、まぁ選手らの練習風景をのんびり眺める。そうこうするうちにプレイボールとなり、気がつけば涼しい夜風があたりを吹き抜け、そして顔を上げれば空には一番星、二番星。で、「あ、お姉さん、こっちにもビールお願いします」とかなんとか。……この風情というか何というかは、近年主流のドーム式球場では絶対に味わえない、素晴らしきものである。

それと同様に、「オープンカー」も本当に素晴らしい。

神宮球場と似た不便さ、すなわち夏はトップを降ろすと暑くて死にそうになるとか、雨が降るとちょっと困るとか、そういったものは当然ある。しかしそれでも、あえての繰り返しになるが、気がつけば涼しい夜風があたりを吹き抜け、そして顔を上げれば空には一番星、二番星……という風情を一度でも体験してしまうと、もう「オープンカーがない生活」など想像もできない人間ができあがる。

▲東京ヤクルトスワローズ選手たちの試合前練習風景。神宮球場一塁側ブルペンシートより筆者写す。こういった夕暮どきや、心地良い風が吹いて星がまたたく夜の神宮は、ホントにオススメの場所です ▲東京ヤクルトスワローズ選手たちの試合前練習風景。神宮球場一塁側ブルペンシートより筆者写す。こういった夕暮どきや、心地良い風が吹いて星がまたたく夜の神宮は、ホントにオススメの場所です

とはいえ最近のオープンカー、ピラーがちょっと寝すぎでは?

そんな素晴らしいオープンカーだが、最近のそれにはいくつかの疑問もないわけではない。一つは、Aピラーの角度だ。

様々な理由でそうなっているのだろうから、言っても詮ないことではある。しかし最近のオープンカーはとにかくAピラーの傾斜がキツすぎだ。往年のオープンカーであればAピラーが比較的切り立っていたため、当然ながら「見上げれば、そこは空」だったわけだが、近年のオープンカーはAピラーならびにフロントウインドウがかなり傾斜しているため、下手をすれば「見上げれば、そこは空じゃなくてフロントウインドウ」ということにもなりかねないのだ。

またもう一つ気に入らないのが、いわゆる「クーペ・カブリオレ」の隆盛だ。もちろんあれを気に入らないと言っているのは筆者の勝手で、客観的に見れば非常に便利かつ快適な文明の利器である。しかしどうしてもそこに、まるで「開閉ドーム式球場」のような、「もちろん便利なんだけど、果たしてどうなんだろうなぁ……」という何かを感じてしまうのである。偏屈ですみません。

ということで、どれだけ賛同を得られるかは完全に謎だが、筆者はここに「オープンカーはAピラーの角度で選ぶべし!」という運動をブチ上げたいと思う。車選びというと動力性能がどうしたとか、居住性や燃費がこうしたという観点で考えるのが一般的だが、そこは完全に無視して「Aピラー角」だけで決めるのだ。暴論ではあるが、そこには何らかの本質があぶりだされる可能性がある。

▲「見上げればそこはフロントウインドウ」というのはちょっと大げさかもしれないが、近年のクーペ・カブリオレはAピラーの傾斜がキツいため、開放感にやや欠けるのは事実でありましょう ▲「見上げればそこはフロントウインドウ」というのはちょっと大げさかもしれないが、近年のクーペ・カブリオレはAピラーの傾斜がキツいため、開放感にやや欠けるのは事実でありましょう

開放感で選べばVW ゴルフ カブリオ クラシックライン!

となると、筆頭候補はフォルクスワーゲン ゴルフ カブリオ クラシックラインになるだろうか。

「クラシックライン」は初代ゴルフをベースに作られたカブリオの最終限定車だが、まぁクラシックラインじゃなくて通常の「カブリオ1.8」でも全然構わない。大切なのはAピラーの角度だ。写真をご覧いただければわかるとおり、最終カブリオのAピラーはひたすら切り立っている。運転席から顔を上げれば、そこには空しかないのだ。

ちなみに広報写真を頼りに手元の分度器でテキトーに測ってみたところ、ゴルフ カブリオ クラシックラインのAピラー角度は推定45度。片やプジョー 308CCの広報写真を同様に測ると、そちらは推定25度であった。完全手動のテキトーな計測ゆえ数値の信憑性はアレだが、この大きな差はオープンカー乗りにとって果てしなくデカいと断言することはできる。

▲手元の分度器によるアバウトな計測ですが、ゴルフ カブリオ クラシックラインのAピラー傾斜角は約45度。固定式のBピラーは少々邪魔だが、乗員の頭上視界はとにかく圧倒的に良好 ▲手元の分度器によるアバウトな計測ですが、ゴルフ カブリオ クラシックラインのAピラー傾斜角は約45度。固定式のBピラーは少々邪魔だが、乗員の頭上視界はとにかく圧倒的に良好
▲こちらはクーペ・カブリオレのプジョー 308CC。素晴らしい車であることは疑う余地もないが、同じくアバウトな計測によればその角度は約25度 ▲こちらはクーペ・カブリオレのプジョー 308CC。素晴らしい車であることは疑う余地もないが、同じくアバウトな計測によればその角度は約25度
もちろん、初代ゴルフ カブリオ最終型の魅力はAピラー角だけにとどまらない。得も言われぬクラシカルな造形しかり、車両重量1070kgと軽量ゆえのキビキビ感しかり、何の変哲もないのだが妙に味わいある1.8L SOHCエンジンが「ぷおおおお~ん」と回る際の、ちょっとしたアコースティックギターを弾いているかのような快感しかりだ。で、それでいて中古車相場もおおむね70万~160万円と、人気のヤングタイマーであるのにまだ死ぬほど高騰しているわけではない。素晴らしい、最高すぎる選択肢である。

もうちょい新しいのが良ければ旧型ミニ コンバーチブルはいかが?

しかし「年式的にちょっと古すぎるな……」と感じる人も多そうな気配なので、いちおうプランBも提出せねばなるまい。……例えばR57こと旧型ミニのコンバーチブルはどうだろうか?

ミニ一族というと「ゴーカートフィーリング」「ファッショナブル」などのキーワードで語られることが多く、それは実際そのとおりなのだが、加えて筆者が注目したのがAピラーの角度だ。写真をご覧いただければおわかりと思うが、前述のテキトー計測によれば、その傾斜角度は推定43度。……近年の車ながらゴルフ カブリオ クラシックラインの推定45度に迫る素晴らしい数値である。

▲09年4月から16年2月まで販売された旧型ミニ コンバーチブル。キビキビとした走りやデザイン性に言及されることの多い車ですが、筆者が注目したのは約43度と切り立ったAピラーの角度! ▲09年4月から16年2月まで販売された旧型ミニ コンバーチブル。キビキビとした走りやデザイン性に言及されることの多い車ですが、筆者が注目したのは約43度と切り立ったAピラーの角度!

そしてもちろん、巷でうわさされているとおり旧型ミニ コンバーチブルはゴーカートフィーリングでありファッショナブルであり、中古車相場も150万~250万円程度と非常にお手頃。メンテナンスの手間も、もはやセミクラシックといえるゴルフ カブリオ クラシックラインと比べれば「無い」ようなものだろう。これもまた、空と風を愛する自動車乗りにとっては最高の1台になり得る。

ほかにゴルフIIIベースのカブリオなども候補に入りそうだが、とにかくさしあたってはこの2車種を強烈に推したいと考える、神宮球場愛好家の不肖筆者なのであった。

text/伊達軍曹
photo/フォルクスワーゲン、プジョー、BMW、伊達軍曹