▲微妙な立ち位置ゆえ、やや安値となっているフェラーリ 360モデナだが、そろそろ高値方向へ反転するかも? ▲微妙な立ち位置ゆえ、やや安値となっているフェラーリ 360モデナだが、そろそろ高値方向へ反転するかも?

本来の実力以上の安値、株でいうと「低PER」な状態か

大した確証もない与太話レベルではあるのだが、V8フェラーリの中では近頃いまひとつ人気薄な360モデナが、そろそろ「来る」のではないかと思っている。

根拠はこうだ。

現在、富裕フェラーリオーナーが主に所有しているのが458イタリアだが、彼らはそれにずっと乗り続けるつもりはサラサラなく、最新のV8フェラーリである488GTBを注文中であるはずだ。それ以外のV8フェラーリは基本的に彼らの眼中にはない。

▲2010年6月から2015年4月まで販売された直近のV8フェラーリである「458イタリア」。V8フェラーリとしては最後の自然吸気エンジンであり、最後のピニンファリーナ・デザインでもある ▲2010年6月から2015年4月まで販売された直近のV8フェラーリである「458イタリア」。V8フェラーリとしては最後の自然吸気エンジンであり、最後のピニンファリーナ・デザインでもある
▲こちらは2015年5月登場の最新モデル「488GTB」。3.9LのV8エンジンはターボチャージャー付きとなり、ボディデザインもそれまでのピニンファリーナからフェラーリの社内デザインに変更されている ▲こちらは15年5月登場の最新モデル「488GTB」。3.9LのV8エンジンはターボチャージャー付きとなり、ボディデザインもそれまでのピニンファリーナからフェラーリの社内デザインに変更されている

で、458イタリアはこのところ常に「暴落寸前!」とささやかれているが、結果として暴落しないまま妙に高値を維持している。が、中古車としてはちょっと高すぎるということで、あまり動いてはいない模様。いっぽう458の1世代前にあたるF430は、富裕層からは「今さら……」という感じで無視され、かといってド根性系のサラリーマン・フェラリスタにはちょっと高すぎるため(※2016年2月15日現在、平均価格1627.7万円)、これまたさほどの動きはないようだ。

▲2005年1月に登場した2世代前のV8フェラーリである「F430」 ▲2005年1月に登場した2世代前のV8フェラーリである「F430」

ド根性系フェラリスタにとっての変わらぬ一番人気であり、一部のマニアックな富裕層からもコレクションアイテムとして注目されているのがF355だが、ご存じのとおりF355はこのところ相場がアホほど高騰してしまったため、ド根性系にとってもやや縁遠い車になってしまった。走行距離が多い個体はそれなりの安値で販売されているが、市場で人気となるのはやはり走行2万km以下ぐらいの上モノ。しかしそういった上モノは今や出物が極めて少なく、出てきたとしても価格が鬼のように高くなる場合が多い。そのため、結論としてF355の中古車もなかなか動きにくくなっている。

▲こちらは1994年1月から1999年9月まで販売され、中古車市場では今なお高い人気を維持している4世代前のV8フェラーリである「F355」 ▲こちらは1994年1月から1999年9月まで販売され、中古車市場では今なお高い人気を維持している4世代前のV8フェラーリである「F355」

そこで必然的に注目されるのが、F355の後継モデルである「360モデナ」であるわけだが、これもまた微妙な側面がないわけではない。何が微妙かといえば、そのデザインだ。

古典フェラーリの美しき結晶とでも言うべき可憐なフォルムを備えたF355は、いまだ大変な人気がある。また現代フェラーリの粋と言える458イタリアの造形や、評価は分かれるかもしれないが最新の488GTBのデザインは、それはそれである種の人からの絶大な支持を集めるだろう。

しかし360モデナは、筆者が思うにどうにも中途半端だ。

▲1999年3月から2005年1月まで販売された「360モデナ」。サイズはテスタロッサ並みに大型化され、それまで同様ピニンファリーナがデザインを担当したボディは独特の丸みを帯びたものへと全体のトーンが変更された ▲1999年3月から2005年1月まで販売された「360モデナ」。サイズはテスタロッサ並みに大型化され、それまで同様ピニンファリーナがデザインを担当したボディは独特の丸みを帯びたものへと全体のトーンが変更された

いや、モデナが登場した1999年の時点では中途半端どころか「超斬新!」で、その未来派な感じが良きにつけ悪しきにつけ話題となったものだ。しかし2016年の視点で360モデナを見ると「F355のような古典的美しさがあるわけでもなく、かといって458イタリアや488GTBのような未来派感があるわけでもなく……」という感じに見えてしまうのだ。

それゆえ現時点の360モデナは、古典的美しさを好むド根性系オーナーやコレクターから熱烈に愛されるわけでもなく、かといって常に「最新!」であることを望むパワーエリートな富裕層に評価されるでもなく、なんとなく宙ぶらりんな位置に甘んじている。その結果、中古車の平均価格も原稿執筆時点で981.1万円と、年式的に古いF355より100万円近くも安いゾーンで低迷している。

が、その安さが逆に良いのではないかと思うのだ。

もちろん、それが「ただ安いだけの車」であればそのまま市場から忘れられ、そして朽ちていくわけだが、当然ながら360モデナはそんな車ではない。自動車評論家であり、大乗フェラーリ教なる宗教(?)の開祖である清水草一氏も次のように語る。

「モデナはホント良い車だと思いますよ。わたしも2003年から2008年まで360モデナの黒に乗っていましたが、メカ的に非常に丈夫なためトラブルも少ないですし、走行距離が極めて短い物件でもF355みたいにバカ高くはなっていない。そんな感じの優等生ですが、同時にフェラーリらしいじゃじゃ馬感もたっぷりある。しかし人気再燃の気配はほとんどないため(苦笑)、V8フェラーリとしては比較的安価に狙える。ある意味良いことづくめで、狙い目といえば狙い目だと思いますけどね」

要するに、そんなステキな車である360モデナが妙に安い「今」って、もしかしたら結構な大チャンスなのではないか? ということだ。なんとも言えない話ではあるが、もしも360モデナの人気が再燃したあかつきには平均価格も100万円単位で上がってしまうはずであり、実際、筆者が過日取材した某専門店でも「ここのところモデナのプライスがじわじわと上がってきている」との証言を得ている。大穴狙いの人は、もしかしたらすでに動き始めているのかもしれない。

▲最高出力400psを発生する360モデナの3.6L V8自然吸気エンジン。現在の458イタリアや488GTBほどではないにしても、それでも鬼のような速さをいとも簡単に実現させる素晴らしいエンジンだ ▲最高出力400psを発生する360モデナの3.6L V8自然吸気エンジン。現在の458イタリアや488GTBほどではないにしても、それでも鬼のような速さをいとも簡単に実現させる素晴らしいエンジンだ

ということで、冒頭のとおり大した確証もない与太話レベルではあるのだが、今回のわたくしからのオススメはずばり「相場再高騰が始まってしまう前に360モデナを買う」ということだ。

text/伊達軍曹