※徳大寺有恒氏は2014年11月7日に他界されました。日本の自動車業界へ多大な貢献をされた氏の功績を記録し、その知見を後世に伝えるべく、この記事は、約5年にわたり氏に監修いただいた連載「VINTAGE EDGE」をWEB用に再構成し掲載したものです。

▲1953年から1981年まで作られたトライアンフのスポーツモデルシリーズがTR(Triumph Roadster)で、TR4は1961年から1965年まで製造されたモデル。イタリア人デザイナーであるジョバンニ・ミケロッティが手掛け、TR3からボディなどを一新し生産された。TR4はエ100psの2138㏄エンジンを積み、約4万台を生産。同時期に発売された、TR4Aは104psに高めた同エンジンを積み、約2万8000台が生産されたといわれている 1953年から1981年まで作られたトライアンフのスポーツモデルシリーズがTR(Triumph Roadster)で、TR4は1961年から1965年まで製造されたモデル。イタリア人デザイナーであるジョバンニ・ミケロッティが手掛け、TR3からボディなどを一新し生産された。TR4はエ100psの2138㏄エンジンを積み、約4万台を生産。同時期に発売された、TR4Aは104psに高めた同エンジンを積み、約2万8000台が生産されたといわれている

英国テイスト溢れるライトウエイトスポーツ

松本 本日もよろしくお願いいたします! 日差しも春めいてきて、オープンカーの季節になりましたね。
徳大寺 そうだな。寒さ対策をしてオープンに乗る。車好きにはたまらない季節だよ。
松本 今回見に行く車は、オープンカー作りに定評のある英国車なんです。車種のネーミングがそのままモデル名のようになってます。
徳大寺 トライアンフか。トライアンフは屋根の取れるロードスターをTRと車名に使っているんだ。TR、すなわちトライアンフロードスターの略なわけだな。
松本 巨匠もトライアンフに何台かお乗りになっていたと聞きましたが、TRシリーズも乗っていましたか?
徳大寺 もちろん。僕が乗っていたトラはTR4なんだ。それで今日はどのモデルだい?
松本 今日はIRSです。
徳大寺 IRSか! これで分かれば、エンスージャストだろう。IRSはインディペンデント・リア・サスペンションの略だね。だからTR4Aだな。間違いない。トライアンフのロードスターでは初めての全輪独立縣架だからね。それまではリジットアクスルだったんだ。
松本 おっしゃるとおり、トライアンフ「TR4AIRS」です。
徳大寺 TRシリーズは1952年にTR1というロードスターを作ったんだけど、これはプロトタイプのみの制作となったんだ。もともとスポーツカーのシャシーでもなんでもなかったわけだから、そのままじゃ厳しかったんだろう。
松本 そのようですね。昔、本で読んだことがあります。その後1953年にTR2がデビューしたわけですね。
徳大寺 そこからがTRシリーズの黄金期だね。
松本 巨匠、TRシリーズの歴史を遡ると肝心のTR4Aの話まで辿り着かなくなるので、巨匠の乗っていたTR4から始めませんか?(笑)
徳大寺 それもそうだな。ル・マンや国際的なラリーでもTR2、TR3Aは活躍したんだ。その後、60年代に入るとモダンなデザインが好まれた。そこで採用されたのが「ジョバンニ・ミケロッティ」のデザインなんだ。君の所有しているトライアンフ2000もそうだろう。
松本 もちろんです。この年代からはトライアンフはミケロッティと運命共同体のようになるわけですからね。

オープンカーの醍醐味を感じる色っぽい内外装の英国車

徳大寺 ところで、今日見に行くTR4Aはどっちだい? 右ハンドル? それとも左? 当然右の方が乗りやすいからね。
松本 珍しいですよ! 右ハンドルです。トライアンフって50年代からの量産車は左が多いんですよ。
徳大寺 まぁ現在でも北米は魅力のあるマーケットだし、50~60年代は勢いがあったしな。トライアンフが北米を意識したのは分かるよ。
松本 お店はそろそろですよ。あ、あれですね。ボディは赤いですね。
徳大寺 ほーこれは珍しいね。僕が乗っていたのはブリティッシュレーシンググリーンだけど、大抵、ホワイトとかブラックとかね。きれいじゃないか。TR4とTR4Aは外観から違うんだよな、サイドに付いたシグナルランプとモールディングが。メッキがあってちょっと高級感があるだろう。
松本 このウインカーとモールディングは専用ですから合ってますね! ワイヤーホイールは新品のようですね。個人的にはシルバーの塗装が好きですが。
徳大寺 まぁ、そう言うなよ。これだけのコンディションにしておくのは大変なことなんだから。ミラーも砲弾型で当時の雰囲気を出してるな。内装もなかなかだぞ。TR4Aはウッドパネルを使ってるんだ。やはり作りが高級だね。さっきも話したけど独立縣架で、性能は賛否両論あるけど乗り心地はいいんだよ。
松本 TRシリーズって独特な雰囲気がありますよね。英国車なんですけどそうじゃないような。
徳大寺 でも乗り心地とエンジンはトルクがあって英国車そのものだぞ。それと乗ったときのコックピットの雰囲気は他の国にはないな。MGもいいけどこのTR4Aの方が大衆的じゃないカッコ良さがあるよ。マフラーも真ん中2本だしさぁ。この当時の英国車はとにかくだてなんだな。エグゾーストの音といいスタイルといい、ファッションしてるんだよ。こういったモデルは目の前にあると相当カッコいい。見てると買いたくなってくるよ。

TRIUMPH TR4A エンブレム
TRIUMPH TR4A シート
 TRIUMPH TR4A エンジン
 TRIUMPH TR4A 運転席周り
TRIUMPH TR4A リア

【SPECIFICATIONS】
■全長×全幅×全高:3960×1460×1240(mm)
■車両重量:980kg
■エンジン種類:直列4気筒 ■総排気量:2138cc

【ヒルズオート】
■所在地:東京都世田谷区奥沢7-11-5
■定休日:水・日曜日
■営業時間:10:00~19:00
■tel:03-5707-1122

text/松本英雄
photo/岡村昌宏


※カーセンサーEDGE 2014年5月号(2014年3月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています