ルノーメガーヌ・ルノースポール | 伊達セレクション
写真上は近年のルノーのスマッシュヒットモデル「メガーヌ・ルノースポール」。強靭なボディと足回り、そしてひたすら活発な2L直4ツインスクロールターボがもたらす走りは、現在のところ同クラスで世界最強かも。また写真下の「ルーテシア・ルノースポール」は、発売後に日本の歩行者頭部保護基準に適合しないことが発覚し販売中止となった悲運の名車だが、中古車としてなら今も狙うことができる。
ルノールーテシア・ルノースポール | 伊達セレクション
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昔はインポーター社員にとってもルノー車はレアだった?

「何かを捨てることで、初めて手に入れられるものがある」古今東西の流行歌で繰り返し歌われてきたテーマだが、車の世界でも同じテーマで「歌う」ことが可能だ。何の話かといえば、ルノーという自動車メーカーについてである。日本におけるルノーはここ数年、「一般ウケ」をある意味捨てたことで初めて、自動車愛好家からの強烈なシンパシーを手に入れた。

ルノーは、フランス本国ではエンスーがどうのこうのとかはほとんど無関係に、フツーの自動車としてフツーによく売れている。なにせもともとは「ルノー公団」なる国営企業である、堅いのだ。

そんな堅い、ヨーロッパでは最大級の自動車メーカーなのに、「なぜ、日本でだけは全っ然売れないのだ!」と思ったのだろう、1993年にヤナセの子会社として「フランス・モーターズ」を設立させた頃、日本での大勝負に打って出た。当時の主力であった「初代メガーヌ」5ドアハッチバックを、当時のフォルクスワーゲンゴルフの「ガチなライバル」として位置づけ、正面からぶつけたのだ。TV CMも打った。

しかしご承知のとおり、ほとんど売れなかった。

余談だが、当時わたしは初代メガーヌのクーペ16Vというやつに乗っていて、これは5ドアHBよりさらにレアだった。その車で世田谷通り沿いにあったフランス・モーターズの前でたまたま信号待ちのため停止すると、同社敷地内にいた5~6人の社員が一斉に「うぉっ!  メ、メガーヌ16Vだっ!!!!!」とばかりに驚愕した表情でこちらを指差していた。…自社の車を見かけたぐらいでいちいち盛り上がらないでほしいと、真剣に思った。

「自動車変態」は今、ルノーへと向かう

その後も様々な紆余曲折はありつつ、結論として日本におけるルノーはず~~~っと低迷を続けた。唯一のヒット作として初代カングーがあったが、いつまでも「カングー頼み」でやっていけるはずもなかった。

しかしいつの頃からか、具体的には00年代後半からか、ついに日本におけるルノーは開き直った。「変態路線で行く」と。
※ここまで書いてきたルノーについての各種見解は、取材に基づいてはいますが、伊達の推測も一部相当に交じっていることをお断りしておきます。

フツーのハッチバックやセダンなどにおいては、どうやらルノー側の価値観および美意識と、日本人一般のそれとの間にはかなりの乖離があり、まったく売れなかったわけだが、「自動車変態」のココロには国境などない。ルノー・ジャポンが送り出した少数精鋭の変態モデル、すなわち今どき変速機がMTだったり、2人しか乗れなかったり、奇妙なカタチをしていたり、妙に走りが良かったりするモデル群は、ごく小規模なマーケットとはいえ確実にニッポンの自動車変態の心をとらえた。

ポピュラリティーとボリューム志向を捨てたことで、逆に「届いた」のだ。

以降の、日本におけるルノーの快進撃(怪進撃?)は多くの者の知るところであるし、この手法が「大企業がとるビジネス手法としてどうなのか?」ということを論じるのは、わたしの役目ではない。わたしが言えることはただひとつ、「そんな近年のルノーの、ホメ言葉としての『変態モデル』が今、中古車としても大変狙い目になってきてますよ」ということだけだ。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
近年のルノー各車、騙されたと思ってぜひ!


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE