‘94 JAGUAR XJS
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / VINTAGE EDGE
2012/09/13
歴史的な人物の作品に乗る喜びを感じてほしいね
リアクォーター、リアウインドウ、Cピラーまでも変更し、エクステリアを大幅に改良。また目立たない機能面も大きく向上し、信頼性の高い高級GTモデルして人気を得る。エンジンは当時のXJ6が搭載していたエンジンを4L化し、出力は225psまで高められた。ボディバリエーションとしては他に12気筒だけが用意していたコンバーティブルもあるが、91年のタイミングで直6エンジンにも追加されている。
徳大寺 今号はどんなクルマを見に行くんだ?
松本 今回はクーペ特集なので、ジャガーでは外すことのできない“Eタイプ”とも考えたんですが、前にもやってるんですよね。
徳大寺 他にクーペと言ったらXJ-Sあたりしかないんじゃないか。他にもXJCというレアなモデルもあるけどまぁ見つけるのが難しい。
松本 はい、今回はXJ-Sです。こちらのお店のこの薄いブルーグレーのクルマがそうです。
徳大寺 うん、色がまずいいじゃないか。XJ-Sって途中でマイナーチェンジしただろ? これは前期、後期、どちらになるんだ?
松本 後期型です。XJ-Sは当時の英国車らしく1975年からおよそ20年間作られていた息の長いクルマで、フェイスリフトを途中でしていますよね。大きく分けると1975年から90年と91年から96年。その時に“XJ-S”から“XJS”へ名称変更したんです。名称の変更は簡単ですが、実際はただデザインを変更しただけではなくて、クォーターパネルも作り直しています。
徳大寺 そうだな。そして、そのマイナーチェンジから5年後にはなくなってしまうんだから後期型は貴重だよ。
松本 今回の車両はその貴重な後期型ということですね。しかも今回の94年式はエンジンやエアコンなど、次世代のX300というモデルに搭載するユニットと同じモノを搭載してるんです。詳しく言えば91年からのモデルもオリジナルのXJ-Sから大幅に改善されていていますが、94年モデルからはエンジンやエアコンに関しても新しい日本製を採用しているんです。
徳大寺 ホント、この手の旧いクルマは暑いのが苦手なんだよな。特に3L以上のモデルはエンジンからの熱気が凄いし、最近のクルマほど空気の流れが良くないからクーラーの利きも悪い。そう考えるとこういったエアコン回りが頼もしくなっているのはうれしい点だな。
松本 そうですよね。そういえば、巨匠が長い間乗っていたジャガーマークⅡもクーラーからエアコンにコンバートした理想型でしたね。
徳大寺 あれな。エンジンミッションとエアコンや冷却系に至るまで現代の道路事情に合わせて改良してやり直したんだけど、やっぱり旧いクルマだからエアコンは利かないんだよ。
松本 いくら現代版に変更しても基本が大切なんでしょうね。
徳大寺 そういうことだな。マイナーチェンジではリアのデザインが変わった印象が強かったが、信頼性も増しているということだ。たしか、ATも変わっただろ? 初めの頃はボーグワーナーの古いのが付いてたはずだよ。ビッグトルク対応型の3速でね。ZF社製の電子制御4速ATになってずいぶん良くなったんだ。
松本 その通りですね。そのあたりの熟成された部分も含めて希少な車両だと思います。
徳大寺 クルマは乗ってなんぼだからさぁ。乗れるクルマを所有しないともったいないだろう。動かして初めてカッコ良さが生まれるんじゃないか。その意味でもこの後期型のXJSはいいよ。エアコンが日本製だけで利くな! って思う。何度もエライ目にあってるからね。
松本 デザインも相当個性的ですしね。今の時代にはなんだか新鮮に感じますよ。
徳大寺 そうだね。初期型よりも柔らかい印象なんだけど内装は英国車らしい高級感があっていいよ。ツマミ類も繊細だし。ジャーマンにはわからないだろ! と言わんばかりのスノッブな感じもいいな。
松本 デザインは元々はC、D、Eタイプでおなじみのマルコム・セイヤーですからね。航空力学を取り込んでいますよ。特にリア回りのデザインにはこだわりを感じます。セイヤーが描いた当時のスケッチを見るとエンジニアですから雰囲気的なレンダリングではなくしっかりと描かれているんです。その後急死してしまい、トライアンフから来たデザイナー、タグ・ソープによって継承され完全に仕上げられたんです。
徳大寺 マルコム・セイヤーは航空機エンジンで有名なブリストル社にいた人間だからね。発想が違うんだろうな。だから個性的なモデルを作ることができたんだ。ディスクブレーキだってジャガーが最初だからね。飛行機屋さんのセイヤーのアイデアが入っていたんだろ。歴史的な人物が手がけたクルマに乗る喜びを得るのだから高くないと思うな。
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