「きっと、あなたのココロが走り出す。」“Your Heart Will Race.”そんなテーマをもつ東京モーターショー2015の見どころとして各メーカーのコンセプトカーたちは外せない。コンセプトカーは今すぐには手に入らないけれど、今買える車たちだって、その時代時代の人々が考えた素敵な未来を具現化するために生まれてきたのだ。今回は最新のコンセプトカーがもつテーマに通ずる「今、手に入る車たち」をセレクトした。

▲オンもオフもあらゆるシーンで映えるコンパクトクロスオーバー ▲オンもオフもあらゆるシーンで映えるコンパクトクロスオーバー

コンパクトクロスオーバーのスズキ流新解釈

スズキからワールドプレミア(世界初公開)となるのが、「小型車の新ジャンルに挑戦」したという触れ込みのIGNIS(イグニス)。ジュネーブモーターショー2015で公開されたコンセプトカー「iM-4」の市販版であり、オンにもオフにも使えるコンパクトクロスオーバーモデルだ。

ボディ寸法は全長3700mm×全幅1660mm×全高1595mm。そのサイズ感は同社のスイフトと比べて若干長く&高く、しかし幅は若干狭いといったニュアンス。搭載エンジンは1.2リッター直列4気筒の「デュアルジェット」で、そこに簡易型のハイブリッドシステムが組み合わされる。トランスミッションはCVTのみ、駆動方式はFFまたは4WDだ。

高めのアイポイントと大きめのロードクリアランスが特徴で、日常的なシーンで便利に使えるだけでなく、週末になればアウトドア活動なども楽しむことができ、さらに雪道や荒れた道でも安心して走ることができるというのがイグニスの基本コンセプト。そのスタイリングも現行アルトにやや通じるスタイリッシュなもので、全体的に「好感度および期待度大!」と評したい一台である。

「オン/オフ両刀のクロスオーバー」というならハスラーも?

そしてこういったイグニスのスペックを聞いた際になんとなく思うのは、「これってもしかして、路線としては同じスズキのハスラーに少しだけ似てるかも?」ということだ。

繰り返しになるが、イグニスの基本的な立ち位置は「オンにもオフにも使えるスタイリッシュなコンパクトクロスオーバーである」ということ。そしてそれは(ほぼ)そのまま、ハスラーという車の基本的な美点でもあるのだ。つまりハスラーはオンロードでもそれなり以上の走行性能と快適性を発揮し、そして15インチの大径タイヤと最低地上高の高さにより、ラフロードでも結構な走破性を披露する車。そしてご存じのとおり、とってもスタイリッシュな一台でもある。

……ということは、もちろんイグニスの登場自体は大歓迎したいわけだが、「イグニスの本格登場まではハスラーに乗っておく」という考え方もできなくはない。

▲14年1月に登場したスズキ ハスラー。コンセプトは「アクティブなライフスタイルに似合う軽クロスオーバー」で、軽ワゴンの広い室内空間と、個性的なSUVテイストのデザイン、そして大径15インチタイヤなどによる高いラフロード走破性を兼ね備えている ▲14年1月に登場したスズキ ハスラー。コンセプトは「アクティブなライフスタイルに似合う軽クロスオーバー」で、軽ワゴンの広い室内空間と、個性的なSUVテイストのデザイン、そして大径15インチタイヤなどによる高いラフロード走破性を兼ね備えている
▲グレードにもよるが、このようにポップなイメージのインテリアもハスラーの魅力の一つ ▲グレードにもよるが、このようにポップなイメージのインテリアもハスラーの魅力の一つ

「即納」というのも捨てがたい魅力

もちろん「1.2Lエンジンを積む普通車」と「660ccエンジン+軽規格の範囲内に収まるボディサイズ」という両者の違いはあり、その違いはけっこう果てしなくデカい。それゆえ無理やりハスラーを勧めるつもりは毛頭ない。

だが、もしもあなたが「イグニス的なるもの」にかなり興味を持っている人で、なおかつ「まぁオレは(ワタシは)軽でもいいんだよね」と思っている人であるならば、さしあたって今「ハスラーの中古車」にも注目してみる価値はあるはずだ。

イグニスの価格は現在のところ未定だが、おそらくは現行スイフトの132万~184万円という新車価格は上回ってくるはず。それに対してハスラーの中古車は平均価格が131.6万円で(10月19日現在)、ボリュームゾーンは100万~150万円付近。個別に見ると、一番人気である「Gターボ」の走行数千kmからせいぜい1万km台の物件が、車両価格おおむね120万円前後で狙える状態。……中古車ゆえの「即納」という美点と併せ、イグニスにもさほど劣らぬ魅力が中古のハスラーにはあると思うのだが、いかがだろうか。

text/伊達軍曹
photo/スズキ、ゆさお