▲クラスを超えたビジュアルとクオリティが魅力の現行フォルクスワーゲン ポロ ▲クラスを超えたビジュアルとクオリティが魅力の現行フォルクスワーゲン ポロ

動的性能だけでなく「見た目性能」「印象性能」も重要です

輸入中古車評論家を自称するわたしだが、自慢じゃないがカネはない。いや日々の食事に困窮するほど貧乏しているわけではないが、スーパーでお肉を買うときは極力「特売品」を買い求め、それをジップロックで小分けに冷凍しながらニッポンの中流ど真ん中を生きている。

そんなわけだからして、輸入車といっても普段乗っているのはせいぜい100万~150万円程度のものだ。実際、現在の自家用車も車両138万円也で購入した初代ルノー カングーである。そのあたりの予算帯でコスパに優れるステキな輸入中古車を探すのが趣味であり、また使命であるとも思っているのだ。使命つっても、誰に頼まれたわけでもないんですが。

さて。「コスパ」とはいわゆるコストパフォーマンスのことであり、正確な英語で言うならcost-benefit performanceあるいはcost-effectiveness、要するに「費用対効果」のことだ。で、わたくしが考えるに、世の中に星の数ほどある中古車の中で最もコスパに優れるひとつがフォルクスワーゲンの現行ポロ(の前期型)である。以下、理由をご説明しよう。

▲2009年10月に最初期グレードが登場したフォルクスワーゲンのコンパクトレンジ。翌2010年6月には1.2L SOHCターボのTSIエンジン搭載グレードが上陸。トランスミッションは7速DSGを採用している ▲2009年10月に最初期グレードが登場したフォルクスワーゲンのコンパクトレンジ。翌2010年6月には1.2L SOHCターボのTSIエンジン搭載グレードが上陸。トランスミッションは7速DSGを採用している

現行ポロ前期型の偉大さは、その「わかりやすさ」にある。

例えば、現行ポロと似たような「100万円以下」という予算で似たような年式(10年式~)が狙える現行シトロエン C3は、当然ながらステキな車であり、いわゆる車好きにはその良さを秒殺で理解してもらえる。しかし一般の人には「あの人は三菱 ミラージュを買った」と誤解されたり、あるいは「知らんけど、とりあえずちっちゃい何かを買った」という悲しい無理解を示されるおそれがある。せっかくのC3購入が、かなり残念な結果になってしまいかねないのである。

「周囲の評価なんてどうでもいいよ!」という意見もあるだろう。無論わたくしも1人の車好きとして、その意見に半分は賛成だ。しかし人間というのはどうしたって社会的な生き物であり、周囲の目や評価と完全に無縁で生きることなどできないのだ。それゆえ、動的性能だけでなく「見た目性能」「印象性能」というのも、車の「パフォーマンス」を検討するうえではかなり重要なモノサシのひとつになると確信している。

そして現行ポロであれば、とりあえずの「見た目性能」「印象性能」はほぼ完璧だ。車に詳しい人からは「うん、悪くない選択ですね」と評されるのは当然として、三菱 ミラージュとシトロエン C3の見分けがつかないタイプの人からも「あ、ワーゲン。ステキですね!」と賞賛される。なぜならば、シトロエンのダブルシェブロンを知らない人でも、フォルクスワーゲンの「VW」というエンブレムだけは絶対に知っているからだ。

▲これがどこの何という車種かまったく知らない人でも、フロントグリルに輝く「VW」エンブレムのことだけは知っているはず。「中の上的ステキな生活」の代名詞ともいえるエンブレムだ ▲これがどこの何という車種かまったく知らない人でも、フロントグリルに輝く「VW」エンブレムのことだけは知っているはず。「中の上的ステキな生活」の代名詞ともいえるエンブレムだ

しかしここで当然のように湧き上がるのが、「じゃあ同じ100万円以下とかで買える旧型BMW 1シリーズじゃダメなのか?」「旧型アウディ A3スポーツバックの方がイメージは上じゃないか?」「ベンツの旧型Bクラスはどうなんだ?」「そもそも同門の旧型ゴルフでいいんじゃないか?」という疑問だ。

それら疑問はすべてもっともだが、やはりそれでも高コスパなのは現行ポロだ。なぜならば、それらはご指摘のとおり車両100万円以下という手頃な予算で探せるのは確かだが、元々がそれなりに高価な車であったため、比較的安価だったポロと同じ値段で狙える中古車はほぼすべて「やや古い」「やや走行距離が多い」という結果になってしまうからだ。

古いことも走行距離が多いことも、そして旧型であることも、それ自体は決して悪いことではない。しかしコスパという観点で物事を見るならば、やはり軍配は「現行モデルで、走行距離も短めな個体が多くて、誰もが知ってる有力ブランドで、それでいて安価で」という現行フォルクスワーゲン ポロに上がるのである。

▲ちなみに現行ポロと旧型ゴルフが登場した2009年頃から、フォルクスワーゲン各車の内装質感はかなり向上した。そのあたりも、この車が高コスパな理由のひとつだ ▲ちなみに現行ポロと旧型ゴルフが登場した2009年頃から、フォルクスワーゲン各車の内装質感はかなり向上した。そのあたりも、この車が高コスパな理由のひとつだ

以上が、わたくしが高コスパ案件として現行フォルクスワーゲン ポロ(の前期型)をオススメする理由だ。しかしここまで書いてきて、そういえば「見た目性能」や「印象性能」ではないフツーの性能(動力性能とか)について一切触れてないことに気がついた。

……失礼いたしました。えー現行フォルクスワーゲン ポロの前期型は、大変素晴らしい車であります。同門のゴルフと比べればコーナリング時の限界も、高速道路をかなりのペースで飛ばした際の安定感もやや劣るでしょうが、それはセグメントも元の値段も違いますから致し方ないことです。

ていうかそもそも峠道も高速道路も、そこまで飛ばす必要はないのではないでしょうか? ここで「YES、そうだね」と答える人が適切なペースで快走する限りにおいては、現行ポロ前期型は同門のゴルフにも、そして最新のテクノロジーを駆使した現行マツダ デミオにも決して負けない、ステキでシュアなコンパクトカーです。サイズの小ささが問題にならないのであれば、ぜひ100万円以下で高コスパ物件を探してみてください。

▲ここまで力説したのは「TSIエンジン搭載の現行ポロ」について。最初期の「1.4コンフォートライン」も決して悪い車ではないが、やはりオススメはTSI化されてからのモデルだ ▲ここまで力説したのは「TSIエンジン搭載の現行ポロ」について。最初期の「1.4コンフォートライン」も決して悪い車ではないが、やはりオススメはTSI化されてからのモデルだ
text/伊達軍曹