▲ホンダS660が人気ですが、今回ご紹介するのはホンダ S2000です。なお、写真は2.0 タイプVです ▲ホンダS660が人気ですが、今回ご紹介するのはホンダ S2000です。なお、写真は2.0 タイプVです

S660が気になる方にオススメしたいS2000という名車

ホンダの軽オープン2シーター、S660が人気です。しかし、なんだかんだで新車時価格は総額で200万円オーバー。「軽自動車で維持費が安く、コンパクトなオープンカーでキビキビ楽しい」という売れる理由はよくわかります。でも、新車時価格は200万円近辺なんです……。

そうなると、お金にシビア(ケチとも言いますが……)な筆者は、同予算なら、ホンダ S2000を狙いたいです。S2000はホンダ創立50周年記念車という位置づけで1998年に発表され、1999年からデリバリーが開始されました。S800というホンダの名車投入から数えて、実に29年ぶりとなる2シーターFRオープンスポーツでした。

▲見る角度によって、F1マシンのノーズを彷彿とさせるフロントノーズが特徴的です ▲見る角度によって、F1マシンのノーズを彷彿とさせるフロントノーズが特徴的です

「MTしか設定がない」「2名乗車しかできない」「荷室は最低限の容量」と車購入を検討するうえで“ハンデ”になりうる要素はあります。しかし、オープン2シーターの購入を検討なさっている方ならノープロブレム! 非常に魅力的な車です。

オープンカーとは思えない文句なしのボディ剛性、排気量1Lあたり125ps(F20C型)という高性能ぶり、日常では無意味かもしれませんが9000rpmまで回るエンジン(同じくF20C型)、手首だけで操作できてしまうほどショートストロークなMTシフト、ステアリング操作に極めて忠実に反応する様はまるでゴーカート、と“走り”をたっぷり楽しめます。新車時価格の338万円~がバーゲンプライスと思えるほどの凄い車なんです。

▲トランクは大人2名分の週末旅行くらいならば、十分に対応できる容量です ▲トランクは大人2名分の週末旅行くらいならば、十分に対応できる容量です
▲レースカーのようなシンプルなインパネまわりが、走るマシンであることを感じさせてくれます ▲レースカーのようなシンプルなインパネまわりが、走るマシンであることを感じさせてくれます
▲シートはホールド性抜群です! トランスミッションが収まるセンタートンネルは図太く、骨太な雰囲気を演出しています ▲シートはホールド性抜群です! トランスミッションが収まるセンタートンネルは図太く、骨太な雰囲気を演出しています

中古車ならではの「安さ」という魅力には乏しいけれど……

S2000のデビューは、ポルシェ ボクスターとアウディ TTロードスターの発売と同時期でしたので、「S2000を買う予算に100万円ちょっと足すだけで高級輸入車が……」と悩んだ方もたくさんいらっしゃったことと存じます。それが今では同年式で似たような走行距離のものだと、S2000の方が高値で流通しています。

現在、カーセンサーに掲載されているS2000の平均車両価格は約190万円(2015年7月30日現在)。平均走行距離は約6万6000kmとなっています。最も新しいもので6年落ち、最も古いもので16年落ちです。高年式で走行距離の少ない物件の一部は、新車時価格と同等、もしくは若干のプレミアムで販売されています。価格面においては、中古車としてお買い得な存在とは呼べないかもしれません。

ただ、S2000は今以上に値上がりする可能性を十分に秘めています。最近、ネオクラシックと呼ばれるスペシャリティ(特にスポーツカー)は値上がりする傾向にあります。さらに流通台数は3ヵ月前が240台弱だったのに対して原稿執筆時点では193台と徐々に減少しています。需給のバランスからして、中古車相場が値上がりする土壌が整いつつあるんです。そういう意味では、今が「買いの最良のタイミング」となる可能性があります。

そして、もし購入を考えているのであれば物件の年式にも注目ください。約10年生産された息の長いモデルだけあり、それぞれの時期の特徴があります。大まかにいうと、前期型(1999年~)はナイフのようにキレのあるハンドリングを限界性能近辺で見せつけてくれます。中期型(2003年~)は足回りにしなやかさが与えられ、キレは若干薄まっています。後期型(2005年~)は排気量が1割増しの2.2Lになり低中速域からのトルク感に厚みが増しています。

それぞれに個性がありますが、どれを選んでも人馬一体感に満ち溢れています。そして、もう「最新」とは呼べないにも関わらず、何の不満もない走りを披露してくれます。どれを選ぶかは、財布の許容額次第でしょう。でもS660を買う予算があれば、大概のものは狙えます。ぜひS2000というかつての名車もチェックしてみてください。

text/古賀貴司(自動車王国)