▲全長5800mm、全幅2030mmはGM史上最大級のクーペボディで唯我独尊の世界です ▲全長5800mm、全幅2030mmはGM史上最大級のクーペボディで唯我独尊の世界です

“ミニバスより短いんでしょ?”と思える方にはオススメ!

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2014年12月10日に発見したのは「キャデラック クーペ・デ・ビル」です。“デ・ビル”なのか“ドゥ・ビル”なのかは意見の分かれるところですがカタカナ読みをするか、フランス語読みをするか、の違いです。ちなみにDe Villeはフランス語で「街の」という意味で、Coupe De Villeはつまり「街のクーペ」というわけです。

当該中古車は4代目クーペ・デ・ビルで、コルベットC2を手掛けたビル・ミッチェル氏がデザイン。この頃のGMにおける“スター”デザイナーです。「威風堂々」という表現さえも超越した巨漢ぶりは、クーペ史上二度と登場することがないサイズとさえ言えるでしょう。全長5800mm、全幅2030mm、全高1410mmって……、凄いプロポーションです。

“そんなデカい車運転できるかぁ!”と仰る方がいらっしゃって当然でしょうし、万人にオススメできるわけではありません。でも、“ミニバスよりも短いんだ”と前向きに捉えられる方にはぜひオススメしたい1台です。

7.7L(8Lもラインアップされていました!)V8エンジンは公称最高出力385ps、最大トルク495Nmで、2t強あるクーペ・デ・ビルをぐいぐい走らせます。エンジンは“シュンシュン”回る感じではなく“ドロドロ”図太いトルクにモノを言わせて加速する雰囲気が古き良きアメリカン。たっぷり空気を吸って、たっぷり燃料を燃やして、パワフルです。

▲シートはベンチシートで全幅は2030mmですから、広いです。当時のアメ車に独特なメッキとウッドが奢られていて、“メカニカル”な雰囲気も漂います ▲シートはベンチシートで全幅は2030mmですから、広いです。当時のアメ車に独特なメッキとウッドが奢られていて、“メカニカル”な雰囲気も漂います

当該中古車、室内外の写真を見ると驚くばかりの状態です。走行3.5万kmとはいえ42年前の車です。歴代オーナーに大事に乗られてきたんでしょうねぇ。と同時に、1972年の車ながらパワーウインドウ、エアコン、ステレオは標準装備されていたことにも驚かされます。さすがGMが誇る最高級ブランド、キャデラックですね。

車両本体価格348万円が安いのか、高いのかは当然のことながら人それぞれの懐事情によります。ただ、ひとつ確実に言えることは、クーペ・デ・ビル、どんな348万円の中古車よりも抜きんでた存在感があることです。たとえ2000万円クラスの現行高級クーペと並んでも、クーペ・デ・ビルの方が目立つ存在であること間違いありません(笑)。

▲フロントノーズもリアもとにかく長さが目立ちます。運転席からの光景はロールスロイスみたいです。クーペですがリアシートもとてつもなく広いです ▲フロントノーズもリアもとにかく長さが目立ちます。運転席からの光景はロールスロイスみたいです。クーペですがリアシートもとてつもなく広いです

昨今、“グローバリゼーション”の名のもとに車の個性が薄れています。出身地を問わずカテゴリーごとにサイズ、スペック、味付けがどんどん似てきつつあります。そういう意味ではほかの国の自動車の存在をまったく無視した、と言ってもいいクーペ・デ・ビルは唯我独尊を突っ走る存在です。ボディサイズしかり、エンジン排気量しかり、無駄の美学がつまった車です。

クーペ・デ・ビルはアメリカが打ち出したステイタスシンボルであり、文化遺産とも言える車です。欲しくても、欲しくなくても、とりあえず写真をご覧になってみてください!

■本体価格(税込):348.0万円 ■支払総額(税込):376万円
■走行距離:3.5万km ■年式:1972(S47)
■車検:2017(H29)年1月 ■整備:付 ■保証:付
■地域:長野

text/古賀貴司(自動車王国)