▲昔からのキャデ好きにはもちろん、車好きなのに新車は嫌いという大人に。ご近所がドイツ車ばかりならなおさら、500万円強で試す価値あります。ただガラケー派には向きません。通勤時の車がリスニングルームという人にも◎、平日から週末まで人生が華やぎ&輝きます ▲昔からのキャデ好きにはもちろん、車好きなのに新車は嫌いという大人に。ご近所がドイツ車ばかりならなおさら、500万円強で試す価値あります。ただガラケー派には向きません。通勤時の車がリスニングルームという人にも◎、平日から週末まで人生が華やぎ&輝きます

乗るほどに染み入る極上アメリカン・スモール

実車を前にして、キレイな内外装色だけど、キャデラックにしては“華”が足りないかな……と一瞬、感じた。だがフロアマットに足を乗せると今ドキ珍しいフンワリ感。シートに腰を下ろせばセミアニリンレザーの吸いつくような肌触り。サペリウッドのパネルやアルミのパーツ、あるいはカーボンなど、素材の見た目「何とか風」は一切ナシ。BMWの4シリーズやアウディ A5を仮想敵とするATSクーペの静的クオリティは、触れるほどに好ましい。

ちなみにATSはセダンもクーペも今回、クレスト型の新ロゴを採用した。

2Lターボは従来の353Nmから400Nmとなり、1580kgのボディを軽快に操れる。それでいて、速度を上げるほどに路面に吸いつくようなスタビリティには舌を巻いた。トルクの出方、ステアリングフィール、旋回の感覚、いずれもジワリと上質なFR独特のタメがある。セダンより前後トレッドともややワイドだが、ステアリングがクイック過ぎるといった過剰演出もない。

さらなるグッド・サプライズはボーズの12スピーカー・システム(セダンは10個)。ノイズキャンセレーション機能のおかげで走行中の静粛性も高レベルなのだが、音像位置を細かに調整できるので、まるでスティービー・ワンダーが助手席で歌っているような錯覚すら楽しめた。もっと高価でスピーカー数も多いオーディオも市場にあるにはあるが、標準装備では最強レベルだろう。

とどのつまり、オーダーメイドであれこれできる高級車は今や少なくないが、ATSクーぺはレディ・メイドとして最良の到達点のひとつといえるだろう。このアメリカンな回答、お好きな人にぜひ!

▲セダンとホイールベースは同じだが、前後トレッドをより幅広くオーバーハングを短くし力強いデザインに ▲セダンとホイールベースは同じだが、前後トレッドをより幅広くオーバーハングを短くし力強いデザインに
▲自動ブレーキや全車速追従クルコンといったセーフティデバイスは上位機種のCTSと同様 ▲自動ブレーキや全車速追従クルコンといったセーフティデバイスは上位機種のCTSと同様
▲コードレスでスマホ充電OKなトレイと、ブルートゥース経由でスマホの主要機能をエミュレートできるCUEも健在 ▲コードレスでスマホ充電OKなトレイと、ブルートゥース経由でスマホの主要機能をエミュレートできるCUEも健在

【SPECIFICATIONS】
■グレード:PREMIUM ■乗車定員:4名
■エンジン種類:直4DOHCターボ ■総排気量:1998cc
■最高出力:276/5500[ps/rpm]
■最大トルク:400/3000-4600[N・m/rpm]
■駆動方式:FR ■トランスミッション:6AT
■全長×全幅×全高:4680×1845×1400(mm) ■ホイールベース:2775mm
■車両重量:1580kg
■車両本体価格:509万円(税込)

text/南陽一浩 photo/神村聖