▲約半年間、車のない生活をしていた筆者が先日契約した現行ルノー メガーヌRSの限定車「モナコGP」 ▲約半年間、車のない生活をしていた筆者が先日契約した現行ルノー メガーヌRSの限定車「モナコGP」

車にこだわりがないのなら、公共交通機関でもいいですが……

今年5月に94年式ランチア デルタHFインテグラーレを売却して以来、約半年もの間「自家用車のない生活」をしていた不肖筆者だが、過日、久方ぶりの自家用車を購入した。11年式ルノーメガーヌ ルノースポール モナコGPという、やたら長い名前のフランス車である。

ここはわたしの自家用車についてクダクダと解説するコーナーではないためごく簡潔に説明すると、メガーヌRSモナコGPというのは、ニュルブルクリンクのタイム的には「世界最速FF車」となるフレンチ・スポーツハッチバックの、ややラグジュアリー方向に振った国内30台限定のレア物だ。

▲ルノー メガーヌRSモナコGPの内装。エンジンは現行メガーヌRS前期型と同じだが、30台限定のモナコGPはコンフォート志向のシャシーで、シートもハードなフルバケットではなく通常のレザーシートとなる ▲ルノー メガーヌRSモナコGPの内装。エンジンは現行メガーヌRS前期型と同じだが、30台限定のモナコGPはコンフォート志向のシャシーで、シートもハードなフルバケットではなく通常のレザーシートとなる

モナコGPについてはさておき、問題は「輸入中古車評論家」を自称する筆者がなぜ半年もの間、商売道具の一種である自家用車を買わずに過ごしてきたのか? ということだ。

答えは簡単で、「自家用車がない状態」というのがあまりにも心地よく、「この心地よい状態を捨ててでも買いたい!」と思える車と出会わなかったからだ。

東京23区に住む者限定の話であることは重々承知だが、とにかく「電車生活」というやつは素晴らしく心地良い。なにせ、命と愛の次に大切なモノと言っても過言ではない「お金」がウルトラ節約できるのだから! 筆者が住む界隈の月極駐車場はひと月3万円というのが相場なのだが、デルタを売却して以降その負担が丸ごとなくなり、そして付随するガソリン代や保険料および税金、そしてエンジンオイル代や修理代などがゼロになったものだから、我が家のブタさん貯金箱はこの半年で結構な満タンとなった。些少ではあっても「お金がある」というのは精神衛生上大変よろしいことである。

そして第二に飲酒問題がある。筆者は恥ずかしながら酒飲みなのだが、当然、車で出かけた際はひと口たりとも飲まない。…しかしそれは酒飲みにとっては正直結構なストレスで、特に海辺の町などでやたらとおいしい海産物を食べながらウーロン茶などをすすり飲んでいる際、ストレスは最高潮に達する(だからといって飲まないですけどね)。しかし電車生活であれば迷わずGO! で、おいしいモノを美味しいお酒とともにいただき、帰りの電車で爆睡する。日本の治安の良さにも感謝である。

その他、電車やバスなどの公共交通機関は都内では運行本数も十分多く、そして時間的にも超正確であるゆえ待ち合わせなどに遅刻することもない。深夜にそれらの運行がなくなってしまっても、都内から都内の移動であればタクシー代など知れたものだ。

つまり、大都市に住む者にとって自家用車とは必要か不要かといえば、極論としてはまったくもって不要なのだ。「なくても何とかなる」どころか、「ないほうがむしろ便利」なのである。そのことを強く実感した、わたくしのこの半年間であった。

そりゃもちろん、たまには「どう考えてもここは自家用車の出番だろう」という場面はある。大型の何かを買いに行く際や、旅行などに出かける際だ。しかし、人間というのは基本的に毎日大型の何かを買ったり旅行に出かけたりはしないものなので、そういったレアケースにはレンタカーを借りればよいだけの話である。それもまた、毎月固定費としてかかる駐車場代に比べれば安いものだ。

「移動のための車」は一切不要。そう見切った瞬間、わたしにとって車とは「純粋な歓びの対象」となった。

乗車定員? ハンドル位置? 燃費? …そんなモノは完全にどうでもいい。大切なのは、わざわざ大切なお金を失ってでも、酒を飲めない不便さを受け入れてでも手に入れたい真の歓びが、その車にあるかどうかだ。それがない、または少ない車を買うぐらいなら俺は歩く! その方が100倍ステキだ! …と、思うに至ったのだ。

その結果として選んだのが、自分としてはやや予算オーバーとなった冒頭の世界最速FF車であり、これをお読みのあなたにも、「もしも公共交通機関が発達したエリアにお住まいであるならば、純粋な歓びの対象となる車だけを買うべし! そうでなければ電車かバス、または歩きか自転車で!」とオススメしたいのだ。

とはいえ「純粋な歓びの対象となる車」というのも漠然としており、100人いれば100通りの解釈が成り立ってしまう言葉だ。まぁ、それでも良いと個人的には思うが、一応ビシッと具体的な何かをオススメしよう。

MTの2シーター輸入車はどうですか?

▲例えばポルシェボクスターも旧型であれば総額200万円台後半から。買おうと思えば買える値段なのだ ▲例えばポルシェボクスターも旧型であれば総額200万円台後半から。買おうと思えば買える値段なのだ

大衆的に考えると「ウチは4人家族だから…」とか「妻も運転するから」とか「荷物が…」となってしまい、結果として多くの場合、死ぬまで買わないまま終わる2シーターMTの輸入車。でも、もうおわかりなはず。そんなことは考えなくたっていいんですよ。家族でどこかへ行くなら電車で行けばいいし、どうしても必要ならレンタカー借りればいいんですから! そんなことよりも、せっかく車が好きなのに2シーターMT車の快感を知らないまま死んでいくことのほうが、よっぽど不幸ですよ!

ということで、都内や大都市中心部にお住まいの方限定の話になってしまい大変恐縮だが、とにかく今回のわたくしからのオススメは「MTの2シーター輸入車」だ。

text/伊達軍曹