【オンリーワンを探せ】世界最長の生産ラインで生まれたキャデラック アランテ
2014/02/10
原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車を紹介するこの企画。今回、2014年2月4日に発見したのは「キャデラック アランテ」です。デザインはイタリアのカロッツェリア(自動車製造工房)「ピニンファリーナ」が請け負い、生産も半分は行っていました。“世界最長の生産ライン”というのが売り文句で、たしかに画期的な手法で作られていました。
イタリアから空輸されてデトロイトで最終組み立て!
実は、アランテはイタリア・トリノにあるピニンファリーナの工場でボディや内装を手掛け、半完成状態でアメリカ・デトロイトまで空輸して現地でサスペンションやエンジンなどを組み付けていたんです。アランテのボディ運搬専用のジャンボジェットをアリタリアが1機、ルフトハンザが2機就航し、“エアブリッジ”と呼ばれていました。といっても、1機が運べるのはたった56台。アメリカのスケール、デカ過ぎでしょう(笑)。
量産車としては初めての試みだったそうですが、後に続いた事例を聞いたことがありません。折しも1987年からの取り組みで、今のように航空運賃の競争は激しくなかった時代です。個人的には、その逸話だけで“買い”な車に思えます。
当時のアメリカの高級パーソナル・コンバーチブル市場では、M・ベンツ SLクラスやポルシェ 911カブリオレなど欧州勢が独占していました。そのため、アランテでこのセグメントに食い込もうとしたわけです。そこで活用したのがピニンファリーナというブランド力なのでしょうが、イタリアで半分組み立ててアメリカに送り返す合理性はいまだ謎です(笑)。
そんなアランテですが、販売的には決して“成功”とは言えないでしょう。なにせ7年間で生産されたのは2万1000台で、年間3000台しか売れていませんでしたから。
さて、当該車両は1993年式の最終モデルなので、搭載エンジンは4.6L V8で最高出力295psです。デビュー時は4L V8エンジンで最高出力130psでしたから、物凄いパワーアップです。ラグジュアリー・パーソナルカーとして生まれたアランテですが、人馬一体感のあるオープンカーではありません。ガッチリしたボディに、ソフトな足回り、意味もなくパワフルなエンジン、とチグハグながらも強烈な個性を感じさせてくれる車です。
古き良きアメ車を彷彿とさせるもので、昨今では味わえるものではなくなりつつあります。いずれアメリカに送り返されそうな車(アメリカでは旧車の輸入が最近の流行り)ですから、買えるうちに狙っておきたい1台です。
Text/古賀貴司(自動車王国)
日刊カーセンサーの厳選情報をSNSで受け取る
あわせて読みたい
- 【試乗】新型 フォルクスワーゲン T-Cross│「TさいSUV」はハッチバックよりもどこが欲張りか? 実際に乗って考えた
- 今はもう中古車でしか味わえない高純度FR、国産を代表するミドルセダンのレクサス GS【Back to Sedan】
- 元教習指導員オススメ! 総額100万円以内で買える“脱ペーパードライバー”にぴったりなモデル【SUV編】
- 【試乗】新型 アウディ A1 スポーツバック│エントリークラスの常識を覆す数々の装備は、ハッチバックの可能性を大きなものに!
- 【名車への道】’11 アバルト 695 トリブート・フェラーリ
- 【試乗】新型 BMW 2シリーズ グランクーペ│前輪駆動で室内空間向上も、今までとは一味ちがう鋭さの増した駆け抜ける歓びを備えた1台!
- 【試乗】プジョー 新型208│コンパクトカーのポテンシャルを最大限に引き出した新時代の開拓車!
- 4台の愛車と趣味部屋を内包する広大なガレージのある家【EDGE HOUSE】
- 【名車への道】‘09 アルファ ロメオ アルファブレラ
- 【試乗】DSオートモビル 新型 DS3 E-TENSE│歴代DSの上質さとEVの静寂性を、パリデザインでおしゃれにまとめたBセグメントSUV!