アルファ ロメオ ブレラ

■これから価値が上がっていくだろうネオクラシックカーの魅力に迫るカーセンサーEDGEの企画【名車への道】
クラシックカー予備軍モデルたちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく!

松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。

ジウジアーロがデザインしピニンファリーナが製造した。そのスポーツカーに手が届く

松本さん、名車予備軍を探すこの企画ですが、2000年以降のモデルだとやっぱり違和感あります? やっぱりそこそこ年代をさかのぼらないと厳しいんですかね?

松本 うーん、確かにね。僕のイメージだと1950年代からオイルショックまでのイタリア車は心に残るモデルが多かったかなぁ。特にアルファ ロメオ。レーシングカーで使った技術を量産車にフィードバックしているのに、なんとか購入できる金額だったし。

——デザイン的にも奇抜ですしね。

松本 そうだね。デザインもアルファ ロメオは群を抜いていたよね。50年代のフランコ・スカリオーネの傑作ジュリエッタスプリント。60年代はジウジアーロのジュリアスプリントGT。アルファ ロメオって本当にクーペが得意で、独特なデザイン思想で素晴らしいモデルを作ってきたからね。

——じゃあ今回の車もピッタリです。

松本 前から探してたアルファGTかな?

——いいえ、それはまた次の機会に。今回はブレラにしました。ボクの個人的な好みで赤以外のブルーにしています。

松本 それはいいじゃない。個人的にはGTやブレラはとても好きだし、現在のポジションがちょっと微妙なところもいいよね。

 

アルファ ロメオ ブレラ
アルファ ロメオ ブレラ

——そうなんですよ。人気がないわけじゃないけど評価が高いわけでもない。そんなモデルにスポットライトを当てるという意味でもこの企画にピッタリですね。ところで、ブレラってなんの意味なんですか?

松本 ブレラっていうのはミラノにある通りの名前だよ。「Via Brera」っていう通りで、近くには美術館や植物園、歩いていくとあのスカラ座もあるんだよ。

——それは上品な名前ですね。

松本 文化的な要素が詰まった通りで、ここを訪れた人なら「ブレラ」っていう名前のもつ響きや雰囲気から、どうしてアルファ ロメオがこの名前をこのクーペに与えたのかが分かると思うな。本当に素敵な街並みなんだよ。

 

アルファ ロメオ ブレラ

——あ、このブルーの個体が今回の撮影車両です。やっぱりどこのブランドとも似てない、独自のデザインって感じですよね。そういえば、確かコンセプトカーがありましたよね?

松本 そうだね。ブレラは2002年のジュネーブショーにコンセプトカーとして登場したんだよ。とてもインパクトがあったね。いよいよ大型のグランツーリスモが出てくるかもしれないなんて期待したアルファファンも多かったはずだよ。ブレラのコンセプトカーはマセラティ クーペのプラットフォームを利用して作り上げたんだ。ベルリネッタのデザインはかのジウジアーロが率いるイタルデザインが担当だね。

——ベースになったというマセラティ 3200GTもジウジアーロの作品ですよね?

松本 そのとおり。コンセプトカーはスチール製モノコックプラットフォームとカーボンファイバーで作られたボディが装着されていたんだよ。カーボンファイバーらしさを強調しない作りはエレガントで素敵だと思ったよ。フロントの長いノーズに負けない2ドアを強調したドアは、回転しながら跳ね上がった開き方が特徴的だったんだ。このときのブレラは非常に高い評価を受けて、その後に量産モデルになっていったんだよ。

——じゃあ、ショーカーがそのまま登場したというわけなんですね。

松本 そのままではないけど、かなり似ているよ。コンセプトカーって量産モデルになると大きく変わるケースが多いけど、ブレラはデザインコンセプトをほぼそのまま踏襲していたんだ。

——やっぱりこのデザイン、素晴らしいなぁ。

松本 本当にそうだね。特徴的なヘッドライトと平らな部分を極限まで小さくしたフェンダーアーチ。このデザイン処理は昔からあるんだけど、それを上手に使ってボディと一体感があるフェンダーにしてあるよね。これはこれから先使われる手法のひとつになると思うよ。すごく先進的ですこぶるカッコイイ。高級車の手法を手の届く量産モデルで実現しているんだ。

——メカニズム的にはどうなんですか?

松本 2005年に登場したブレラはGMとの共同で製造された横置きエンジン用のプラットフォームを利用して作られているんだ。コンセプトモデルと趣が唯一違った点がそこだね。コンセプトのブレラは後輪付近のフォルムをオーバーフェンダー風に盛り上げてFR の力強さをフェンダーに吹き込んだんだ。ブレラは比較的購入しやすい価格帯で販売されたけど、実はこのデザイン処理技術は21世紀に入ってからスーパーカーや弩級の高級車にしか使われていない方法なんだよ。

——なるほど。それがこの価格で買える、ということですね。

松本 そのとおり。ジウジアーロは本当に天才だと思うな。そしてこのデザインを量産化してしまうアルファ ロメオのチェントロスティーレの面々。しかも量産したのはなんとピニンファリーナのトリノ工場なんだ。歴史的なモデルを生んだスタジオ、天才デザイナー、そしてエンスージアストにはたまらないピニンファリーナのトリノ工場で製造された事実。この3つが揃っていて、手が届くスポーツカーってなかなかないよね。
 

アルファ ロメオ アルファブレラ

アルファGTVの後継となるスポーティなクーペ。ジウジアーロがデザインを手掛けた、コンセプトとほぼ同様の洗練されたスタイルが魅力。撮影車両はガラス張りルーフが備わった、FFのスカイウインドウ 2.2 JTSとなる。
 

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※カーセンサーEDGE 2021年5月号(2021年3月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています

文/松本英雄、写真/岡村昌宏