THE!対決

PART2 取り回し性能対決

Report/島崎七生人 Photo/奥隅圭之
メルセデス・ベンツ Cクラス
BMW 3シリーズセダン

Cクラスの駐車支援システムは心強い味方

メルセデス・ベンツは昔から、まるで取り回しのよさの黄金分割を心得ているような扱いやすさが魅力だった。たとえあの大柄なSクラスでさえ、街中をスイスイと走らせていられるのは、ひとえに誰にでも扱いやすい車に仕立ててあるからだ。

その素性は最新のCクラスにも受け継がれている。最小回転半径のカタログ値も5.1mと十分小さいが、実際にステアリングがかなり切れる印象なので、狭い場所での扱いはラク。パワステの適度な軽さも助かる。

ただし190Eの頃やW124(旧々型Eクラス)のように、ステアリングをフルロックの状態にした“最後のクイッ”のところでの切れてくれる感じはそれほどでもない。つまり、前段で書いた“切れる印象”は、世の中でステアリングを切れないFF車が多くなったなかで相対的にそう感じるようになった…そんな事情もありそう。

また(コレは非常に重要だと思うが)、アバンギャルドの場合、フード上・先端のマスコット(スリーポインテッドスター)がないので、目視に自信のない人には心許ない面も。そこまで見越してのことか「パークトロニック」と呼ぶ、駐車支援システムが用意される(C200コンプレッサー・アバンギャルドにはオプション設定)。

一方のエレガンス系も、運転席から見えるマスコットが、まるで地平線に沈む夕陽のように世代を追うごとに沈んできたから、この駐車支援システムは有効だろう。

スポーツ性の代償として取り回しには難がある3シリーズ

ではBMW3シリーズはどうか?

こちらは、Cクラスが乗用車だとしたらスポーツカーに思えるくらい、Cクラスとの差を感じる。その理由はごく単純にステアリングホイールのグリップが(Mスポーツパッケージなので)極太だということと、操舵力が要る(パワステが重い)という理由から。

320iには「アクティブステアリング」の設定がないので、Mスポーツ…でなくても操舵力に大きな差はないはずだが、車庫入れにせよ縦列にせよ、とにかく本気でステアリングに力を込めて回す必要がある。腕っ節に自信のない人(=女性に限らず)にはやや辛いのでは?

またスポーティな仕立てのインテリアなので、ピラートリム色も黒色で囲まれ感、穴蔵感がある印象で、少し慎重に外の景色を確認するようになる。オーナーになれば慣れが解決してくれるだろうが、これは駆けぬける歓びの代償!?

ただし、ギヤをリバースにセレクトした際など、折々で鳴るBMWではおなじみのチャイム音は、まろやかな音質でいつ聞いても好感がもてる。耳障りなブザー音で平気でいるようなメーカーには見習ってほしいものだ。
今回のまとめ
Cクラスの取り回し性能は秀逸。誰にでも扱いやすいのが魅力だ。3シリーズはグリップが太いスポーツステアリングなど、その魅力が“取り回し”というシーンにだけは裏目に出てしまった。
今回のテスト車両

■M・ベンツ
Cクラス
・テスト車両
C200コンプレッサー
アバンギャルド
460.0万円
・駆動方式
2WD(FR)
・トランスミッション
5AT
・全長×全幅×全高
(mm)
4585×1770×1445
・ホイールベース(mm)
2760
・車両重量(kg)
1490
・最小回転半径(m)
5.1
・乗車定員(人)
5
・エンジン種類
直4DOHC+スーパーチャージャー
・総排気量(cc)
1795
・最高出力
[kW(ps)rpm]
135(184)/5500
・最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
250(25.5)/2800-5000
・使用燃料
無鉛プレミアム
・燃料タンク容量
66L
・10・15モード燃費
(km/L)
11.2
・タイヤサイズ
225/45R17



■BMW
3シリーズセダン
・テスト車両
320i Mスポーツ
453.万円
(※Mスポーツパッケージ含む)
・駆動方式
2WF(FR)
・トランスミッション
6AT
・全長×全幅×全高
(mm)
4525×1815×1410
・ホイールベース(mm)
2760
・車両重量(kg)
1460
・最小回転半径(m)
5.3
・乗車定員(人)
5
・エンジン種類
直4DOHC
・総排気量(cc)
1995
・最高出力
[kW(ps)rpm]
110(150)/6200
・最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
200(20.4)/3600
・使用燃料
無鉛プレミアム
・燃料タンク容量
60L
・10・15モード燃費
(km/L)
11.4
・タイヤサイズ
225/45R17(フロント)
255/45R17(リア)