THE!対決

PART1 走行性能が優れているのはどっち?

ホンダ インサイト
ホンダ インサイト 走り|THE!対決
↑あくまでもエンジンが主体で、モーターはアシスト役に徹しているため、走りの感覚は非常に普通。唯一、アイドルストップがエコカーらしさを演出しているが、その再始動は不安感もなく自然かつ即座に行われる
ホンダ インサイト ドライビングポジション|THE!対決 ホンダ インサイト リアシート|THE!対決
トヨタ プリウス
トヨタ プリウス 走り|THE!対決
↑60ps/40.8kg-mと、強力なモーターにより力強い走りが実現されているプリウス。一方で発進や渋滞時などにスルルル…と“電気自動車状態”で走ることができ、ハイブリッド車感覚はインサイトよりも強い
トヨタ プリウス ドライビングポジション|THE!対決 トヨタ プリウス リアシート|THE!対決

走りだけでなく発進の操作や反応もごくフツーなインサイト

宇宙船、もしくはどこかの大学の実験車両のようだった先代と打って変わり、2代目インサイトは見るからに現実的な車になった。というか、空力を根拠に(判断のしかたはイロイロだろうが)プリウスと見まごうようなスタイルをまとって登場した。

その新型インサイトの実力を今の段階で検証するため、今回はカーセンサーらしく、あえて現行型2代目プリウスとの比較を実施した。

まずはインサイトから。
この車の走りをひと言でいえば「非常にフツー」ということになる。搭載するパワーユニットは初代以来のIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)と呼ばれる、パラレル方式のハイブリッド。エンジンが主体で、モーターでパワーをアシストする仕組みのものだ。始動もステアリングコラム右横のスターターノブを押して捻る方式。するとエンジンが始動し、シフトレバーを「D」にセレクトすれば発進できる。

こうした一連の操作や車の反応はごくフツーだ。しいていえば「ECON」ボタンがONだと、省燃費のためエンジン出力が絞られるから、力強い加速感を望む場合、時として期待値を下回る感覚がある。また(これはこれでイイことだが)赤信号などで停車するとアイドルストップが利き、静寂が訪れ、ブレーキペダルから足を離せば、再始動も不安感なく自然かつ即座に行われる。

88ps/12.3kg-mの1.3L i-VTECエンジンと14ps/8.0kg-mのモーターによる走りは、前述のとおり“エコ運転”を意識しなければパンチのある加速も得られる。とはいえ目の前のメーター内にエコ運転がカラー表示(緑→青緑→青の3段階)される以上、エコな緑で走っていたほうが心情的にも落ち着くというもの。そうした場合も言葉で表現すれば「そこそこ」の動力性能を示してくれるのが新型インサイトだ。

乗り味は特別に上質な印象はない。ステアリングの中立付近の感触がやや曖昧なのを除けば、身のこなしも軽快で、それは軽量&コンパクト、低重心の車両設計のおかげといっていい。

フル乗車での評価は、乗車前から「見た感じ、後ろが狭そう」の声が上がった。で、実際に乗車してみると「シートはベンチだし、頭も髪の毛が天井に触れている」「特に後席中央は空間に対し着座位置が高く感じて、自分の目線より低いところしか開放されていない気がする」「後席にいると、リアスピーカーの“振動”が気になる」と、居住性関連のチェックが続出した。

助手席も「隔壁までの距離がなく、足裏を立てて座る必要あり」。乗り心地も「硬めでいかにもホンダ」といった風。「路面状況にかかわらず、常に揺れているのを感じる」。スピードメーターの背景色が運転状況により3色に変化するのも「夜間だと非常に気になる」といった指摘もあった。

ハイブリッドらしさと乗用セダン的快適さを兼ね備えたプリウス

一方のプリウスは、撮影車両の手配がつかず、レンタカーが試乗車だった。とはいえ、後席の背後で(おそらくラゲージだろう)何かの部品がカタカタと音を立てていた以外、標準的なコンディションを保つ個体だったことをまずお伝えしておこう。

で、インサイトから乗り替える“ハイブリッド車感覚”で言えば、プリウスのほうが断然実感ありといったところだ。始動もまるでパソコンを立ち上げるように“POWER”ボタンを押すことが最初。そしてメーター内の“READY”表示を確認したら、ゲーム機のレバーのようなシフトレバーで「D」レンジを選び、ペダルで駐車ブレーキを解除、アクセルを踏み込めば、音もなくスルルル…と車が動き出す。

プリウスのEVドライブモード(モーター走行)は、カタログによれば55km/h以下で最大2km程度まで可能。なので発進、渋滞時にスルルル…と音もなく“電気自動車状態”で走れる点は、やはりならではである。

1.5Lエンジンが76ps/11.2kg-m、モーターが68ps/40.8kg-mの性能を発揮するプリウスは、通常の走りも十分に力強く、乗り味もまずまずのしなやかさ。インサイトと比べると、より乗用セダン的な快適さがある。

プリウスは完成度の高さから、魅力はいまだ色あせていないようだ。フル乗車での試乗では、「まあ静かだし、新型が出ても“これでも十分”と思えそう」「たとえ新型と併売されたとしても、熟成されていると感じるはず」といった声が。

室内スペースも前後とも「問題なし」。後席も体格によっては天井が迫って感じるが「視界が開けているから圧迫感なし」「回生ブレーキなどの独特な感覚はドライバーなら感じるが、同乗している分には実に快適」。「燃費のバーに一喜一憂するオーナーの気持ちもわかる」と、ハイブリッド車に乗ると誰もが燃費を意識する車であることは確かだ。乗り心地も「高速でウネリがあると揺れが増幅される感はあるが、総じて問題なし」というコメントだった。
今回のまとめ
インサイトと比較して、快適性とハイブリッド車らしいドライブ感覚の点で勝るプリウスに軍配を上げておこう。
今回のテスト車両
ホンダ インサイト フロント|THE!対決
ホンダ インサイト リア|THE!対決
ホンダ インサイト インパネ|THE!対決          
ホンダ インサイト
テスト車両 1.3 L
205.0万円
駆動方式 2WD
トランスミッション CVT
全長×全幅×全高(mm) 4390×1695×1425
ホイールベース(mm) 2550
車両重量(kg) 1190
最小回転半径(m) 5.0
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4SOHC+モーター
総排気量(cc) 1339
最高出力
[kW(ps)/rpm]
65(88)/5800
+10(14)/1500
最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
121(12.3)/4500
+78(8.0)/1000
使用燃料 無鉛レギュラー
燃料タンク容量 40L
10・15モード燃費
(km/L)
30.0
実用燃費 (km/L)
e燃費提供
18.2km/L
タイヤサイズ 175/65R15
※実用燃費のデータはe燃費の提供です
トヨタ プリウス フロント|THE!対決
トヨタ プリウス リア|THE!対決
トヨタ プリウス インパネ|THE!対決
トヨタ プリウス
テスト車両 1.5 S
227.0万円
駆動方式 2WD
トランスミッション CVT
全長×全幅×全高(mm) 4445×1725×1490
ホイールベース(mm) 2700
車両重量(kg) 1260
最小回転半径(m) 5.1
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHC+モーター
総排気量(cc) 1496
最高出力
[kW(ps)/rpm]
56(76)/5000
+50(68)/1200-1540
最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
110(11.2)/4000
+400(40.8)0-1200
使用燃料 無鉛レギュラー
燃料タンク容量 45L
10・15モード燃費
(km/L)
35.5
実用燃費 (km/L)
e燃費提供
19.9km/L
タイヤサイズ 185/65R15
※実用燃費のデータはe燃費の提供です
Report/島崎七生人 Photo/小林岳夫