ルノー ルーテシア ▲2世代前のルノー ルーテシアのハイパフォーマンス版である「ルノー ルーテシア ルノー・スポール」。写真はrac tokyoが販売する車両価格168万円の2010年式。走行距離3.5万kmのワンオーナー車で、ディーラーでの記録簿9枚が付帯。タイミングベルトも2017年1月に交換済みである

高評価なれど短命に終わった悲運のホットハッチ

こちらは、4月27日発売の雑誌カーセンサーEDGE 6月号に掲載された、自動車評論家・永福ランプ(清水草一)さんの人気連載「NEXT EDGE CAR」の、担当編集者から見た「別側面」である。アナログレコードで言うB面のようなものと思っていただきたい。

なお「NEXT EDGE CAR」というのは、「今現在はまだ名車扱いされていないが、近い将来、中古車マーケットで名車または名品と呼ばれることになるだろうモデルを探そうじゃないか」というのが、そのおおむねの企画趣旨である。

今回の題材は、クリオ3こと2世代前のルノー ルーテシアのハイパフォーマンスバージョンである「ルノー・スポール」

それは、「フレンチコンパクト好きを自認するが、最新世代のフランス製コンパクトカーには今ひとつ盛り上がれない」と感じている人にとっては最適と思われる1台であった。
 

ルノー ルーテシア▲全長4020mmの小さなボディに最高出力202psの直4自然吸気エンジンを搭載するルノー ルーテシア ルノー・スポール。ブレーキは、フロントに直径312mmのブレンボ製ベンチレーティッドディスク+ブレンボ製4ポットキャリパーが、リアには直径300mmのブレンボ製ソリッドディスク+TRW製シングルピストンキャリパーが組み合わされている

先々代のルノー ルーテシア ルノー・スポールは、2006年3月に発売された3代目ルーテシアの3ドア版に、最高出力202psの2L自然吸気エンジンと6MTを組み合わせたホットハッチ。日本へは2009年10月に上陸したが、後述する理由により翌2010年9月には早くも販売終了となってしまった短命モデルだ。

フランス本国では、運動性能を重視した(その代わり乗り心地はやや硬い)「シャシーカップ」と、快適性を考慮した「シャシースポール」という2種類のシャシーが存在したが、日本に導入されたのはシャシースポールの方。それゆえ、ホットハッチとはいえ決してガチガチの乗り心地ではなく、むしろ「しなやか!」と感じられるはずだ。
 

ルノー ルーテシア▲黄色いパネルが目を引く計器はルノー・スポール専用タコメーター。ステアリングホイールには、ホイールセンターを示すイエローセンターステッチが施されている
ルノー ルーテシア▲一つ前の世代は5MTだったが、この世代のトランスミッションは6MT。なお、次の世代(クリオ4)のルノー・スポールではMT車は消滅し、変速機はデュアルクラッチ式の6速ATのみとなった

販売期間が短かったため中古車は希少

そのようにしなやかな足回りと、1240kgという近年の車としては軽量なボディに、202psの自然吸気エンジンを組み合わせた(このエンジンのサウンドもまた非常に心地よいものであった)。

さらには、6速のマニュアルトランスミッションで操ることができるというのだから、先々代のルノー ルーテシア ルノー・スポールというのは「この手の車が好きな人にとってはかなりグッとくる1台」ではあったのだ。

しかし、2010年9月から日本の歩行者保護基準がルーテシアクラスの輸入車にも適用されることになり、先々代のルーテシア ルノー・スポールはこの規制に引っかかることが判明したため、同年8月の生産分をもって日本への輸入は終了となってしまったのだ。

一部のカーガイたちからは「力強い素うどんのような名車!」と絶賛された先々代ルーテシア ルノー・スポールではあったが、日本での“生涯”は丸1年にも満たなかった
 

ルノー ルーテシア▲連続可変インテークバルブタイミングの採用などにより、最高出力202psと最大トルク21.9kg・mをマークする2LのF4Rエンジン。リッター100psの壁を見事に突破したエンジンだった

で、そんな先々代ルーテシア ルノー・スポールは、新車の販売期間が短かっただけに、中古車の流通量も少ない。「希少」とまでは言えないが、先代(クリオ4)のルノー・スポールが2021年4月下旬現在、なんだかんだで70台以上流通しているのに対し、クリオ3のルノー・スポールはわずか10台でしかない。いわゆるひとつの希少価値がある車なのだ。

そして、先々代ルノー ルーテシア ルノー・スポールの価値とは、もちろんその希少性だけにあるわけではない。前述した「しなやかな乗り味」もその価値の一面だが、それと同時に筆者が思う先々代の価値とは「デザイン的にフランスっぽい」ということだ。
 

ルノー ルーテシア▲この「スポーティでサポート性の高い形状なのだが、同時にフカフカでソフトでもある」というフロントシートも、いかにもこの世代のルノー車らしいもの。その座り心地は「絶品!」である

「ドイツ車っぽいフランス車」がお好きではない人に、ぜひ

物事のグローバル化が進むにつれて「国ごとの個性」が薄れていくのは仕方のない話だが、それにしても最新世代のフランス車のデザインは、「ほぼドイツ車」と言えるほど汎欧州的なものと化している。

少なくとも近視+乱視+老眼という三重苦を抱える筆者の目には、現行型ルノー ルーテシア インテンスもフォルクスワーゲン ポロTSI Rラインも(遠目には)見分けがつかない。ついでに言えばトヨタ GRヤリスも、遠くからは見分けがつかない。

しかし、この世代(クリオ3=先々代)までのルーテシアのデザインは、「いかにもフランス車」である。端的に言ってしまえば「なんかちょっと変(かも?)」という造形なのだ。
 

ルノー ルーテシア▲まぁこのエアダクト部分だけを切り取るとけっこう普通にカッコいい感じだなのだが、全体としてはフランス物らしい「謎感」が残るデザインである(※もちろんホメています)

もちろん、さらに古典派なフランス車愛好家に言わせれば、先々代のルーテシア ルノー・スポールだって「十分ドイツ車っぽい」ということになるのかもしれない。

だがそれでも、往年のフランス車特有の「日本人の感覚からすると良いんだか悪いんだかよくわからない造形センス」と、乗れば誰しも一発でわかる「しなやかな乗り味」とが普通に残っていた最後の世代が、この先々代ルーテシア ルノー・スポールではないかと思うのである。

こういった「ちょっと古い希少な車」の中古車相場はガンガン上がってしまうのが最近の常ではあるが、ルーテシアのそれは、幸いなことにさほどではない。筆者の目には「……新車か?」と思われたコンディションであるこちらの物件も、せいぜい車両価格168万円である。

筆者はつい先日、あいにく(?)スバルの新車を買ってしまったため、こちらのルーテシアを増車するだけの余裕はない。

だが、「ちょうどそろそろ車を買い替えようと思ってたんだよね」という人で、なおかつフレンチコンパクトがお嫌いではない人にとってこの物件は、あるいは先々代ルノー ルーテシア ルノー・スポールの中古車全般は、まさに「うってつけ」ではないかと思うのだが、どうだろうか?
 

文/伊達軍曹、写真/大子香山

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伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。