緩やかな景気回復とともに、中古車相場も横ばいから上昇に転じそうな現在
ぜひ手に入れたいのが将来のお宝、すなわち長く愛される理由のある車だ
というのも、お宝の候補となるような車はひとたび人気に火がつくと
普通の車以上に値上がりする可能性が高いからで
気がつけばプレミア価格で悔しい思いをする……なんてことも
そんなわけで、今が購入のチャンスな未来のお宝輸入車を紹介することにしよう

M·BENZ E-Class (W124)
メルセデスベンツ Eクラス 1986~1995

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走らずともわかる過剰品質がそこにある
品質でお宝を選ぶなら、3世代前のEクラスを外すわけにはいくまい。現代の基準からすると、パッと見はちょっと小ぶりのミドルセダンでしかないが、ドアを開けた瞬間に、この車がただものではないことに気づくはずだ。

アウタードアハンドルを握ればズッシリとしたドアに重厚感を感じ、シートに座ればそのしっかり感に驚く。いわゆるソフトで座り心地が良いとか豪華絢爛という類のシートではない。いたってシンプルで何のけれんみもないが、腰掛けた瞬間にかかる力を受け止める感覚が、明らかに他の車とは違うのだ。

丁寧に作られているのはもちろんだが、重量も国産車の1.5倍程度ある。重ければ良いというものではないが、大きな力が加わった時に安定感があるのは、軽いものより重いもののほうだ。

運転席に座ったら、ドアを閉めよう。バスンッという低い音ともに閉まる感触は、ボディ剛性の高さを、ドアのキャッチが強固なことをいかにも感じさせるそれだ。そして前を見ると目に入るインパネからは、実用に徹したレイアウトであることが見て取れる。ウッドパネルは張られているものの決してゴージャスな印象はない。けれど、それでも品質の良さを感じさせる確かな作りがそこにはあるのだ。

何か一つスイッチを動かしてみるといい。スイッチ自体の質の良さはもちろん、それが取り付けられている箇所の剛性の高さを感じ取ることができるはずだ。とまあ、車を走らせるまでもなくわかる「モノの良さ」がW124にはある。

コストや効率を優先した現代では、もう二度とこんなに手間のかかった車は出てこないだろう。旧き良き時代の産物なのである。


ALFA ROMEO ALFA156
アルファロメオ アルファ156 1998~2006

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珠玉のV6ユニットを激安価格で手に入れる
地球の未来を考えたら環境問題への対応が急務であることは理解できる。CO2の排出量は減らすべきだし、省エネを心がけるのは当然、何となればハイブリッドカーや省燃費エンジン搭載車に買い替えるのも素晴らしい選択だ。だけど、古いものをリユースするというエコロジーも、また一つの正解だと思う。大量消費の波に飲まれずに、良いものを長く使う。お宝候補を愛でようという本特集の趣旨にピッタリな考え方ではないか。

話がそれてしまったが、世の中はエコ時代である。それは走りの気持ち良さが命と言われたアルファロメオにも当てはまり、現在新車で販売されているモデルの多くが直噴エンジンを搭載していることにも表れている。

直噴だなんて言っても、そこはアルファロメオ。他メーカーの環境エンジンよりは楽しさが残っている。が、珠玉のエンジンとまで言われたかつてのV6ユニットと比較してしまうと、見劣りしてしまうのは致し方ないところだろう。正直言って、前が良すぎたのである。

そこで提案したいのが、旧来のV6エンジンを積んだ最後のミドルセダンである、アルファ156 2.5 V6 24Vという選択。MTの設定もあるので痛快なエンジンを思う存分堪能することができるし、ハンドリングも鋭く切れ味抜群。これを名車といわずして何というってぐらいに気持ちの良い車なのだ。

注目してほしいのは、これが驚くほどの激安価格で手に入れられるということ。たとえば、取材車にいたっては38万円ポッキリで、確かに内外装に疲れは散見されるが、走りは元気そのもの。内装のリペアなどを少しずつしながらお宝候補と付き合っていくのは、きっと豊かで楽しいエコ生活なはずだ。


PEUGEOT 406COUPE
プジョー 406クーペ 1998~2005

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その佇(たたず)まいは流麗、あくまでも上品
車における美しさとは、色あせることのない魅力である。プジョー406クーペの撮影に立ち会い、改めて強くそう思った。この車、プロポーションこそオーソドックスなクーペのそれだが、サイドを走るプレスラインが凝っていて、実際のサイズ以上に伸びやかな印象を与える。その佇まいは流麗、あくまでも上品で美しい。

国産スポーツクーペにありがちな若者しか乗れないヤンチャな雰囲気など、微塵も感じられない。カッコいい車や手の込んだスタイリングの車はたくさんあるが、純粋に美しいと思えるものは案外少ない。プジョー406クーペの登場から10年以上の歳月が流れたが、果たしてこれを超える作品があっただろうか。


PORSCHE 911 (993)
ポルシェ911( 旧々型) 1994~1998

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空冷エンジン搭載車の完成形
より良い車を目指し、各メーカーが技術を競い合った20世紀。新しいアイデアに取って代わられ消えていった試みも多いが、成否は別としてチャレンジングだったり、一世を風靡した技術を採用した車は、名車と呼ばれることが少なくない。そんな技術の一例が空冷エンジンであり、お宝候補にあげたいのが最後の空冷搭載車とされる993こと、2世代前の911である。

現在では静粛性や環境性能、効率の問題から一般的な水冷に刷新されているが、自動車史に残る空冷エンジンという技術は、車好きなら一度は味わっておきたいもの。それならビートルでも……と考えるかもしれないが、どうせ乗るなら最後の最後となる「完成形」がベターだろう。
阿部 真=文
※この記事は、インポートカーセンサー9号(7月25日発売)の特集をWEB用に再構成したものです