スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

ダスティン・ホフマンが真っ赤なスパイダーを駆って母娘両方と秘め事!?

卒業|映画の名車
(c)2008 Universal Studios. All Rights Reserved.
DVD『卒業』(発売中)1967年・米 監督:マイク・ニコルズ 出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト/キャサリン・ロス/ウィリアム・ダニエルス/マーレイ・ハミルトンほか 販売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 1,800(税込)
結婚式が行われている教会の2階から「エレ~ン!! エレ~ン!! 」と絶叫する薄汚い青年。思わず花嫁が振り返り「べ~ン!! 」と叫ぶ。十字架を振り回しての大立ち回りの末、2人は手と手を取り合ってバスへ駆け込むのだった―。あまりも有名な『卒業』のラストシーンである。サイモン&ガーファンクルの奏でる切ないメロディと相まって、公開から40年たった今でも人々の記憶に強く残っている名作だ。

しかし、である。『卒業』=花嫁を連れ出すダスティン・ホフマンという図式は認識していても、「じゃあ『卒業』ってどんな内容なの!? 」と問われたときに、言葉に窮する諸兄も多いだろう。かくいう筆者もその一人。定番中の定番のパッケージって、意外とビデオ屋で手に取らないものですよね。

名門大学を卒業したベンジャミン(ダスティン・ホフマン)は、将来に対するぼんやりとした不安を抱きながら長い夏休みを実家で過ごしていた。卒業記念に真っ赤なアルファロメオのアルファスパイダーを父親からプレゼントされたのに、どこか浮かない顔だ。そんなベンジャミンをホームパーティで見そめたミセス・ロビンソン(アン・バンクロフト)は、露骨に誘惑を開始する。しかし、彼女は幼なじみであるエレーン(キャサリン・ロス)の母親であった。

強烈な色仕掛けをどうにかやり過ごしていたベンジャミンだったが、結局は誘惑に負けてしまう。なにせ彼は童貞だったのだ。でもって一度覚えてしまえば猿のようにがっつき始めるのは自明の理。スパイダーで夜な夜なホテルへ乗りつけ、ミセス・ロビンソン(アン・バンクロフト)との逢瀬を重ねるベンジャミン。ところが娘のエレーンが帰郷すると、そんなことはスッカリ忘れて彼女に夢中となり…。そう、あの名作は昼メロさながらの三角関係を描いた愛憎劇だったのである。

後半は完璧にストーカー化するベンジャミン。母親との関係を知って愛想をつかされたエレーンを忘れられず、彼女の通う大学の近所にアパートを借り、モグリの学生となって校内でもつきまとう。ストーカー規正法がまかり通る現代なら逮捕必至の危険人物だ。ところが「サウンド・オブ・サイレンス」「スカボロ・フェアー」の美しい旋律に乗せるとあら不思議、珠玉のラブストーリーに変身しちゃうのだ。音楽の力は偉大ナリ!!

ここから紆余曲折を経てあのラストシーンになだれこむのだが、完全なるハッピーエンドじゃないのが、本作を名作たらしめている所以。バスに乗り込んだ2人を訝しげに注目する乗客たち。笑顔で教会を後にしたベンジャミンとエレーンの表情が見る見る曇っていくところでフェイドアウト。彼らの今後は順風満帆ではないということを暗示させて終わっているのだ。

ところが、この余韻をぶち壊すニュースが今年に入って飛び込んできた。原作者のチャールズ・ウェッブが40年ぶりに続編を発表したのだ。教会を逃げ出したベンとエレーンの11年後を描いているという。日本では『「卒業」Part2』として白夜書房から9月20日に発売予定。うーむ、読みたいような、読みたくないような…。

映画に登場する車たち

アルファロメオ アルファスパイダー(デュエット)

アルファロメオ アルファスパイダー(デュエット)|映画の名車
主人公のベンジャミンが大学の卒業記念に父親からプレゼントされたのが、公開当時、発売直後だった1966年式のアルファスパイダー1600(通称デュエット)。とにかく全編にわたってベンジャミンはスパイダーを乗り回し、ロビンソン母娘を連れ回す。特に印象的なのが、エレーンと車内でハンバーガーをパクつくシーン。周囲の目を気にして幌をかぶせるくだりで、2人の気持ちが通じ合ってきたことをさりげなく観客にアピールしているのだ。ただ、スパイダーに対するベンジャミンの扱いは女性同様ひどく乱雑で、だんだんとボロボロに…。結婚式襲撃前にガス欠になってしまい、ついには乗り捨てられてしまうのだ。あぁ、かわいそうなスパイダーちゃん…。
Text/伊熊恒介