スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

先読み不可能なケベック製カーアクション!

ニトロ|映画の名車
(C)2007 Productions Nitromax Inc.
DVD『ニトロ』6月13日発売! 07年・カナダ 監督=アラン・デスロシェール 出演=ギョーム・ルメイ・ティヴィエルジュ、ルーシー・ローリア、マルタン・マットほか 発売・販売元:日活 ¥3,990(税込)
日本未公開タイトルをレンタル店などで手にするのは勇気がいるもの。未公開には未公開なりのワケがあるからだ。だけれども、しかし。なかにはピッカリ光る掘り出しモノだって存在する。知っている俳優なんて1人も出ていないけど、抜群に面白い極上の映画に出会ったとき、手堅いメジャー作品で得られた充実感の何倍もの喜びを感じることができるのだ。

6月13日にリリースされるカナダ映画『ニトロ』は、そんな“当たり”の一本。舞台はモントリオール。全編フランス語のケベック製カーアクション。スタッフ&キャストは全員日本での知名度は皆無と言い切ってしまっていいだろう(「いやいや、俺は監督のアラン・デスロシェールについてメチャクチャ詳しいよ!」って人がいたらスンマセン)。

タイトルの『ニトロ』は原題でも『NITRO』で、当然のようにNOS=ナイトラス・オキサイドと呼ばれるガスをエンジン内部に噴射するシステムのこと。そのため、『ワイルドスピード』のようなストリートレースものだと想像してDVDをデッキに突っ込んだのだが…これが、単なるカーアクションの枠に収まりきらない幕の内弁当的なハラドキムービーでビックリ!!

物語は、かつてストリートレースで名を馳せたマックス(ギョーム・ルメイ・ティヴィエルジュ)が、心臓を患う妻のために移植費用を稼ごうと賭けレースの世界に舞い戻るところから始まる。ここまではタイトル通りニトロ噴射しまくりの展開なのだが、これはほんの序章に過ぎないのだ。結局、強すぎて相手がいなくなり、思うように金が集まらず、八方ふさがりになったマックスは、仰天の行動に出る。悪党の心臓をいただいてやれ!!

悪党ならば殺して心臓を奪ってもいいだろう。最期くらい人の役に立ちやがれ! とムチャクチャな論理でギャングのアジトに乗り込み、妻と同じ血液型の男を拉致!! 闇の外科医のもとに連れて行き、見事心臓をゲットするのだ。ここからはギャングと警察の両方から追い込みをかけられ、心臓を抱えたまま病院までの逃走劇がスタート。第15回で紹介した『アルティメット』ばりのトリッキーな動きで追跡をかわしていくマックスの姿に「思わずオマエは忍者か! 」と叫ばずにはおれないだろう。

嬉しいことに、逃走の途中でペネロペ・クルス似の元カノ、モルガーヌ(ルーシー・ローリア)が入浴シーンで登場。男子目線を釘づけにする巨乳は絶妙な湯加減でチラチラ見え隠れし、大きな見せ場となっている。うん、この手の映画は、このくらいのサービスカットがなければいかん。どこかの国の映画人も見習ってほしいものよ。

さらに彼女が運転する青いT-REXとギャングたちの小気味いいカーチェイスが始まり…と、またまた彩りが変化を始めるのだが、このあたりにくると、もはや当初の目的がなんだったのかさえもおぼろげになってゆく。これ以上はネタバレになってしまうので書けないが、あまりにも強引なオチのつけ方には口をあんぐりと開けるほかなかった。一言でいえば珍味。勧善懲悪の大味なハリウッド映画に飽き飽きしている諸兄に、ぜひともオススメしたい。「すごいものを観てしまった…」という満足感が、たっぷり味わえまっせ!!

映画に登場する車たち

ダッジ ラム(SRT-10)

冒頭でマックスが通勤に使っていた愛車はダッジ ラム。クライスラーがダッジブランドで生産するフルサイズのピックアップトラックだ。2002年から2007年まで販売された3代目の中でも、ダッジ バイパーと同じ8.3L、500馬力の大型エンジンを搭載するSRT-10である。このモデルは最高速度250km/h弱を誇る世界一速いピックアップトラックとしても有名。結局マックスは妻の心臓移植代の足しにするために売ってしまうが、その際、息子のテオに「あんな燃費の悪い車いらないよ! 」と慰められる(ちなみにラムの実燃費は市街地走行で4km/L弱。米国の燃費番付で年間ワーストになったこともある)。

サーブ 9-5

ギャングのアジトへ単身乗り込み、妻と同じ血液型のイタリア系のオヤジを拉致したマックスは、闇の外科医が開業する動物病院まで急ぐ。その際に使用するのが、イタリア系オヤジの愛車の9-5(ナイン・ファイブ)だ。9-5はスウェーデンのメーカーSAABのフラッグシップカーである。マックスはこの高級車をムチャクチャな運転でボロボロにしてしまう。しかも、命からがら動物病院までたどりついたはいいが、取り返しのつかない失敗を犯すことになるのだ。

CAMPAGNA T-REX(1400R)

CAMPAGNA T-REX(1400R)|映画の名車
マックスの元カノでプロレーサーのモルガーヌの愛車は、ケベックにあるカンパーニャ社のT-REX。バイクのエンジンを後部にむき出しで載せた斬新なデザインの三輪車だ(ちなみに、モルガーヌの乗る1400Rのエンジンはカワサキ製! )。このT-REXがびゅんびゅん公道を疾走し、小回りを利かせてカーチェイスを行うシーンを拝むためだけでも本作を観る価値はアリ。残念ながら画像はコックピットのシーンだが、その流麗なフォルムを公式ページ(CAMPAGNA T-REXで検索)で確かめていただきたい。
Text/伊熊恒介