10月に入ったら車関連のニュースは東京モーターショー色に染まりました。今年は先進技術、環境技術はもちろん、走りを楽しむためのモデルも期待できそうです。そちらは別の機会にご報告するとして、山椒は小粒でもピリリ……的なニュースに注目しました。それでは今週の車ニュース斜め読み、いってみましょう。

世界情勢

■ISはなぜトヨタ車を使うのか、米が説明要求(10月9日|ウォール・ストリート・ジャーナル発)

『 フォルクスワーゲンのスキャンダルに見舞われている自動車産業に、また新たな打撃が加わった。中東の過激派組織「イスラム国(IS)」が数百台ものトヨタ製四輪駆動車を使用していることについて、米政府がトヨタに対し、ISがどういう経路で車を入手しているのか説明するよう求めている。 ISが公開している宣伝ビデオに決まって登場するのはトヨタのピックアップトラック「ハイラックス」と多目的スポーツ車(SUV)「ランドクルーザー」であると、複数のメディアが6日夜から7日朝にかけて報じた。

米ABCテレビによると、元米国連大使のマーク・ウォレス氏は「残念なことに、トヨタのランドクルーザーとハイラックスは事実上、ISブランドのひとつになっている」と話した』

調査中のフォルクスワーゲンの問題と同列に扱うのはナンセンスなのでは……という話題はひとまず置いておきます。

要旨は、ISがどういう経路で車を入手しているのか、トヨタが説明を求められているとのことですが、ランドクルーザーは民生品であり、アフリカ大陸でも重用されている、一種の“生活必需品”でもあります。それが、どのようにイスラム国へ渡ったのかを説明するのは「売った歯磨き粉で誰が歯を磨いているのか言いなさい!」というのと大差ないように感じるのです。車体番号や車検制度があるのに……という感覚がアフリカの危険地域で通用するはずもございません。

車好きの視点からこのニュースを見れば、ランドクルーザーは民生品でありながら、いかにタフなのか、信頼を勝ち得ているのか、ということの裏返しでもあります。元米国連大使の言葉として「ランドクルーザーとハイラックスは事実上、ISブランドのひとつになっている」とありますが、事実はこうです。

「ランドクルーザーとハイラックスは事実上、IS(に限らずアフリカ大陸で広く認められた)ブランドのひとつになっている」

モロッコに渡ってアトラス山脈を越えたとき。また、南アフリカのモザンビークに近いサファリを周遊したとき。ランドクルーザーが現地の人々にいかに信頼されているかを肌で感じました。いやもう、とっくにランドクルーザーは地球を代表するブランドなのです。

▲2014年から2015年にかけて日本で再販されたトヨタ ランドクルーザー70。カーセンサーで検索すると、ランドクルーザー70と同ピックアップトラックは約330台ありました(2015年10月9日現在)。中古車市場で人気のモデルです ▲2014年から2015年にかけて日本で再販されたトヨタ ランドクルーザー70。カーセンサーで検索すると、ランドクルーザー70と同ピックアップトラックは約330台ありました(2015年10月9日現在)。中古車市場で人気のモデルです

キャンペーン

■自動車盗の情報から解決すれば1万円! 愛知で報奨金 (10月8日|朝日新聞発)

『自動車の盗難被害が全国で最も多い愛知県。少しでも被害を減らすため、県警などは10月から有力な情報提供に対して報奨金を支払う制度を始めた。事件解決などにつながった場合、1件につき1万円が提供者に支払われる。自動車盗に関する報奨金制度は、全国初の試みという』

同記事によりますと、8月末までの愛知県内の自動車盗難被害件数は1548件。2位の茨城県に177件の差をつけ、全国ワースト1とのこと。汚名返上のための運動でもありますが、一度盗難されてしまうと、なかなか戻ってこないという実情は被害者にとって受け入れがたいものです。

こういった運動を通して、1台でも多くの盗難車がオーナーの元へ戻ってくることを願ってやみません。報奨金を個人的に上乗せしたいというオーナーも少なくないのではないでしょうか。

▲自動車盗難被害件数の“ワースト”ランキングで、過去いくども1位を獲得してしまったトヨタのハイエース。残念なことにイモビライザー装着車両でも盗難された事例もあるそうです ▲自動車盗難被害件数の“ワースト”ランキングで、過去いくども1位を獲得してしまったトヨタのハイエース。残念なことにイモビライザー装着車両でも盗難された事例もあるそうです

イベント

■車はアートだ! マツダデザインに(10月9日|マツダ発)

『マツダは、10月16日から東京ミッドタウンで開催される「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」に出展、『This is Mazda Design. CAR as ART』を開催します。 4月にイタリア ミラノで開催された「ミラノデザインウィーク2015」に出展し好評を博した、マツダが独自にデザインしたトラックレーサー「Bike by KODO concept」とソファ「Sofa by KODO concept」の他、玉川堂作の鎚起銅器「魂銅器(こどうき)」や、金城一国斎作の卵殻彫漆箱「白糸(しらいと)」といった、マツダのデザインテーマ「魂動」に共感して創作された日本の伝統工芸を展示します』

2011年に発表したCX-5以降、マツダのデザインは破竹の勢いがあります。その原動力となっているのが、マツダのデザインテーマ「魂動(KODO)-Soul of Motion-」であり、最新のロードスターの造形にも生かされています。

そのデザイン力を証明するために、マツダはミラノサローネ国際家具見本市に自動車メーカーとして異例の出展。トラックレーサーやソファなどをお披露目しました。これが高い注目を集めて、ドイツの権威ある車のデザイン賞「Automotive Brand Contest(オートモティブ・ブランド・コンテスト)」を受賞したのです。国際的にもマツダのデザインが認められている証拠です。

そのデザインピースであるトラックレーサーやソファ、そしてマツダがデザイン力を研鑽するうえで歩みをともにした「魂銅器」や「白糸」といったアートが間近に見られる機会があるというニュースです。東京は遠いという方も、イタリアのミラノに比べれば近いとポジティブに足を運んでみてはいかがでしょうか。

▲ロードスターのキースケッチを担当したデザイナーがいちから線を引いてデザインしたトラックレーサー。製造はマツダの技術者が担当しています ▲ロードスターのキースケッチを担当したデザイナーがいちから線を引いてデザインしたトラックレーサー。製造はマツダの技術者が担当しています

アート

■ギネスを狙う高さ8mの「大型車」? (10月8日|AFPBB News発)

『ハンバーガー、テニスボール、靴、ハンドバッグ、トイレ――奇抜な車のデザインで知られるインドのスダカール・ヤダブ(Sudhakar Yadav)氏はこれまで、南部ハイデラバード(Hyderabad)にある自身の博物館で、金属くずから作ったさまざまなデザインの車を披露してきた。

そんなヤダブ氏が新たにデザインしたのは、1922年型T型フォード(Ford Tourer)をモデルとした高さ8メートル、長さ15メートル、幅5.7メートルもの大型車。内部には木製の扉、窓、階段があり、天井はチェスボードや気球で飾り付けられているが、エンジンはない。同博物館に6日に展示されるやいなや、多くの来場者を集めている』

車のデザイナーとはいっても、その興味の向く先は様々というお話です。これまでも、とうてい市販車ではありえないようなデザインを成立させてきたスダカールさんですが、最新モデルは最古の量産自動車であるT型フォードをモチーフにした8mの巨大なモニュメント。

残念ながら実際に走ることは叶わないようですが、前例のない大きさが話題を呼んでいるようです。走らない車でさえニュースになるのですから、自走可能な作品を作った暁には“旋風”を巻き起こしてくれそうな予感がいたします。今後にも期待しましょう。

まとめ

日本のブランド力が、日本のデザイン力が、世界に注目されているニュースがチラホラ。日本は自動車大国ですから、まだまだユニークなニュースを発信できる潜在力があります。もっともっと期待して大丈夫です!

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

text/ブンタ
photo/graaab、トヨタ